愛憎のマレーラ






 「羽根が生えんのな、お前」と、唐突に言われた言葉が理解が出来なくて、振り返れば君はすらりと長い腕をオレの背中に伸ばした。掌は肩甲骨の間をさまよい、するする背骨を辿る。
 くすぐったい、と思って身を捩っても追いかけてくる。興味、関心のあるものに対して追求して答えが出るまで執拗になるその一面は、ときおり出てくるククールの気まぐれみたいなものだ。

神鳥の魂って、オレにも使える?」
「さあ…」

 美しい金色の宝珠を手にして、青い目を凝らしてみてなにを考えてるんだか。金色に写し取られた青の目は鮮やかに緑色に映し出されている。それすら、キレイだ。キレイだと思うけど。

「なあ、この旅が終わったらこれくんない?」
「………はぁ?」

 にっこり笑顔をたたえた顔でなにを言うんだ、やれるわけないじゃないか、ていうかお前、

「何に使うつもりだ」

 絶対にやらない。てーかそれは道具だけど、いちおう魂なんだ。レティスの子供の魂なんだ。ほいほいっと簡単にはいどうぞってやれるかよ。ああ、相変わらずの笑顔に腹が立つ。

「ホラ、お前っていちおー竜の血も入ってるわけだし。もしも竜になったらオレはこれを使ってお前の隣を飛ぼうかなって」

 にこやかな顔。悪びれず、得意にもならず、ただ思いついたことをそのまま口にしたみたいに。ただ一緒にいるっていうことをどこまでも実現させようって思ってるみたいに。


「……絶対やらねぇ」

 絶対やるもんか。そんなの必要ないと、唇を噛み締める。きっと、この顔に出まくってる胸中を知らしめてやる。どこまでもにこやかな顔が、気に食わない。


 カッと頭に血が上ってる中でも、嬉しさを感じたなんて、
気に食わない。







九月八日計画自作お題"神鳥のたましい"

2005/9/8  ナミコ