マイファニードクター







それはある日のことだった。
メイドさんごっこもうさぎさんごっこも飽きてしまった色ボケカリスマさんの手にもたらされた素敵アイテム。
メイド、アニマルと男の夢の三種の神器のうちふたつを手に入れた男の野望はそこでとどまろうか、いや、とどまるはずがないのだ。
方々あらゆるツテとなけなしの金全部注ぎ込んで手に入れた、最後の秘宝。

お医者さんごっこセット。

緊張感のないネーミングセンスと睨むのはやめて頂こうか。いやいや、これほど素晴らしいものはないというもの。
白衣!ナース服!!聴診器、体温計、あやしいお薬三種!!!くっくっく。
お相手となるべく恋人はいまだ夢見るスリーピングビューティー、オレの永遠の恋人にして伴侶であるエイト。
ベッドの上無防備に肌を曝け出す彼の目元は赤い。
だって昨日さんざんしつこくイイコトしてたくさんなかせてしまったのだから。

ヤベー、やりすぎたかも。と思ってもそこは若さの為せる技。
一晩たってしまえば元通り、むしろ朝ゆえに元気、そしてオプションつきでもう止まらない。

いそいそ起こさないようこっそり素肌に服を着せてやる。
ん?なにってもちろんナースな服をだ。
わはは、これぞまさに白衣の天使!!
オレさまきっちり白衣を着込んで、エイトを上から見下ろしてやる。
うわ、我ながらナイスアングル。

「もーなにこれマジそそる。エロイ、セクシー、うぉー!!!」
「んーー……」
しまった、起こした…か?
慌てて口を押さえど、天使はみじろぎをし、虚ろに目をあける。焦点の定まらない目がふらふら泳ぎ、しばらくしてからククールに止まった。
興奮ゆえに思わず声をあげてしまった不覚。しかしそれを無駄にはしないのが真の男前というもの。
大丈夫、寝起きのエイトはしばらくは考えが定まらない子供のようになるから。

「エイト、おはよう」
いつもの朝の挨拶…恋人の、そしてキスを唇に。
うっとり目を閉じてそれを慎ましやかにエイトは受け取る。
「ん、…はよー。ククー」
とろんととけた口調で、それでも心なし声が掠れているのは昨夜の情交の証。
あー、あー、ちょっとドキドキしてきたぞ。

「な、エイト。オレとお医者さんごっこしよっか」
もう準備万端、あとはエイトの了解を取るのみ――――ん?寝起きに聞くなんて卑怯だって?
はっはっはー!!謀略と欲望に卑怯も何もないんたぜ。
「…いたくない?」
舌っ足らずの子供のようにエイトは聞き返す。それとはまったくアンバランスな格好をしてる(させた)のにな。
「痛くない痛くない。気持ちいーから」
ぎゅうっと抱きしめればぴったりとそれに抱きついて、エイトは小さく頷いた。
心なし「うん」と呟いた声が聞こえなくもなかったような気がする。

「じゃーエイト、口あけて?」
「あ…」
優しく促すような言葉にエイトは素直に従う。aの音のまま開けられた口の中をそっと覗き込めば、少し赤くなっている喉が見えた。
「ちょっと赤くなってるな…昨日はいっぱい泣いたもんなあ」
からかうように指の腹で喉を撫であげれば、ひくりと喉はのけぞり、薄っすら閉じられた切なげな目がククールに向けられた。
「舌、出してみ?」
喉と言わず首元からうなじまでをゆっくりさするように撫れば、エイトは恐る恐るながらもしっかりと舌を出してくれる。
「ん…」
それに舌を這わせながらククールは舌を誘い出す。エイトの舌が、自らククールの口内に差し込まれるように。

「ん、ふぅ…」
ゆっくり入り込む舌はククールの口内で絡まり、たどたどしくも蠢いた。
息もつけないようなキスをしてやるつもりだ。酸欠になって息もあがれば、完全に目が覚める瞬間を引き伸ばせるんじゃないかと馬鹿なことを思ったからだ。
けれどそれはあながち間違いではないはずだ、きっと。
酸欠に悩まされるようになっていくエイトはじりじり頭を後退させていく。オレはそれを追いかける。オレだって苦しい、けど追いかけることをやめたりしない。
時間がたつにつれて深く唇をあわすことは難しくなるけど、ついばむようなキスだけはまだ。
ころん、と後ろにエイトが倒れてった。
よし、これが最後の正念場!!なんてわけのわからないこと考えて、大きく深呼吸半分。
肺にこれでもかってくらい酸素を取り入れ、エイトの唇に――――着地。

「んー、んー、んむーっ!!!」
そんなに抵抗されてもね、逆効果ってもんですよ、エイト君。
いやだがしかし、駄菓子菓子…ってまあそんなギャグを言ってる場合ではないのだけども。つーかこの子本気で背中叩いてやがりますよ。アイタッ、ちょ、髪ひっぱんなって、ハゲちまう、ハゲちまう!!

