恋人以上友達未満






灰暗い宿屋の一室、ろうそくの炎の光を頼りにエイトは数冊の本を広げ、調べものをしていた。
街にある古くめぼしい文献はおおよそ目を通したと言うのに、やはり王や姫の呪いに関する手がかりのほんの一行すら見当たらなくて。
忠誠を誓い、恩に報いるように仕えた自分にとって、いかにあの出来事が不可抗力であろうと、あれは自らのふがいなさを知らしめるためのものでしかなかった。
もっと、力があればあんなことにもならなかったかもしれない。
優しく気高い賢王は魔物の姿へと変わり、優しく美しい姫君は馬へと姿を変えた。
エイトは自嘲するように眉を顰め、読み終えた本を閉じることで探索を終了させた。

「ご苦労だな、調べものか」
「ククール」
いつの間に帰ってきたのかククールすっかりくつろぎの姿勢でベッドに腰をかけていた。
見られていたのか、と思うと少なからずの羞恥心を覚える―――――おかしなことはしてなかっただろうか、例えばひとりごととか。

「頑張るのはいいけどよ、あんまり根をつめると倒れるぜ」
いくらお前の王様たちのためでもよ、とククールは肩をすくめて笑った。
なんだ、心配してくれていたのかと思い、エイトはククールを真似して少しだけ肩をすくめて「いいや」と首を横に振った。
「僕は臣下として当然のことをしているんだ。それに王や姫のことを思えば、一刻も早く元の姿に―――――」
ひやり、と冷たい感覚が頬に感じた。
ククールの、素肌の両手がエイトの両頬を包んでいた。

「疲れてるんだろ、少し、熱い」

その冷たさが考え巡らせていたエイトにはちょうどいいくらいで、思わず目を細めて息をついた。
そうすると額と額が重なって、それからかさついた唇と唇が触れ合うのを感じた。

「なっ…、」
なにするんだ、と言いかけて開いた口の中にすかさずククールは右手の親指を忍ばせる。
エイトの言葉を遮る男は「キスして欲しいのかと思ったんだ」とエイトの喉元を舌先でなぞってった。

「ん、やっ…!!!」
やめろ、なにするんだ、と言いたいエイトの言葉はククールの忍び込まされた指によって阻まれる。
じゃれるように首にキスを繰り返す男を正気かと疑い始めたエイトは、言葉で阻めないなら行動でとばかりにぐいぐいとククールを押しのけようとした。
男はくすくす笑いながらもいまだ指をエイトの口から引き抜こうとしない。むしろちろちろと動かし舌を触る余裕があるくらいだ。
エイトはいい加減にしろという意味をこめて親指に歯を立てて牽制した。

「誘ってるのか?」
なにを的外れなことを言っているんだこの男は。
ギリ、と噛み締める歯に力を込めて睨みつけてやる。けれどククールは大きく笑って「ダメだよエイト、それじゃあ誘ってるんだ」と左手で髪を撫でた。
「はぁ!?」
Aの音の言葉によって大きく開けられた口から慌てて指は持ち主の下へと返っていった。
「なに言ってるんだ、お前」
腑に落ちないエイトを目の前にククールはニヤニヤ笑い、ほんの少しさっきまでエイトの口の中にあった指を口元へ持っていく。チラリと舌を覗かせ小さく舐める。
反射的にエイトの頬に血が集まってくるのを感じる。なんて、恥ずかしいやつ!これじゃあ、これじゃあまるで、

「僕は誘ってなんかない。お前が誘ってるんだろう!!?」
「うん、よくわかったな」

まるで子供によく出来ましたとでも言うみたくククールはエイトに笑いかけた。
しかしそれは束の間で、ククールはといえばイスに座ったままのエイトにキスを施し、服の隙間から胸をなで上げ、エイトの足と足との間に割って入れた自らの膝でエイト自身をやんわりとすりあげていく。
「ちょ、ククール!!!」
文句をあげている間にベルトは取り払われ、乱れた服の隙間からはククールの目を楽しませるばかりになっていく。
「んーっ!!」
深く口付けながら服の裾をたくしあげ、胸を揉んでやる。やめろと言いつつも尖らせているエイトに少なからずの衝動を覚えつつも丹念に舌を絡めることも忘れない。

