愛してるぜこねこちゃん







「好きだ、愛してる、結婚したい」

…などといたって真面目くさった(真面目で腐った!)真剣な目でこの男は暇をみつけては四六時中、エイトの手を取り愛を囁きあわよくば(一方的な)愛の世界を演出しようとしていた。
エイトと言えばそれを白けた顔で見ていたり、あからさまな嘲笑で受け流したり、ひどいときは足蹴にして追い払ったり、ベキラゴンを唱えたり、イオナズンを唱えたりと方々色々様々な方法をもってしてそれを回避してきた。
けれどなにをしようが起ころうがこの男の行動がかわるはずもなく、ましてやそれをやめることも有り得なかったし、だんだんと耐性を持ちはじめたそれをエイトは結果として持て余すことになりつつあったので、今やもうさせるがままにせざるを得なくなっていた。

「あは、愛されてるなぁ、エイト」
ほがらかにゼシカは笑い、エイトをからかうまでにいたっている。だってなんだかんだいったってしょせんは人間。エイトに感謝してよーが仲間であろーが、まとわりつくククールというその人が自分に寄ってこなけりゃそれでいい。それでいいのだ。

ゼシカの言葉にうんうん頷いてまぁな、と相槌を打つのはククールだ。
エイトは「勘弁してくれ頼むから」と深刻に青ざめてそれでもされるがままククールに抱き締められてうなだれていた。
いっそ、いっそ思い切って喉元掻き切ってやろうかと真剣に考えたけれど、そんなことをしたらきっとカウンターで相討ちして共倒れだ。
そんな、心中みたいなことなんかエイトはまっぴらごめんだった。
だってエイトにはまだ守るべき王も姫もいるというのに。

「なぁちょっとお前、離せよ」
肩から胸にかけてまわる腕を軽く叩いてやれば、ククールはその手をさっとずらして腰まわりにはべらした。
オリャー離せと言ったんであってずらせなんか一言も言ってないんですけど。

「……オイ」
「なんだいこねこちゃん、感じちゃった?はやくふたりきりになりたいって?」
くそぅ、鼻持ちならねえこいつを今すぐ黙らせろ!
そんな思いのたけを込めてゼシカやヤンガスに視線を向けれども、ゼシカはいやぁよとばっちりなんて、と無視を決め込み、義理堅いヤンガスははじめはこそオレとククールを交互にみやって逡巡していたというのに次の瞬間には引きつったかのように笑い、すいませんと口の形を作って明後日の方向にむいた。

……どいつもこいつも…。

「なぁエイト、好きだぜ。つきあってくれよ」
「ノーサンキューだ!」
「なんでだい?優しくって強くってお買い得だぜ、なあ」
「いらねぇ、押し売るな、最悪だよ」
「えー、オレかなりナイスガイだぜ。エイトもメロメロだぜ、っていうか初めて会ったときお前オレに見惚れてただろ」
「(なんで知ってるんだ!!!!)いや、あれは銀髪が珍しかっただけだ、見惚れてなんかねぇよ、自惚れんな自信過剰!」
「自信に見合う実力はあるぜ。なあオレにしとけって、エイト。優しくするしお前しか愛さないし毎日好きって言うしキスするし大切にするぜ。こんなにエイトのこと愛してる男なんてこの先絶対いないぜ、な!」
「オレはミーティア姫が……んむーーーーッ!」














「え、なに付き合うことになったの?へー、エイトとククールがねぇ」
「兄貴お人好しでがすから押し切られちゃったんでげすよ」
押し切られた、というかあれならお人好しでなくとも押し切られてしまいそうな気がするのだけれど。そう思ったことを、ゼシカは言わない。
目は口ほどにものを言うけれど、それでも口に出さない限りはどうにかなる気がするでしょう?
視線を向けた先には、嬉しそうに笑っているあいつと、泣きそうになっているエイト。
火を見るより明らかなことを、それでもにこにこ暢気に笑うばかりのあいつの為にも否定してやろうかと思う。

「まあなんだかんだいったってエイトもあいつのこと嫌いなわけじゃないからいーんじゃないの?」
「そう…でがすか?」
「そうよ」

まぁ、結構お似合いなんじゃないの?と当事者たちを放っておいて、こちらでまとめておいて一見落着。
とな。

当事者本人たちのことは、これから彼らでどうにかしていくものなのだから。きっと。







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いろいろなクク主を書いたけれど、こんな…こんな……
ハイテンションになったナミコはなにをするかわかりません。パルプンテー!!

2004/12/22  ナミコ