ダメダメダメダメ ダメ人間!!!







真夜中の1時2時を通り越して過ぎた時間に就寝して、
昼間正午を過ぎるくらいに目を覚まし、
寝ぼけ眼の顔を洗うわけでもなくパジャマのまんまで室内を放浪し、
パソコンの電源つけて、
お気に入りのサイトを徘徊し、
メールボックス開いてニヤニヤしたり、
ガックリしたり、
お腹が減ったらお菓子をつまんで、
寒くなったら上着を羽織って、
トイレついでにホットココア作って持ってきて、
部屋で本を読んだり、
メールを打ったり、
充分すぎるくらい睡眠とったっていうのに昼寝して、
買い置きのカップ麺すすって、
テレビ見て、
ゲームして、
爪切って、
ペティギュア塗って、
お風呂に入って、


嗚呼。






「ぐうたら、なまけもの、ダメ人間!!!」


白い天井に向かって自分だけ聞こえるように叫んでみた。
じんわりしみた。
どうせ私はダメ人間!!!
自暴自棄になんてなりはしないけど、ちょっとだけ虚しくなる、それだけだ。ヘヘン。

さっきから鳴りっぱなしのケータイを見るけれど、取る気はしない。
なんだかもう今日はこのまま寝たいようなそんな気分だ、うん。
と思ったら今度はお家のお電話の方に着信が!!!
呼ばれてるー感がしないでもないけどそのままで、そのままで。だってそのうち切れちゃうからさ。

ピー、只今電話に出ることが出来ません。御用の方はピーという音の後に…ピッ、ツーツー

ニシシ、ほらね。
てゆうか留守録に入れないほどの用件だったら電話なんてすんなっつの!!
でもいつだかまた今度であったときに、今日電話をかけてきた誰かさんは私にどうして出ないのー!!と言うのだろう。
どうしてってめんどうだ、なんて言えない私はお風呂に入ってたのよ!!とか言って誤魔化すのだろう。
てゆうかそもそも次に出会えるかどうかもわからない。
外へ出ることすら億劫なのだからね、もう二度と会わないかもね。

はわわ、そんなこと思っているうちにまたもや着信が!!
やあねぇ、私ったら人から求められるクチの人間?
なぁーんて自意識過剰は心の中に閉じ込めておくだけで充分。
誰だろうか。




とってもハイテクなこの時代には、ナンバーディスプレイというものが存在するのです。
覗き込んだそれには090×××××××…おおっと、この番号はふ、ふ、不二!!
不二はしつこいからなあ。
たいがい出るまでかけ続けるからなあ。
あんまりお電話のコール鳴らすと隣近所が苦情が来ちゃうよ!!!
それをわかってて不二もかけてくるんだから性質が悪いよねぇ。

私は目の前の電話がコールを鳴らし、留守録サービスに切り替わり、切られる音をそれから5回ほど見送った。
変化があったのは6回目、留守録サービスに切り替わっても切られる音が聞こえない。
…てゆうか今気がついたんだけど、電話線引っこ抜いちゃえばよかったのかなあ。
あー…早く気付けばよかったなあ、次からそうしよう。
なんて思っていたらピーッという発信音の後に不二は言葉を発したのだ。

"今、君ン家の前にいるから、今から上がってくよ"

それだけ言ってガチャン、と電話は切られた。
ああ、不二は本当に勝手だなあと思いながらもそれを許容している自分がいる。
てゆうかどうでもいいっていうか、そんなもんでもあるのだが。
まあ、好きなようにしなさいっていう寛容な私の心構えなのでありますよ、ニシシ!!

「っくしゅ!!!」
「ああ、そんな格好してるから」

いつの間にか部屋に入ってきたらしい不二は眉を顰めて私をたしなめた。来るの早いなぁ!!!

