君が俺を好きになってくれたらいいのに。
特別に、好きになってくれたらよかったのに。





きょうだいのようできょうだいでないものたち・4





君が好き。
好きだよ。
小さいころからずっと。
小さいころからずっとそばにいた君が、好きだよ。
君の事が好きになった理由さえ忘れてしまうほど長い間、ずっと好きだったよ。
君が俺をおとことして見ていなくても。
きょうだいのように思っていても。
俺は君のことがずっと好きだったよ。

小さなときから君はいつも俺に手を差し伸べてくれた。
あたたかな優しい手。
手を繋いで、一緒に行こうと、そう言ってくれるような。
嬉しかったよ。
君が指し伸ばす手は、俺だけに向けられるから。
俺の手が君のてのひらに重なるのを待っててくれるから。
俺、嬉しかったよ。

子供のとき、俺たちは王国にいた。
男も女も境目のない王国の中に。
俺は君が好きだったけど。
君も俺が好きだったけど。
それは愛じゃなくて、感情。
一緒にいて楽しいと思える気持ち。
まだ、"特別"に変わる前の心。

でもね、世界はひろくひろがるんだ。
境目が見え始める。
年を重ねるということ。
世界を見つめる視野が広くなるということ。
そして、ふたりじゃなくなるということ。
ひろがった世界には、たくさんの人がいる。
子供じゃなくなるということ。
大人になるということ。
男だということ。
女だということ。
境目が大きく見えるということ。
"特別"だということ。
君が俺の"特別"なんだと自覚したのは、中学に入って間もない頃のことだったよ。



「おい、ジロー!って、お前のなんなわけ?」
それはクラスメイトの他愛無い話からはじまった、いわゆる恋バナ。
「なんなのって、え〜っと・・・」
聞いた奴が誰かなんて忘れてしまったけど、あれは確かに俺のキッカケになった。
「付き合ってるとかそーいうんじゃねーよな?」
「うっ、うん、まぁそーだけど・・・」
きょうだいみたいなものだ。
だけどそれを俺の口から言うには、なにか違和感があった・・・ような気がした。
俺は本当にときょうだいのようだって思ってたのかなぁ。

「じゃ、俺が告ってもいーわけな!へへっ!って可愛いんだ〜」
いいや、違う。
だって俺はあいつに、なんでだかものすごく怒りのような、ちくちくするような、嫌で、変な気持ちを持ったから。
「ダメ」
俺は俺の気持ちなんてわからなかった。
だけど、なによりさきに言葉が出てた。
眉をしかめるあいつ。
俺は言葉を続けた。

は俺のことが好きなんだから」




思えばそれは嫉妬だった。
そして思い込みだった。
自分の言葉にはじめて、に対する"特別"な気持ちに気付いた。
隣にいることが当たり前だけど。
一緒にいることがあたりまえだけど。
恋人じゃない。
彼氏彼女の関係でもない。
きょうだいのような、仲のいい幼なじみ。
それだけだから。

いい加減恋をしないでもない年齢に到達してしまった俺たちだから。
もう不安だから。
不安で不安でしょうがないから。
君が俺以外の誰かに心を奪われてしまわないかと心配でしょうがないから。
刻み付ける。
君に、俺の気持ちを。

優しくて大好きな君を困らす俺を許して。
君が好きなことに嘘はないよ。
大好きだよ。
俺を見て。
俺をおとこのことしして見てください。
そして君の心の中の、俺に対する好きって気持ちを、
"特別"に変えてください。
たいせつな君と、また一緒に手を繋いで歩けるように。
俺はずっと待ってるよ。

俺はが大好きです。

ポケットにしまいこんだ右手。
君以外繋ぎたくない。
だからずっと待ってるよ。





つづくったらつづく。
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長くなってきたぞと。
しかもこれはまだ序章っぽいぞと。
ど、どうしようUu
課題も終わらないのに(爆)


2003/5/5