ガリ、

「ギャー!!!!!」

ドゴッ

痛烈に走った痛みにのけぞり思わず口を離してしまった……その途端、タイミングよくワンツーパンチが顔に入った。
さすがエイト、拳ってところが容赦ない…ってか、オレのやってたのってつまり、逆効果だったわけか…ううっ。

「このバカリスマっ!!殺す気か!!」
「うう…お前となら死んでもいい…」
「ひとりで死ねっ!!つーかなんだよこの格好はっ!!」
麗しのエイト姫はククール王子の激しいキスでお目覚め、しかし自分の身に起きた破廉恥な事態に戸惑ってる模様。
王子は医者に早代わりし、検診をさせて貰いたいと希望します。

「オレのことはククール先生と呼びなさい」
起き上がってくるエイトを押さえつける力にも気合が入る。絶対に、ここはひけない、男の夢。うっしゃ、一句できたぜー!!
「このっ…!!またコスプレかよ、なにが男の夢だよ、ふざけんなバカーッ!!」
「ほら、先生って。…エイト、ほっぺたが赤いし、声が掠れてる。風邪かな?ちゃんと診てあげるよ」
「バッカ、お前!!それはお前が昨日っ…」
「先生って呼べって」

今日は妙に絶好調だ、と自分でもそう思う。
男の夢、三種の神器、そしてそのそでおろし、エイトとの…と、にやける顔をどうして止めることができようか。
触診とかやってみたいんだけどな、でも暴れるしな、とっとと骨抜きにしちゃおっかな。
短いスカートの裾から黄金の右手が侵入。エイトのあらぬところを撫で回したいと思います、なんちて。
「あっ、やっ、こら!!」
エイトの中心をとらえ、イイところをすりあげてやる。そうすれば暴れるエイトに反してそれは素直に反応していくもんだから、おもしろいよな。
男ってさ、結局快楽に弱いっつーの?ココはたしかに急所なんだってわかる。

「顔、もっと赤くなっちゃったね」
耳たぶを甘噛みしながら低く囁けば、エイトの身体は震えるように弛緩した。
抵抗の力が緩んだ――――となれば本領発揮なものである。
くちづけに気を逸らし、前を肌蹴させて平らな胸に手を忍ばせる。
「あ…、」
つん、と指先に突起があたれば、エイトの身体は揺れ震える。そんなおもしろいくらい敏感な反応に気をよくし、何度もそれを摘んだり押しつぶしたりした。
胸だけで達することのできる人間もいるというけれど、エイトはそれには程遠い。
そうすることで確かに刺激を与えることはできるけれど、直接的に送られてくるものとは違い、どこか焦れったそうに喘いでいる。
開発していけばそうなるのかな、なんてやるべきかやらないべきか悩むところであるけれど、とりあえず今日はそれを見送ることにする。

「ねぇ、ククール、もう…」
掠れた声は切なげに喉から零れ、懇願した。
「先生って言えってーのに、お前はいつもそうだもんなあ」
エイトに反してククールの喉から漏れるのは肩をすくめた苦笑い。
あてがったままじりじり腰を揺らし、ククールは唾を飲み込んだ。…覚悟を決めるために。
「エイト………………"先生のお注射頂戴v"って言ってみ?」

ゴツッ!!!

不届きな言葉を申した赤いのは、瞬時に飛んできた頭突きにあえなく沈黙を申し渡される。
力いっぱい思いいっぱい、痛みに萎えただろうか、いいや若い彼らにそんなこっとあってなきが如し。
ちょっと縮んだかもしんないけど、そんなことは構わない。脳天を突き抜ける痛みに涙を堪えつつ、それでもククールはエイトを離さない。だって覚悟を決めたからだ。
なにがなんでもその言葉を言わせてやるという。

「死ね!!もーホントお前死ね!!!誰が言うかバーカ!!!」
「うわーん、言え!!言ってくれ!!言ってくれるまでオレは絶対諦めない!!ずっとこのまんまだ!!焦らして焦らして言うまでずっとそうしてやるからなー!!!」
ハナっから心意気で少々負けつつも、意地でもエイトを押さえつける。押さえつけながらも愛撫を加えれば、怒り心頭のエイトの顔にまたとけるような赤らみが戻ってくる。

愛か欲望か意地かプライドか、これはふたりの壮絶な我慢くらべだ。

勝敗はどっちにしろ、すべてが終わったその瞬間、ククールはただではすまなくなるだろうし、男の夢で三種の神器でもあるそれらは全部燃やされてしまうのだろう。










------------------------------------------------------------------

2万ヒットありがとう記念リク第4弾。
空野つばささんへ
っかー、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなs…
カリスマさんが変態ですよね、ですよね、アイヤ…

2005/1/23 ナミコ