「君さ、鍵くらいかけておきなよね」

私の部屋を私よりも知ってる不二は家主よりも切磋琢磨と部屋を行き来する。
鍵開いてたのか…っていうか昨日帰ってきたときからそのまんまだったわけだ。
危ないなあ。
なんて思いながらも注意しようとかいう気は起きないのでいつか私は変質者に犯されて殺されてしまうという末路を辿りそうだ。
別に犯されるのは構わないけど殺されるのは嫌だな、と思って私はまだ生きてはいたいのかと思った。

「お風呂上り?パジャマとか着なよ、髪は濡れてるし」

不二はまるで私の母よりも母らしく私の対して世話を焼いてくれる。
だらしなくタオルを巻いただけの身体にパジャマを着せ、濡れっぱなしの髪をタオルで拭いて、ドライヤーをかけて。

「夕飯食べた?」
「お腹減ってない」

ダメだよ食べなきゃ、と不二は言って持ってきたらしい食べ物をレンジで温めていた。
不二は料理はそんなにしたことがないらしいけれど、この間ここに料理の本を持ち込んでいたので私にさせるかするつもりはあるのだろうと

思う。
出来れば後者であって欲しい。
私は出来合いのものを食べるだけでいいと思っているからだ。

「ホラ、食べて」

出来上がった食べ物を親切にもスプーンですくって冷ましてから私の口に運んでくれる。
ああ、これはまるで理想のお母さん像そのままだ、と思ってしまうのでなんとなく逆らえない私は素直に口をあける。
私はこうして不二に生かされている。
私はひとりでは生きていけない。
そもそもなぜ不二が私にここまでしてくれる理由というものが私にはわからなかった。
テニス部で忙しいだろうし、やるべきこともあるだろうし、なにより彼は世界から求められてる人間だ!!
世界から放りだされ、なにもする気が起きず、だらだらと続いてる生を引きずるように生きている私とは違う。

「ねぇ、不二」
「なんだい」

散らかった部屋を片付けながら不二は聞き返した。
どうせまた明日は元の木阿弥、私は散らして散らして片付けない。
繰り返し繰り返すこのループを不二はどのように思っているのか。
意味がない。
まったく意味がない。

「あんたはどうしてここへ来るの?」

すると不二は黙ってしまって私の顔をじっと見るのだ。
やめてよ、私今日顔洗ってないの。
歯も磨いてない。
お化粧もしてないし、眉毛なんてないに等しいのよ。

「……僕もここで暮らそうかな」

ぽそり、と呟いた不二の言葉はまったく見当違いの言葉だった。
なんですって?
今、あんたなんていった?

不二は散らかった雑誌を片付けるのをやめ、私に歩み寄って近づいた。
抱きかかえられる…ああ、本当に子供のようじゃないか。


「そりゃあ君は――――自堕落で、なまけもののダメ人間だけどさ。こんな彼女欲しくもないし、結婚なんてまっぴらごめんだよ、でもね」
ひっどいこと言うなあ、こいつ。
と膨らませたほっぺたを不二は撫でてにんまりと笑った。
「顔は悪くないし、外見は大体合格。嫌いって言う男はいないと思うよ」
「貶されてる気がする」
「そう?でもまあともかくそんな君だけどさ、たまに言われる一言とかにすごく感動させられるんだよ」
そういって不二は私の胸に顔を埋める。
なんだ、なんだかんだ言ったって不二だってケダモノなんだなあと思いながらも抵抗する理由はなかったのでそのままにしておいた。
なんだよ、パジャマ着させておいて脱がせるのかよ。

「すぐ鬱になって閉じこもるけど、それって君がなまじ純粋だからいろいろと許せないんでしょ?」
「あ、やだっ!!」
不二は肌に吸い付いて赤い痕を残していく。
やだなあ、このあいだもしたばっかなのに。
やると疲れるから嫌なのに。

「僕のものになっちゃえば、君は傷つくこともなくこの部屋の中だけで僕を待って生きていけるのに」
「あ、あ、あ……!!!」







愛に溺れて、言葉に酔って、
ダメダメダメダメ ダメ人間!!!

この箱庭の中でなら、しっかりと笑える気がするよ。







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Web拍手ページにこれまたずいぶん長いこといましたー
誤字指摘どうもありがとうございました。ついでに微妙に修正してみたりも。さーて、どこでしょうか(笑

2004/12/8    アラナミ