I'm sweet on you!!






ちょっとロンがかっこいいなって思った子はけっこうたくさんいると思う。
少し気が短くて怒りっぽいとことか、成績の善し悪しとか、勇気を出すのにちょびっとだけ時間がかかることとか、そういうとこもね、可愛いなって思う子もいると思うし、事実いたと思うの。
だいたいウィーズリー家の男の子は性格にちょっとうならされるけど(決して嫌なわけではないし、それを補ういいとこもたくさんある)顔はいいからけっこうかなり、モテている。特にツインズとかね。
だけどこうもロンが脚光をあびないのはひとえに人並み以上に目立っているハリーがいるためだと思う。
(やー、別にハリーが悪いとか言ってるわけではない。むしろグリフィンドールのためにガンガン点をむしり取ってくれてありがたい)

とにかく、とにかく、とにかく。
ロンはかっこいいと思うし、なにより優しいの。
それに気付けないでいる女の子は本当にダメね。
(とか言っていまさら好きだとか気付かれたり言われたりしても困るけどね)

「今のところ強敵はハーマイオニーが一番ね。いつも一緒にいるし仲だって悪くはないと思うの。喧嘩するほど仲がいいってことわざもあるし、とにかく彼女は要注意。
ん?なによ、なんの話してるのかって?にぶいわねぇ!
私のコイバナをしてるんじゃない!私の好きなロンの!そして今一番近くにいる女の影であってもしかしたらライバルかもしれないハーマイオニーの!」
一気にまくし立てたらラベンダーは口をあんぐりあけてとすんと後ろのベッドに腰掛けた。
腰が抜けたのかもしれない、ベッドがあってよかったね、ラベンダー。
「そ、そうだったの?」
「そうだったのよ」
ロンかっこよくない?と聞いたら、それなりにいい方だけどボーイフレンド(恋人!!)にはしたくないと失礼なことをのたうったので枕を投げ付けておいた。
いや、ライバルは少ない方がいいんだけど、これはこれで腹が立つ。

「てゆうかロンってハーマイオニーと付き合ってんじゃないの?」 
いきなりの核爆弾にはやくも私は「は?」という間抜けで驚愕さを持ち合わせた表情でラベンダーに詰め寄っていた。
「なにそれたしかな話なわけ?」
どうせあんたの想像かハンナアボットあたりから出た噂話でしょうと詰め寄る。
この手の男女の根も葉もない噂話はだいたい噂好きの女の子から生成された作り話だ。
想像からきているだけに信憑性などまったくない…が、あながち外れてるとも言い難いやっかいな噂だ。
てゆうかロンとハーマイオニーの噂話というだけで信憑性の高さなど目に見えてるじゃないか。ヤバイ、ヤバイよ私。
告白もするまえにファースト挫折なんて辛すぎる!!

「わ、私たしかめてくる!」
「え?あ?ちょっ……ー?」
私を呼ぶラベンダーの声は遠く、もうドアの向こう。
猪突猛進だとよく言われたわ。私は今、走る弾丸。
この目と耳で確かめるまでは止まらないんだから!!





談話室を抜け、いくつか廊下をまがった先に見慣れたみっつの背中を見た。
はねっ毛だらけの黒髪、長いふわふわの金髪、そして目に止まるあざやかな赤毛。

「ロン!!」

大声で叫んでしまった。そんなつもりはなかったのに、つい勢いがつきすぎてしまった。
廊下にいた生徒達はなにごとかとこちらを振り向いた。もちろん、ロンもハリーもハーマイオニーもね。
そしてハリーの目の前に隠れて見えなかったマルフォイもこちらを見ていた。

「どうしたの、
こちらにまっさき声をかけたのはハーマイオニーだ。そしてロンとハリーの背中をぐいぐい押してこちらに来る。
もちろんそこに残されたマルフォイが黙っているはずもなく、挑戦的な言葉を投げ付けながら追ってきた。
いや、そんなことはどうでもいいのだ、今のにとっては。

「ねぇロン、私貴方がハーマイオニーと付き合ってるって聞いたんだけど本当!?」
大きな声は廊下中に響き渡り、一瞬静まり返った。
はその静けさが肯定によるものなのかなんなのかと、内心じっとりと汗をかき、緊張していた。
そう、告白も前にファースト挫折なんて辛すぎるのだ。

「へぇ、ウィーズリー君、マグルなんかと付き合ってるのかい?しかも、グレ」「あんたは黙ってな!」
誰よりもまっさきに口を開いたマルフォイ。だけどそれはの望んでいないことだ。
はまずロンの口から否定の言葉を聞きたかったのだから。
「ねぇロン、本当なの?」
「いや、僕は別にハーマイオニーとは……」
ごにゃごにゃと言葉を濁らせるけれど、結局小さくもロンは付き合ってないと答えた。
は大きく微笑んだ。「本当!」
そしてつづけざま「じゃあ好きな人は?」と聞いた。
ロンがその赤毛よりも真っ赤になってええと、と口籠もるから大変だ。
はそこでハーマイオニーの名前が出るんじゃないかとハラハラし、懲りずに口を挟もうとするマルフォイを口と拳でたしなめながら心を落ち着かせた。
「て、てゆうかどうして君はそんなこと聞くの!?」
ロンは真っ赤にな顔で、半ば叫んだ。
そんなに言いたくないのか、と思いつつもはそんなロンの表情にたまらなく恍惚とし、うっとりと見つめあげた。

「え?うん……私がロンを好きだからかな」
の心は最高潮にロマンチックだった、ふたりの世界だった。
いや、気持ち的には自分の世界だったんだろう。
あまりに恍惚しすぎたゆえの失言…にも似た告白だ。
「え?」
ロンの間の抜けた声にはハッとした。
しまった、迂闊だった、うっかりしすぎた。
そりゃあいつかはすると思っていたものだったけれど、まさかこんなところで、さらりとなんでもないことを言うように、ましてやハリーハーマイオニー挙句マルフォイなんかがいる前でしてしまうなんて!

