それはぐるぐるするのです。
 ぎゅっとしめつけてとても苦しいのです。
 心臓を突き抜け破るような気持ち。

 とても………
 とても切ないのです。





きょうだいのようできょうだいでないものたち・3





ジローちゃんがあたしから離れていく。
サヨナラでもない、バイバイでもない。
ただ……
ただ、言葉もなく去っていく。

(離れた方がいいのかもしれない。そうすれば傷つかないで済むのかもしれない。お互いを想う気持ちが違うから辛いんだ。通じ合っていけないことが悲しいんだ。一緒にいることが幸せだったときとは違うから。今は一緒にいることが辛くなるから。…離れたほうがいいのかもしれない。でもそれを考えると切なくなるんだ。)

ああ…もしかしたらジローちゃんはあたしより大人だったのかもしれない。
ジローちゃんとあたしの"好き"は違うけど、"大切な人"には変わりないんだ。
"好き"より"大切"を選んだジローちゃん。
"好き"も"大切"も選べなくて口を噤むあたし。
ううん、どちらかと言うと、あたしはあたしの"好き"を選んでいた。
きょうだいみたく、"好き"でいて欲しいと思ってた。





ジローちゃんはおとうとみたい。
かわいくて、いつもあたしをたよってくるの。
けど、けどね。

(まって、まってよ ジローちゃあん!)

ジローちゃんはつよく、にほんあしでたっているの。
ひとりでも、どんなときでも、しろいはをみせてわらって、そしてきちんとたっているの。
くらいみちでも、だれもいないはやしのおくでも、おかあさんにおこられてても。
ひとりで、そのにほんあしでしゃんとたっているの。

(ジローちゃん!!)

あたしはひっしでてをのばすの。
だけどこえはでないの。
ジローちゃんにとどかない。

(ジローちゃあん・・・)

さみしくて、こわくて、かなしくて。
なんどジローちゃんってよんでも、なにもかえってこない。
しぃんとしずまって、じぶんのこえがこだました。
さみしいよぅ、こわいよぅ、かなしいよぅ・・・
ちゃんとつないでいたはずなのに、うっかりはなしてしまうとこうだから。
ジローちゃんにははねがある。
とおくへとんでいけるはねが。
あたしにはそれがないから、いっしょにとべない。
だけどあたしはジローちゃんとずっといっしょにいたかった。
だからずっとてをつないでた。
てをつないでジローちゃんをここにとどまらせておいた。

・・・・・・・・・。
あーあ、なんだ。
わかっちゃった。
あたし、ジローちゃんのおねぇさんじゃない。
ジローちゃんがいないとだめだったのは、あたしなんだ。
あたしがジローちゃんをひつようとしてたんだ。

(ジローちゃん?)

よんでもへんじはない。
つないでたてをはなしたのはあたしだから。
もういちどつなぐことができたのに、あたしはじぶんからてをひいてしまったから。
ごめんね、ジローちゃん。





そしてあたしは何度も何度も繰り返し、同じ夢を見続けるようになった。
ジローちゃんとあたし。
ふたり手を繋いで歩く夢を。
それは昔の記憶なのか、はたまた未来の偶像なのか、わからなかったけど。

これからあたしはずいぶん長い間思い悩むことになる。





つづく
----------------------------------------


短くてごめん。
次の話も短いです。
ホラ、個人の回想だから!(言い訳 爆)


2003/4/30