いちゃいちゃ☆パラダイス3
■夏祭り編■





「なんであんたがここにいるのよ」

まるで口裂け女にでもなった気分なくらいにひきつった顔と頬。きっと今の私の顔はそんなんだ。
ひょうひょうと、さも当たり前のように私の目の前にいるこの男…不二を見ると、いつもいつも私は今すぐここから回れ右して全力疾走、というか逃走したい気分になる。
いや、というよりむしろ自分の浅はかさに後悔したとでも言うべきか。
そりゃあもう神様仏様、悪魔にだって魂売ってもい――――くないよ!悪魔は私の目の前にいるのだからな!!
つか、それくらい悔やんだんだ!
頭痛さえ覚えるくらいなんだ!!
ちくしょう!
すべて、すべて、私が悪いんだ!!



ことのあらましこうだ。
今日は悲しいかな登校日☆
サボる気満々で眠りこけていたら、朝から自室で不二と遭遇するというまるで有り得ないような出来事が発生。
イエス!これは悪夢だ!!と再び意識を夢の淵へ追いやろうとする私の心むなしく「添い寝でもして欲しいの?」などという不可思議な幻聴まで聞こえた。

まーあ リ ア ル な 夢 ☆

なんて思ってたら私に覆い被さる不二の重みに現実だ!と意識の強制帰還。嗚呼恐ろしい。
大体なんで私の部屋に!と問い詰めたところ、母があげてくれたらしい。
やめてくれ、おかあたま!年頃の娘の部屋にこんな悪魔みたく節操のない色魔を入れないでくれ!!
私の家に不二がいる。不二の存在がある。不二の気配がある。
それだけでもう1年分の疲れとも言うくらいに疲れ果ててしまった私は、憎らしいくらい元気な不二に到底かなうはずもなく、またサボることあたわず。
不二に引っ張られて無理矢理登校という大惨事に発展。イヤア!
それだけではあき足らず、朝から今までずっとこの状態とな!

えー?一体どんな状態だって?
ハッハッハッ!世のお嬢さん方は好奇心が旺盛でいらっしゃる。と私なにに話し掛けているんだという疑問を感じつつも、軽くテンパった私は誰にともなくただひたすら脳内で誰かに説明を施す。
つまりね、私はこの不二という悪魔に抱きかかえられるように腰に手を回されて座らされているのだよ!
アア、もうさっきから睨もうが、罵声浴びせようが涼しい顔してこの状態でいること小1時間と34分28秒、多分!
暑っ苦しいから離れろとのたうちまわれば冷房効きすぎて寒いんだと屁理屈をこねる有り様。
なんだとう!?このやろう。それは温度設定上げればいいだけのことなんだ!
見ろ!私の右手に広がるクラスメイトの人々を。夏だというのに青白い顔で鳥肌を立てて凍えているではないか!
世の主婦とデンコちゃんに怒られるぞ!節電節電!!
それでも凍えたままなのは、ひとえにこの不二周助とい人間がとてつもなく恐ろしい存在だということをクラスメイト達は知っているからなんでしょうか……?
いや、まさか。不二の猫ッ被りぶりは天下一品ではないか、ハッハッハッ!
………ちくしょう、大魔王め。
できることなら今すぐにでもこいつを振り払って逃げ出したいと、何度思ったことか!
家に帰って仮病でも居留守でも使って不二から逃げ切りたいと、何度画策したことか!!
イヤ!仮病はダメだ、見舞いと称してやってくる!不二は絶対!!

大きくため息をついて、私はうなだれる。
ため息なんてついてどうしたのだと、不二が笑いかける。
……なんですと?それをあんたが聞きますか?私のため息の原因とも言える、あ ん た が ! !
くっ…こういうあらゆる世界の不運と悪運に巡りあったときは、可愛い後輩の顔でも見て癒されたい!ああ癒されたいよぅ!!
なんて思ってぼやーと掠れて現れた愛しの後輩の幻像に、疲れてるんだ、なんて余計に肩を落としたくなった。