「ほら、ばんざいってしろよ」
「ん、」

頬を染めたエイトはキスにくらくら酔っている。その余韻につけこんでククールは上着を脱がした。上に尖った胸の飾りに音を立てて吸い付く。
舌で転がすそのうちに、膝ですりあげていたエイトのペニスがだんだんと首をもたげていくのを感じる。
それだけじゃない、自分も、まさかこんなにはやく感じてきてるなんて、予想だにしなかった。

「可愛い」
「ん、やっ…あ、」

ふるふると頭を振るエイトをもっと感じさせようとククールはエイトのズボンのジッパーを素早く下げ、スルリと手を忍び込ませてエイトのペニスを手に取った。
ヒクリ、と強張ったエイトの身体に反してククールの握ったそれはいたって正直だった。
可愛い、とまたククールはそう思った。いつだって情事の時は相手を可愛いとかキレイだとか楽しんでエッチだね、と形容するククールだけれど、本当にもうエイトといえばいちいち反応からなにまで可愛くて可愛いと言う以外の形容を用いる余裕すらない。あえて言うなら、他に好きだ、なんて言ってもみるのだけれども。
とにかくそんな可愛い反応をするエイトに止まらぬにやにや笑いをしながらもククールは尖った乳首を口の中で転がし、ピンクのそれがあんまり吸いすぎて少し赤くなるくらいまでとにかく弄り、エイトのペニスからちろちろと精液が流れ出るまでそれを続けた。
度重なる嬌声と絶え間ない快楽にエイトはすすり泣くような声すらもあげはじめた。

「どうしたんだよ、痛い?」
両腕で隠すように覆われたエイトの顔を、覗き込めずとも覗くように顔を近づけククールは囁いた。
それでもゆっくりペニスを上下してなで上げる手は止めずにいて。

「や、だ」
「どうして?」
「不謹慎だ、こんな……王も来るかもしれない、部屋で、こんなときに」
「……王は酒場だ。ヤンガスは旧友の所へ、ゼシカは姫様と一緒にいた」

耳元で囁けば、エイトはほっと口元を緩ませた。それはククールのついたまったくの予想で、真実ではないというのに。

「ずっと溜まってたんだろ。王やヤンガスと一緒で、しまいにはゼシカもいた」
オレも同じだ、とククールは言う。
「ほら、触ってみろよ」
逡巡するエイトの手をむりやり自分の中心へと押しつけてククールはにやりと笑った。
「ここでするか?ベッドがいいか?」
「………ベッド」
エイトは小さく告げ、ククールの首に両腕をまわして運ばれていくのを待った。
ククールは慣れた手つきでエイトを持ちあげ、ベッドへ運ぶ。今よりも深い快楽を貪りあうために。

「着きましたよ、おひめさま」
そっとベッドにおろしながら深いキスをエイトへおくる。うっとりと口を開いたその様はまるで従順で少し怖いくらいだった。
舌と舌をあわせて息も止まるようなキスをし、お互いの唾液を行ったりきたりさせた。受け止めきれず溢れたそれがエイトの口から零れていく様はひどく淫猥で、そのままククールはエイトのズボンを剥ぎ取ってすべてを見せてもらうことに心躍らせた。

ふるりとエイトのそれが天を仰いで汁を滴らせていくのを見ながらククールは自らの上着を取り払っていった。
まだ少し成長しきっていないエイトの身体の中心は、それでも男としての機能を果たしてそこにある。
しかし快楽を求める人の本能か、エイトの腰は微かにゆらめき快楽を与えるククールの手を待っていた。
「ちょっと待ってろって、我慢できなかったら触ってていいけど、イくなよ」
脱ぎにくい騎士団の服だけれど、着たままに愛を重ねるなんてそんなことは嫌だった。というか嫌がられた。
それもそうだと思う。好きな奴とは、少しでも多く長く肌を合わせていたいものだと、思うから。

「ん、ふ……」
自分のものに手を伸ばしたエイトは、ゆるゆるとぎこちない手つきでペニスを上下してすりはじめた。
それにあわせて腰を動かしていくものだから、思わずククールはそのエロティックさに唾をごくりとのんでしまった。







 


エロでつづく。書いてたら長くなったので続きはまた。
舞台はパルミドです。


2004/12/17  ナミコ