いちゃいちゃ☆パラダイス







「(ぎゃあ!!)」


情けない叫び声を心の中で上げつつ、私、はそこから360度回って……ってこれじゃ戻っちゃうよ!(汗)180度回ってそこから走り出した。
とにかくここから逃げなきゃ!
え?なんでこんなに一生懸命走って逃げてるかって?


ことの起こりは私が明日提出する宿題のプリントを教室に忘れたしまったことだと思う。
そのプリントってのは数学の、私が苦手とする科目の宿題で、忘れたままにしておいたら明日困るのは明らかだし、なによりその担当教師がテニス部顧問の超恐いスミレちゃんなのだ!
でも普段はあんまし恐くないし、っていうか優しいし、話してて面白いし、女テニの先輩後輩ということでスミレちゃんの孫の桜乃ちゃんとも仲がいい。
そう、私はどっちかっていうとスミレちゃんとは仲がいいのだが、仲がいいからこそよくわかるのだ。
スミレちゃんの性格。
曲がったことが大嫌い。
忘れ物とか、やらなきゃならない宿題とか、そういうことにはとても厳しい。
だから私は教室に忘れてきてしまったプリントを、部活の休憩時間に取りに戻ったのだが――…


嫌なモンに出くわしてしまった。


人様のいちゃいちゃしてるとこなんて見るもんじゃないよ。
っていうか、教室でいちゃつくなってば!!


というわけで逃走してます。
だからって逃げ出したりするか、ですって?
普段の私だったら、物怖じもしなくガラッと扉開けて入ってプリント取って何事もなかったかのように出て行くってば!
でもね、それが出来なかったのはね、男の方があの、不二周助だったのよ。


男にも女にも受けがいい。
もちろん先生にだって。
持って生まれたその外観と、物腰の柔らかな対応、そして柔らかな笑顔と優しさ。
みんな不二周助を、天が二物も三物も与えたような出来た人間だって信じてやまない。


けど!!!
私にとってみれば、なんかあの男胡散臭くない?ってかんじなのだ。
そりゃあ外観のキレイさは認めるけど、あの男はつかみ所がなさすぎる。


不二は優しいって周りの友達は言うけど、本当にそうか?
本当に優しいっていうのは、具体例を挙げて大石君とか河村君とかのことを言うのであって、なんか不二の優しさは質が違うと思う。
笑顔が素敵よねって周りの友達はうっとりしてるけど、本当にそうか?
だいたいいつもニコニコ笑ってるってことは不二のとっての微笑み=無表情なんじゃないの?
あの男は本当に笑ってなんかいないってば、絶対。


うん、つまりね、私は不二周助が苦手なのだ。
本当に苦手で苦手でしょうがないのだ。
いっそ一生相容れなくてもいい。
っていうか、関わりあいになりたくない。
さっきの光景を見たってことが不二に知れたら、こっちが弱みを握られてしまうような気さえする。


「っはぁ、はぁっ……」
絶えず走らせていた足をとめて、周りを見る。
誰もいないよね。
「ふぅ……疲れた」
どっこいしょと、階段の段差に腰をかけて一息つく。
「まぁーったく、教室でいちゃついてんじゃないっての……」
ボソリと私はつぶやいた。
誰もいないと思ったからの独り言だったのだが……


「あ、やっぱりさんだったんだ。ごめんね、教室でいちゃいちゃしてたよ」


「ぎゃあ!!!」


後ろに30cmは飛び上がったんじゃないかってくらい私は驚いた。
横を向けば、そこには―――……不二周助……!!!
近寄ってくる不二に、私はじりじりと後ずさりしながら逃げの態勢に入ろうと……したかったんだけど腰が抜けて立てない!!(泣)
とん、と背中に当たる壁の感触。
ぎゃあ!ぎゃあ!!ぎゃあ!!!
どどどどどどどどどどど、どうしようっ!?


「まさかあんなとこ見られるとは思ってなかったんだけど……」
ふるふるふると、私は一生懸命首を横に振る。
「ん?見てないって言うの?」
こくこくこく、と今度は首を縦に振る。
「嘘ついちゃだめだよ、ちゃんと見てたんだから、僕」
不二から死角だった筈なのに!!
千里眼でも持ってるのか!?


スッと両手で行き場を塞がれて(そうでなくても腰抜けて動けないけど)、いつもの不二のニコニコ笑顔が取り払われる。
ヒィッッ!!
目が開いてる〜ッッ!恐い、恐い、恐い〜!!!


「同じことしてあげるから、黙っててねVv」
ガッチリ捕まえられて、もう逃げること不可能です。
っていうかこいつ、絶対すべての女が自分のこと好きだと思ってるでしょ!!


「い、い〜〜〜〜や〜〜〜〜ッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
腰が抜けてることなんてなんのその、とにかく私は不二から逃げたかった。
私の腰をグッとホールドして離さない不二を、力いっぱい押しのけようとするけど、ちくしょう。
不二め、その細腕のどこにそんな力がありやがるんだ!!(大汗)


「いやだって言ってんでしょ!は〜〜〜な〜〜〜し〜〜〜て〜〜〜ッッッ!!!」
思いっきり全身で拒否してるのに、こいつってば……
「ん?同じじゃ嫌?もっとすごいことしてほしい?」
なんてボケたこと言った上に、私の顎をクィッと持ち上げてきた。


「いやだって言ってんでしょ!!(半泣)だいたいあんたさっきの女の子どーしたのよっ!置いてきたの!?」
「大丈夫、もう部活行くって言って出てきたから。それにしても…が嫉妬してくれるなんて嬉しいよVv」
にっこり笑ってさらに顔を近づけてくる。
っていうか今呼び捨てたねっ!きぃ!!
「ぎゃあ!!違うってば、い〜〜〜や〜〜〜!!!」
近づく顔を懇親の力をこめて押し返す。


「ひどいなぁ…そんなに嫌がるなんて。僕のこと嫌い?」
「大嫌いです、超苦手です、やめてください、近寄らないで」
淡々とした口調で、しっしっと犬を追い払うかのように手を振って私は言った。
この光景、親友のに見られたらすごい怒られるだろうね。


「そう、じゃ離れてあげるよ」
あ、案外アッサリ引いたよ。
諦めはいいほうなのかな?
なんて思って、ちょっと油断したのが私の間違いでした。
……一生の不覚だってば、本当に。


ちゅ♪


ああ、なんか今可愛らしい音がしなかったか?