先輩」
ほやほやと可愛い声が耳に入る。
ヤバイよ私、ついに幻聴まで聞こえ始めたか…なんてうつろに幻像を見つめたり。
現像にしてはリアルなような気もするけど………ウフフ★
先輩〜」と、更に私を呼ぶ後輩の可愛い声の幻聴。
「ヤバイ、私疲れてる。すごく疲れてる」
せんぱぁい〜〜〜!」
必死に私を呼ぶ声。伸ばされた可愛らしい女の子の手。私の腕を掴んではとてもリアルな温かさ………って、もしかしてこれって幻じゃない!?
「さ、ささささ桜乃!ぇ〜と、どうしたなんでも私に言ってみそ!!」
慌ててどもって我に返ったら、桜乃はほっとしたように口を開く。
危なっ、疲労困憊でトリップだよ、うへぇ。
心なしか真後ろ近接でクスクスと言う笑い声が聞こえるような気……じゃなくて、聞こえる。
わ、笑われてる!お見通しだよ、ギャフー!!
「おばあちゃんが先輩にお話があるって…」
「は、話?」
「はい」
ピカリと輝く私の目。
「そっか、じゃあ今から行かなくちゃ!!」
まるでその事を知らしめるかのように、私は意気揚々と声を張り上げた。
もちろん、"今から"を強調して。
さぁ退け、やれ退け、今すぐ退け!
最もな言い訳があるんだ、そなたの腕からわらわを解き放ちたまへ!
ぐ、と立ち上がろうとする足に力を込める。
次いで私の腰まわりに絡み付いてる不二の腕に力が込められる。
ん、ん、んん!?
そしてさらにその腰周りの腕が深く絡みつく ( エ ロ く さ い !)。
私の肩口にちょこんと不二の頭が乗せられて、それでいて顔を埋めるように………!ヒィ!!
フッと笑ったらしいそのついでに、首筋に生温かくかかった不二の息。
キモッ!
思った瞬時たった鳥肌、そして私の顔は引きつって顔面蒼白。それでいて半泣きな状態ですヨゥ!
「さ…さく、」
さくのと続けようとした私の言葉は、ピシリと固まってしまった。
だって助けを求めるように桜乃を見たら、恥ずかしそうに頬を染めて俯いていたんだから。
桜乃、桜乃!たしかにそんな桜乃も可愛いけど!可愛いけど!!可愛いけど!!!
違う、違うからぁ!

「それって急ぎの用かな、桜乃ちゃん」
言葉を出すこともままならなくひとり心の中ガタガタしている私をよそに、不二は桜乃に話し掛ける。
こ、こいつ!桜乃に話し掛けるとは何様のつもりだ!
不二のクセに、不二のクセにぃ!
「い、いえ。そんなことないと思います……」
「そう、じゃあまだこうしててもいいみたいだよ、
耳元をくすぐる不二の声。お……悪寒が………!!

「――――…あ〜、あー、さっ、さくのっ!」
「は、はい!」
一生懸命不二を押しのけて振り払う。
とっさに桜乃を呼んで私はイスから立ち上がる。
「今日、一緒に夏祭り行かない?」
にへらっと笑って言った。






………………
よく考えたら、なにもかもの元凶は私かい。

なんて、今になって頭を抱えたってもう遅い。
だってホラ、待ち合わせ場所に不二がいる。
プラス菊丸と越前!
…こいつ全部謀りやがったな。
だってに菊丸を、桜乃と朋香に越前を。
そ・し・た・ら!
私は必然的に不二じゃない!!

「なんであんたがここにいるの?」
「偶然だねVv」
なんて笑って言うから、必然的に夏の海の出来事が瞬時にフラッシュバック!
「だからあんたの偶然は偶然じゃないし!!」
そうよ、あんたのコレは計画的犯行!!
「浴衣姿も可愛いね、
「うわ」
もうなんなんのよ!
バカ〜!不二のバカ〜!!(泣)

「いいじゃない、
「「そうですよ〜」」
えへへと笑う貴方たちは、貴方たち自身本当に素直で、好きな人といられることを本当に喜んでいるだけなんだろうけど。

「鬼かおまえら」

と思ったのは変えようのない真実なのです。


いいです。
もういいです。
どうせ不二の魔の手からは逃げられないんですよ〜(-ε-)
だったらせめて、有効活用するまでのこと!
いつもいつも振り回されてた私だけど、今日こそは、返り討ちに!