みるみるうちにの頬に熱がよってたかって集まった。
きっとさっきのロンなんて比じゃない、ロンの赤毛よりもっと赤いとは思った。
俯くばかりで上を見上げることの出来ないは、どんどんと自分が縮まっていくような感じすらしてきた。恥ずかしい。

「これはこれは……ウィーズリー家の坊ちゃんは家へお輿入れかい?玉の輿だな」
マルフォイは嫌な高笑いをあげた、はますます縮こまった。そして泣きそうだった。
ハーマイオニーは隣で非難の声をあげ、ハリーはマルフォイを睨みつけていた。
「…随分と幼稚だな、マルフォイ。僕が羨ましいかい?」
そしてロンはまっすぐマルフォイに向かい、いつもの何倍数十倍と冷静な声で言葉を続けた。
そして紳士なことにその背中にを庇い、立ち向かっているのだから、は目を見張ってその背中を見つめた。
「想い人に想いを告げられたことをすごくハッピーでラッキーだと思ってる」
だから今の僕はすごく機嫌がいいけど、お前の言葉によっちゃなにするかわかんない、とまでいってのけた。
て、てゆうか想い人って!想い人って!!

ロンの背中がとても大きい。
そしてすごくかっこいい。
いつもいつも間接的にしか見られないその勇姿を、今ここで見られるなんて!
しかも自分を庇ってくれてるなんて!
の心は幸せの絶頂だ、さっきのまでも泣きそうな気持ちなどどこかへ吹っ飛んでしまったほどだ。

「それは驕りか?いい気になるなよ、ウィーズリー」
忌々しげにマルフォイはロンを見た。
いつもはそこにはハリーがいた、だけど今マルフォイの宿敵という対置にロンが立たされている。
「ああ」ロンが気付いたように笑った。
「お前、が好きなんだろう?」
意地悪く笑って指摘した、途端、マルフォイの白い顔は赤く染まり、「でたらめを!」などというこれっぽっちも説得力のない言葉が吐き出されていた。
ハリーは「へぇ、君がねぇ」などと笑い、ハーマイオニーも「そうだったの」などと言って追い討ちをかけていた。
これにはたまったものではないときびすを返し、「とにかく、覚えておくんだな!」と彼らしからぬ捨て台詞を残し、マルフォイは廊下の向こうへ消えてった。
後に残された4人。
ハリーは「じゃあ僕は寮に戻るから」とそそくさといなくなり、ハーマイオニーも「図書室行くんだったわ」と行って去っていった。
気を利かせていたつもりだったのだろうか。
だけど残されたとロンは顔を真っ赤にさせたまま向かい合い、俯きあい、なにも喋らずそこにいる。

さっきまでの啖呵はどうしたんだロン!
好きな子背にして言えるのに、目の前にしたら言えないのか情けないぞ!
破天荒で悪戯好きな、行動力だけはある兄達の叱咤が聞こえてきそうだ。
ロンは恐る恐る手を伸ばし、の指へと手を伸ばした。
触れてもはじかれたように手を離し、そしてまた伸ばす。
それを何度か繰り返して、やっとふたりは手を繋いだ。
心臓はばくばくだ、これだけで死にそうに乱れるのだからたまったまものじゃない。

「あ、あのね、!!」
ロンは声をひっくり返してしまいながらも必死にに伝えようと、言葉を続けた。
「僕も君が好きだよ!」
そしてその言葉がの心臓を貫いたのは言うまでもない。
大好きだ、愛しい、そして
「嬉しい〜〜!!!」
叫んだら、ロンが微笑んだ。
そしてその笑顔に、の緊張が少しほぐれた。
見詰め合う視線が重なって、ゆっくりと顔が近づいていった。

キスされる。

瞬間目を閉じたけれど、次に起こったアクションは、ひたいにこつんとロンのおでこが重ねられることだった。
恐る恐る目を開けた目の前には、火照った頬のまま悔しそうに眉を寄せ目をを細めているロンがいた。
「悔しい」
もうだめ、これが精一杯、幸せすぎる。と呟いて、ロンはそそくさと顔を離してしまった。
わあ、なんかふつうにキスとかされるより恥ずかしいかもしんない!はきゅんきゅんなる胸を必死に押さえつけて微笑んだ。
「だいすき」
「ぼ、僕もすきだよ!」
そのたった一言だけでこんなにも動揺し、顔を火照らせるロンがとても愛しくて可愛くて大好きだ。
そしていざとういうは私を守ってくれるのだから、最高にかっこいい人だ。

ラベンダーもハーマイオニーももったいない、と心の中で微笑んだ。
…いや、ハーマイオニーは確かめてないからわからないか。
じゃあ私ってすごく羨ましい。

うふふ、とが微笑んだ。
ロンも同じように笑って返した。
たぶん、私たちはとてもゆっくりと長く付き合って成長していくだろう。
焦れるほどにゆっくりと、いとおしむように。

ふたりは手に汗かきながらも、ゆっくりと歩き、初々しくもグリフィンドールへと帰っていった。





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なんてじれったいんだ、と思うくらいにじれったい子でいてくれ。
その初々しさにドキドキする。万歳!!
でも基本的にウィーズリー男児は積極的でお願いしたい、エヘ

C VanillaRadio
あらなみかいり

2004/6/19