一瞬暗くなった目の前と、超アップの不二の顔。
そして離されていく、唇…………………………………………………


クチビル!?


「なっ…なっ…、なっ、なっ。なっ……!!!!」
ぱくぱくと、酸欠になった金魚のように口が開く。
「離れてあげたご褒美ってことで、ね」
なっ、なにが「ね」よっ!!!
なにが「ご褒美」よっ!!!!
「私のファーストキス返せ〜!!!!!」
「うん、ご馳走様Vv」
キィイイイイ!!!


ご機嫌に去っていくその後ろ姿。
憎たらしくて、憎たらしくて、ええそりゃあもぉたまらなかったですよ。


不二周助は苦手、改め、天敵。


あんなやつ大嫌いだ。




















































センパ〜イ!どうしたんですか?遅かったですね」
今さっき我が身に起きた悪夢にぐったりしつつ、私はテニスコートに戻ってった。
ああ…ちょこちょこ走ってくる桜乃ちゃんが可愛い!!(*>△<*)
私の心を癒してくれるようだわ!!
ぎゅ〜っと桜乃ちゃんを抱きしめ、私はホッと一息ついた。
「桜乃ちゃん見るとホッとする〜♪あ〜もうっ!私さっきまで悪魔にひどいことされたのよ〜!」
「悪魔……ですか?」
「そうよ〜天使の皮かぶった悪魔〜ってか、大魔王よりタチ悪いの!」

「それって僕のこと?」
力をこめて桜乃に力説してたら、後ろからその大魔王よりタチ悪いお方が話し掛けてきた。
「ヒィッ!!!」
もうなんですか、もはや警戒態勢というかなんというか、すぐさま身体が反応しましたよ、恐ろしさのあまり。
一定の距離を取って、それでも身構えずにはいられない。


「なっ……なんの用よっ!不二!!」
きっと私猫だったら毛を逆立ててフーフー言ってるだろうと思う。
「ひどいなぁ…その態度。が僕の話してるみたいだったから来たのに…ねぇ、桜乃ちゃん」
にっこり笑って桜乃に答えを促す不二。
その桜乃の肩にはポン、と不二の手が置かれて……


「ダメよっ!桜乃!!こいつの半径1m以内に近づくと孕まされるわよっ!!」
可愛い可愛い私の後輩。
こんな黒くて大魔王で女キラーみたいな奴に触れさせてたまるもんですか!!
私は桜乃を隠すようにして不二の目の前に立ちはだかった。
……内心すごく恐かったんだけど。


「はらま…って……アハハハハハハ!」
「は?」
いきなり目の前で大爆笑する不二。
なんだこいつわ。
桜乃も不思議そうに見てるじゃないのよ。
「アハハハハハハハ!アハハハハハハハ!」
なんか笑いのツボにでもはいったんでしょーか……でも、こんなにも笑われると正直腹が立ってくる。


「……なによ」
「アハハハ!ううん、って最高だね、すごくおもしろいよ」
「はぁ?」







かくして私は、生涯最大の天敵であろうと認識した人物に、あれ以来気に入られたようで、毎日毎日……


嫌っていうほどつきまとわれ


嫌っていうほど注目を浴び


嫌っていうほど付き合ってと言われた































「だって僕はが好きなんだよ?」


そんな顔して言うな。


天使の皮かぶって、甘いこと囁く悪魔め。
































好きになっちゃいそうじゃないか。





















「僕のこと好きになった?」


にっこり笑う不二は絶対確信犯でしょ?
















私にとって、不二周助は苦手、改め、天敵。


やっぱりあんなやつ大嫌いだ。





fin
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黒い〜Vv黒い〜Vv黒不二〜〜VvVv
こんな黒不二が書きたかった。
ちょっと(?)満足いかないとこもあるけど、ともかく黒不二が書きたかった!!
っていうか、ヒロインが素直じゃないと言うか、不二が苦手というか……
自分で書いててこのノリ好きだ。
書いててすんごく楽しかったもん。
ちなみにこの夢小説は、不二不二と私が騒ぎ、不二を描きまくってたとき、トラがそれに触発されて不二を描く!!とか言って描いた絵が、不二夢絵でした。
っていうか、女装したリョーマだとか言ったもんだから私怒ってこれは夢絵!と勝手に決めました。
その絵がこのページの壁紙になってるはずですが、どうでしょう?
ってなってないや…。
それはまた後日ということで。
ちなみにそれは1番初め、不二がいちゃいちゃしてる女の子です。
その絵に触発されて、その後マンガを勢いで書いたあと小説に起こしました。
どうでしょう?
ギャグテイストな夢は……


つか、この夢の内容よりも、なによりも、気になったのは「孕まされる」って読めましたか?
私読めないからすごく気になった。
「はらまされる」と読むんですが…意味は妊娠ってことですよ、大雑把に言うと。


2002/8/9