と、意気込んだ私が考え付いたのは、
「不二〜して〜食べたい〜欲しい」の連発!!
どうだ!
しょせん臆病者で小心者のでケチな私が考え得ることなんてこんなもんなんだ!
金は天下の回り物。
ある人に使わせないでどうしろというのよ!
でもさすがは不二…一口も二口も食えない奴だった。
返り討ちなんてあまっちょろすぎでダメダメ君でした。

「ハイ、ご所望のたこ焼き」
カツオブシが乗っかって、ホカホカしてて、タコが大きいって評判で、しかもとろろ芋まで入ってて、おいしいのはもう昨年からの調査済み。
それが今不二の手の中にあって、私の目の前にあって、不二は笑ってて、私は不二の目の前にいて。
「ハイ、、あ〜ん」
「……………」
輝かんばかりの笑顔でそれを差し出す不二に、食べたいけど食べる気がこれっぽっちも起きない。
むしろどんどんいらなくなねような気がしないでもない。
…おいしいのに。

、ホラ口あけて?」
「……………」
目と顔を逸らしてひたすら現実逃避でもしようかと思ったり。
嫌だよ、嫌だよ私。
「食べないの?」
「…………(不二の手から)食べたくない」
小さく小さく心から思いのたけを込めて、私は言うけども、刹那なにやら冷ややかな笑みに変わったでもないようなそんな気がして、……恐い。
「…………へぇ」
ホラ、やっぱり!
どこかなにかすべてを知り尽くしているような一言!
キラリと悪い意味で光った笑顔を見てしまった私の顔は正直引きつった。
それから不二のたこ焼きを持つ手がスッと向かった先に見えたのは、ゴミ箱。
………………って……

「じゃあコレ捨てるしかないよね」
「だ、ダメー!」
そんなもったいないことしないで!と、貧乏性の私は思わず不二の腕に飛びついてしまった。
というかむしろ微妙に方向転換してくだすった不二のお陰で、腕どころか胸に。
か、確信犯め!!
不二はそっと私の口元にたこ焼きを寄せてにっこりと笑った。
もう文句は言わせねぇと言わんばかりに、黒く。
「…私自分で食べれ……」
「口移しがいい?(開眼)」
「(ヒィッ!)イタダキマス!!」

諦めた私はなすがままに差し出されたタコ焼きを、かじって食べる。
「熱っ…ん」
「おいしい?」
「ん……」
もぐもぐと咀嚼しながら不二を見る。
黒くもなんでもない、ただ満足そうに微笑む不二を。

……はたから見れば、ただのいちゃいちゃバカップルじゃないか。
冗談じゃないや、馬鹿野郎。
、ほっぺたにカツオブシ」
ペロッと頬を舐めて取っていく不二……なんてもう確定じゃないか!
周りの人たちが、目も合わせらんないとばかりに顔を逸らして足早に通りすぎてくし!
いつの間にか達いないし!!

「……不二は食べないのー?」
聞いてみれば
を見てるとお腹いっぱいだから」
またこいつは……そんなこと言っても私にはきかないよ。
「…あっそ」
そう言ってかじりかけのタコ焼きを口に入れた。

「そう言えば、は僕に好きって言ってくれないけど…なんで?」
誰が言うもんか。
カクンと傾いた顔の可愛さになんて騙されないよ。
「ね、なんで?」
「教えない」
悔しいからだよ、フン。

「そう…じゃあ、絶対に好きって言わして見せるから」
……そしたらヴァージン頂戴…

なんてことを言うんだオマエ!!!!


耳元でこっそりつぶやいて、私の顔を真っ赤に染めさせた。
怒りか気恥ずかしさか、これはどっちなんだろーね。
でもすでにもう落ちたようなもんの私にとって、この賭けは不利以外の何物でもないわけで。
すべてすべて、私の口が滑らないかのが次第の賭けでもあり、
それを黙認してしまった時点で、私の負けは決まったようなもんで、

ついさっき教えないなんて言ったあの一言こそ、
遠回りに好きだと言ったなんて、気付くのは随分後。

ああもう本当に、悔しい。


「夏の合宿楽しみだね?」
はあ?男子と女子は別々でしょう?

「そういえば竜崎先生のとこ行ったの?」
アイタッ。
すっかりワスレテタヨー。

「じゃあ帰りは桜乃ちゃん送ってくついでに先生の話聞きに行こうか」
はあ…なんでそんなに親切なんですか?


およそ1時間後、私はこのとき不二が言った言葉を理解する。





夏の合宿編へ続く!!
-------------------------------------------

中途半端に今回はヒロインと不二がいちゃいちゃしてるだけ。
あまりおもしろくは、ない(沈)
そこは合宿編へ続くからだと思って割愛してください(殴)


本当に自分納得できなかったから書き直した。
でも流れは変わってない……と思う。
ん?流れは変わったか。
内容が変わってないだけで。

どっちにしろ、1度アップしたものを変えてしまってすみませんでした。

2002/8/19

--------------------------------
貧乏性でごめんなさい。
修正しました。

2003/7/19