05






「いくぞくそばばあ!」

かくしてゴール前の一騎打ちは始まった。目にも留まらぬ速さでの攻防が繰り広げられ、けれどそれは一瞬で終わった。殆ど同時に乱馬とコロンのスイカはお互いの一撃によって破壊された。

「相打ち!」
「これは両者失格だーーー!」
 ざわめく観客をよそに、それでも乱馬たちの動きは止まらない。それどころか、やや乱馬が押してるような雰囲気さえ見て取れて、は目を見張った。
(これなら・・・いける!?)
 激しく攻撃する乱馬の一撃一撃を防ぐことに手一杯のコロン。
「わ、わしのスイカを割るとは、いつのまにそれだけの腕を!」
「今までさんざ鍛えてもらった礼・・・たっぷりさせてもらうぜ!」

 力強くはらった乱馬の一閃が、コロンの杖を弾き飛ばした。それを手中に収めた乱馬は今、完全に優位な立ち位置にたった―――。

「どうしたばばあ、動きが鈍いぜ!それとも寄る年波にゃかなわないか!」

 勝ちが固いと思ったのか、乱馬はさらに大きく出た。

「約束しろばばあ、俺が勝ったら無条件で不死鳥丸を渡してもらう!いいな!」
「や、やむをえまい」

 いつもひょうとひょうとした余裕を見せてるコロンがその影も見せず、しおらしい。あの人がこんなに簡単にまいるなんて、おかしいと思うのだが―――・・・。

「だ、だが、わしが勝ったらシャンプーの婿になってもらう。それでいいのじゃな」

 あ、これ罠だ。勘のいいはピンときたが、乱馬はきっと違う。調子に乗って、言ってはいけないことを言う。

「ちょ、」
「おおっ、婿にでもなんでもなってやらぁ!」

 静止の声にかぶさるように大きな声で乱馬が叫んでしまった。ああ―――…。大歓喜!と喜ぶシャンプー、なに言ってんの、と乱馬を咎めるあかね。そして、

「今の言葉…」

 してやったりと笑うコロン。

「忘れるでないぞ!」

 やっぱり。が心配したとおり、やっぱりあれはコロンの演技だったのだ。
 乱馬がつきつけたはずの杖を軽くひねって、今度は乱馬を地面へとたたきつける。

「乱馬君に圧倒されていたのは演技か!」
「年の功あるな」
「んもー、だまされて結婚の約束なんかして!乱馬のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!」
「あかね、言いすぎ…」
 緊迫した状況なのに、思わず笑ってしまった。いやまぁ、乱馬がバカなのはわかってることだけど。

「やかましい!勝てばいーんだろ、勝てば!」
「わしに勝つなど100年早いわ!」

 威勢のいい乱馬の猛攻も、コロンはすばやく立ち回って乱馬を翻弄する。ぐるぐる周りを回られて、あっという間に砂に埋もれさせられてしまってる。
 まだまだと手を出すものの、砂に視界を邪魔された乱馬の手は明後日の方にいくばかりだ。

「どこを見ておる」

 流れるようにコロンは乱馬の力を流用し、乱馬をそのまま海へと放り投げた。大きい水柱をあげて乱馬が海に落ちる。

「せっかく海に来たんじゃ、楽しい水芸を見せてやろう!」

 水面に落ちた乱馬を追いかけ、コロンも海へと潜った。一瞬の間、それから大きな水竜巻が海から上がった。

「ひえ〜」
「乱馬!」

 その水竜巻の中、バックを取られた乱馬がギリギリと首を締め上げられている。けれど、乱馬の目は諦めていない。首をロックする杖をその力のままぶち折り、コロンを投げ飛ばした!

「おっ」

 けれどそのコロンのなんて余裕のさまだろう。くるっと一回転してそのまま海の上に立ったのだ。

「そんなバカな!」
「あのばーさんならやりかねん!真の達人と言うものは、水面に浮かぶ一編の木っ端を足場にすることも可能なのだ」

 冷や汗をたらしながら解説してくれる早雲おじさん。でもちょっと待って。なんか見える気がするの、それがわたしの気のせいじゃなければ・・・。

 ざん、と音を立てて水面から跳ね上がるシャープなライン…その背中にコロンが乗ってる。乗ってるその足場のそれ・・・それは・・・。

「サメじゃない」
「サメだねえ」

「卑怯者ーーー!」
「卑怯者ちがう」

「ふっ、このサメは足場にすぎん・・・くらえ鮫拳!」

 コロンが構えると、その手からものすごい水圧が鮫の形となって乱馬を突き上げた。一回、二回を回を増す。

「あんなのまともにくらい続けたら、いくら乱馬でも・・・」
 つい、弱気な言葉が口をついて出てしまった。すると反射的にあかねが飛び出した。
「やめてーーー!」

 海に飛び込んで、まさか乱馬を助けるつもりだというのか。さすがあかね!乱馬の許婚!でも・・・あかねって、たしか。あれ?いつのまに泳げるようになったの?

 沈む水面下を伺っていると、やっぱり溺れてるあかね。そうだよね、筋金入りのカナヅチだもんね!

「助けに行きたいけど…トラになっちゃう私じゃ足手まといにしかならないし・・・」

 と思ってたら、乱馬が溺れるあかねを捕まえてくれたみたい。
「なに考えてんだお前はーーーー!」
「だばってべげごほげへげへ!」

 ひどい有様だ・・・。いやだがしかし、どうするのか。

「やれやれ邪魔が入ったが、かわいそうだが始末せねばな」

 カナヅチのあかねをかかえて、劣勢に磨きがかかってしまった乱馬!











2017/5/30 ナミコ