カムカムハッピーハッピーキャンディキャラメル!!






「こない……!!!」

はやおら蒼白して立ち上がり、室内をぐるれと一周、それから右往左往したかと思うと床に転がっているカバンから慌てて手帳を取り出してみたり、カレンダーを覗いては指と口をしきりに動かして見たりした。
それに対し僕はといえばこの家の住人で、この部屋の持ち主でもある彼女よりもそれらしくのベッドに背中を預け、つい先ほどここに来る間に寄って買ってきた雑誌に目を通している僕なんておかまいなしに彼女は部屋を飛び出したかと思うと、しばらくしてどこの家でも当たり前に流れるジャーという短い水音が流れ、そしてまた彼女はさっきよりも顔を青くさせて「こない……」と天を仰ぎながら部屋に戻ってきた。

「なに、こないって生理でも来ないの?」

はは、乾いた笑いはむなしく空気に吸収される。
まったくの冗談で言ったつもりだった言葉にはピタリと動きをとめ、それからとてつもない俊敏な動きで僕の手から読みかけの雑誌を奪い取り、それをベッドの上へと放り投げた。

ちょっと、しおりも挟んでないのに…。

などと恨めしくを見る前に、その彼女が僕を恨めしく見ていたのだからどうしようもない。
はてさて、どうやら生理が来ないというのは大当たりだとしてもそれをは僕に一因があると思っているらしい―――。



「も、もうすぐ1ヶ月経っちゃうわ、でもこないの!!」



目に涙すらためては激白した。
1ヶ月前といえば久しぶりに付け加えて珍しくおあずけの意思が下されなかった流れがあったときだ。
理性を抑えずに盛ってしまったからもしかしたら避妊に失敗したかもしれない。いや待てよ、その後シャワーを浴びたときに雰囲気がそんな風になったけど、そのときはしてなかったかもしれないなあ。あー…、うん、取りに行くのも無粋かと思ってナマだったな。うん、たしかそうだ。


「まあいいんじゃない。卒業まであと少しだし、ちょっと早いけど入籍しとく?」
「!!!!!」


いつかはそうなるはずだったのが早まっただけでしょと言えば、は顔を真っ赤にさせて怒ってるんだか、照れてるんだか。
僕としては後者を推奨したいものだけど、のことだ。
絶対に怒ってるに違いないんだ。





「不二のバカァ〜〜〜〜〜っ!!!」




は叫んだと共に3年前水族館に行ったとき買ってあげたアザラシのぬいぐるみを思い切り僕に投げつけて家から飛び出て行った。
あっはっは、本当には出会ったころから変わんないなあ。

僕から逃げることなんてできないって、月日と年月をかけて今までじっくりハッキリと教えてあげたのに。









しばらくして豚まんふたつ買って帰ってきたに、僕はあらかじめ用意していた婚姻届に半ばムリヤリ名前を書かせた。


数日のちに来た!!と喜ぶを傍目にそれでも僕はしてやったりと口の端をあげるのだろう。
勘違いにせよなんにせよ、これからは一生をもって―――――……僕から逃げることなんかできないって知るのだからね。














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彼女がそれで幸せかどうかは、神のみぞ知るところだ。
パラレル未来いちゃパラ、大学生ぐらいの設定で。

妊娠ネタは少女漫画ではどこでも使われてんのね、なら私も!!という経緯です。

2004/11/14(ちょっと加筆修正05/3/23)        アラナミ