※これはエイトさんたちがにゃんこでパラレルなお話です。※














ラララ、ニャンコロ







ふわふわであたたかく、とてもやわらかい優しさでできているこの国と王さまとおひめさまに抱き上げられたのはついこの間の話。
黒ずんでぼろぼろのきったないすすだけらけだった僕は、きれいな水と泡に流されて高い空に輝くお日様みたくピカピカになった…って言っても本当に光っているわけじゃなくって、ものの例えみたいなものだよ、気持ちいいくらいきれいになってピカピカってね。そして王さまとおひめさまは僕に名前とオレンジのバンダナをプレゼントしてくれたんだ。とても嬉しかったよ。
僕はお城の兵士と一緒に城中を見回って安全を確認する。それが終わったら中庭に行って散歩しているおひめさまの護衛をして、ぐるりとまわった花棚のそばでお日様が一番上に昇るころまでお話をするんだ。お日様が一番上に昇るとお昼、僕は王さまにおいでと言われた日はおそばで、そうでない日は少し多めのお昼を持ってお城の外に行くんだ。外にはちょっとふとっちょの子がいて、そのこがこの間崖から落ちそうになったのを助けたら外へ出ると必ずついてくるようになったんだ。だからお昼はそのことピクニックさ。それから少しだけ遠出する僕たちは橋を渡ってトラペッタらへんをうろうろする。この街は王さまの国の一部だから(たぶんきっと)、街の安全を見て回るのも僕の仕事なんだ。調子がいいときはリーザスまで行ってみるんだ。この間リーザスに行ったら仲のいい兄妹がいたけど、元気にしているかな。サーベルとゼシカって言ってたっけ、リーザスのさらに向こうには港町があるんだって。でも港町に行ってしまったら王様のところへ帰るのが朝になってしまうから、僕は慌てて走って帰ったんだ。帰り際、ふたりは今度きたら美しい女神像へ連れて行ってくれるって約束してくれたよ。
お城に帰ればほこりだらけの僕はまたピカピカに磨き上げられて夕ご飯。ご機嫌の王さまにくちゃくちゃに撫でられて、僕はお姫様が眠るまでお話をする役目を与えられる。王さまもおひめさまも大臣も寝静まったころ、僕はあくびをしながら窓の外の夜空を見上げながら用意されたふわふわのベッドの中でまるまるんだ。

そんな、そんなね、これが僕の日常。とても楽しくてしあわせな毎日さ。
でもね、ある日突然王さまはこう言ったんだ。とても毛並みのよい子がおってな、お前も一人じゃ寂しかろう。って。
別に寂しくなんかないのに、王さまもおひめさまもいるのに、寂しいなんて言ったらバチがあたっちゃう。なんてね、本当はそんなの嘘だよ。お城の外に行けばちゃあんと仲間だっているんだ。僕の後ろをついてくるふとっちょのヤンガス、橋を渡ったもっと向こうの街にいるサーベルとゼシカ。ほら、僕は全然寂しくなんかないし、だいじょうぶ。僕なんか真っ黒な毛で、ちっともキレイなんかじゃないから、そんなキレイなこがきたら、ふたりとも僕のことうでもよくなっちゃうよ。

つん、と鼻の奥に熱いものがこみ上げてお城を飛び出した。後ろをついてくるヤンガスも追いつけないほど速く、速く、外をめちゃくちゃに走って辿り着いた山の上で、僕はお城を見下ろした。遠くあたたかい王さまの部屋に、そのこはいるんだ。僕はひとりさ。
キラキラ光る星空、王さまとおひめさまに拾われて初めてその下眠る日がやってきた。ほろほろ零れる月明かり、てらされて下には岩砂漠、その真ん中で失われた時代のカタチがちょこんとたたずんでいるのをみつけた。あそこで暮らすのも、いいかもしれない。

すうすう眠りこけてお日様が高く昇るころやっと目が覚めた僕は、一番最初に目に入った大きな顔に驚いて情けない声をあげてのけぞってしまった。僕の大好きなおひめさま、なんでここにいるの!?なんて目をパチパチさせているうちにおひめさまは僕をだきしめてわんわん泣いたんだ。どうして泣くの?泣かないで。おひめさまが泣くと僕は悲しいよって、その涙をすくってさしあげたんだ。
「もうどこにもいかないで」と小さくすすりあげた声の中に混じっていた言葉に、僕は今度こそ鼻につんとくる熱さに耐え切れなくって一緒に泣いた。

それから変わりなくまた毎日は流れていった。王さまは相変わらず僕をくちゃくちゃに撫でてくれるし、おひめさまとはいつもお話をする。遠出だったするけど、でも、お城にきたキレイな子っていうのに、僕はまだ一度も出会ってないんだ。会いたいなあ。おひめさまの涙のおかげで僕はいっぱいすくわれたから、だからね、あのころと違ってこんな風に思うことができるんだ、きっと。

風はそよそよお日様色のバンダナを揺らめかす。海に近いこの国は、いつも風に潮のかすかなにおいをのせてきた。そのしっとりした潮のにおいにまぎれて、ふわふわ甘い香りが漂った。なんのにおい?って振り返ったそこに、お日様とお月様の光を一身に浴びてできたようなキレイな輝きがあったんだ。
おれ、お前に会いにきたんだぜぇ、って、それはまるでいたずらっこのようにあどけなく、そんでもってすきだよって言うみたいにあけすけに笑うものだから、光の塊だと思っていたそれは、ぜんぜん違うものなんだとわかった。なに、だあれ、なんでそんなにキラキラしてるのって思ってから、僕はハッと気がついた。もしかして、もしかしなくても、君は、―――――王さまの言ってた子?

エイト、エイト、お前に会えてよかった。オレ、ククール。お前に会いたかった、好きだよ、ずっと好きだったよ。
キラキラ輝くククールと名乗ったその子は飛び跳ねて飛びついて僕をぎゅうと抱きしめた。少し離れた場所で、くすくす笑うおひめさまの笑い声が聞こえたよ。銀色と黒、まるでおつきさまと夜みたいねっておひめさまは笑ったよ。…笑われちゃった。

それから僕たちは毎日お城の兵士と一緒に城中を見回って安全を確認した。それが終わったら中庭に行って散歩しているおひめさまの護衛をして、ぐるりとまわった花棚のそばでお日様が一番上に昇るころまでお話をするんだ。お日様が一番上に昇るとお昼、僕たちは少し多めのお昼を持ってお城の外へピクニックさ。ヤンガスにククールは紹介したけど、サーベルとゼシカにはまだなんだ。だからね、今日はリーザスまで行くんだよ。街の安全を見て回って、そうだ、リーザス像を見せてくれるって言ってたのはまだ有効かなあ、みんなでさ、見たいなって思うんだ。疲れて帰れば僕たちはピカピカに磨き上げられて夕ご飯。おひめさまのお部屋で今日の冒険譚を聞かせてあげたらさ、王さまもおひめさまも大臣も寝静まったころ、あくびをしながら窓の外の夜空を見上げるのさ、ふたりでね。用意されたふわふわのベッドの中でまるまるのも、ふたりさ。








サーベル兄さんをどうしてもどこかにだしたかった。
リクエストものを書かせて頂いてるときはよくあるのですが、リクエストしてくださったものとは360度…だったら戻ってきてそのままでも問題はないんですけどビミョーに45度とか300度とか違う方向行っちゃうのとかあるのです。
これもその一品。どんなリクエストだったかわかる人いる?


2005/3/9  ナミコ