恋するティーンエイジャー 2






 目の前に広がる料理たちに少しでも非があれば、テーブルひっくり返して亭主関白よろしく「こんなメシ食えるかー!!」ってできたんだけどなぁ……なんだこの、久しく口にしなかったまともな料理っていうかうまい、うますぎる。時間はかけてないみたいなのにどうしてこんなにうまいのか。

「先生、ビールは飲む?」
「……飲む」
「はいっ!!」

 黄色のエプロンの下は制服…なんて言ったらなんだかオレはヤバイ人になった気がするんだけどさ。ああ、でもこういうのってなかったよな、楽しく遊んできた今までの女の子たちはこういうのあんまり得意じゃなかったし、こーゆーの得意な子とはサッパリ付き合えないからなー。

 とりあえず夏休みの間だけ、と銘打ってから2週間。夏休みもちょうど、学生にとっては半分にきたとこか。なのに一向に諦めるでもなんでもない、かといって手を出せるわけじゃない、……って辛いんだよなぁ。

「はい先生、どうぞ」
「あー、サンキュ」

 そう、特に好きでもないビールを買い込んで、度数の少ないモン選んで、もしもまかり間違ったことがないように対策立ててさ、アルコールだって好きなもん好きなだけ飲みてぇっつの!!
 ああ、でも本当に料理はうまい。うますぎてこれだけで懐柔させられちまうっかもなー、なんてぼんやり考えて必死にいやいやそんなことないって頭を振る。

「…エイト、おまえ」「ククールゥ!!元気に空しくやってっかー!?」
 遠慮なく扉を開けた音に言葉は阻まれて、やってきた無法者の悪友に走らせた視線は多少の苛つきを含んで「連絡もなしにくんなっていつも言ってんだろーが!!」なんて言ったって何度目だ、どんなに言ったってその行いを正そうとしない馬鹿なダチ、それでも許しちまうオレって本当カンダイだよなあ。
 ずかずか遠慮なしにあがりこんでくる足音、エイトは戸惑いながらオレを見る。そんな目で、オレを見る。
 口を開いてなにか言おうったってもう遅い、そんな暇なんか与えてくんない。もういいさ、そのまま成り行きでどーにでもなれって肘をついて溜め息をついた。ダイニングキッチンに続く扉が開けば、馬鹿みたいにカラっとした笑顔でご機嫌そうだなあ、なにかいいことあったのかよ―――、彼女と。

「……………、れ?お前、妹いたっけ?
「いっ、妹なんかじゃないっ!!!」

 反射的に言葉を返したエイトに、ダチはご機嫌だった顔を真剣に顰めてオレとエイトを見た。ああ、そんなに見るんじゃねーよ、つーか余計なことを言ってくれんじゃねーよ……。

「え?中学生に手ぇ出しちゃったの!?」
「高校生だよバーカ」
 腕にまとわりつくエイトを引き離せず、立ちすくむダチに座れとも促せず、さーてどうしようかね。

 な ん て さ !! 悩んでたあのときのオレは空しく空しい風に吹かれて東京湾に沈んでく。図々しいのだけが取り得(そのくせ憎めない!!)のダチはすっかり順応して"彼女"のことを嬉しそうに話し出す。ちょっと前まで一緒に遊びまくった相棒としてはさ、なっさけないんじゃねーの(なんて言えねーけど)。


「ククールさぁ、高校生は範囲外とか言ってたけど結局どうこうなっちまったんだ」
 エイトが立った隙ににやにや笑ってこんのアホ、なにを言うかと思ったら。
「でもまあ、オレ達もほんの一昨年までコーコーセーだったわけだしな」
「…………そう、だよなぁ」
 ぽろっと目から鱗が落ちる瞬間、どんなに煙たがっても結局こいつとずっとダチでいる瞬間の再確認。図々しいけど、忘れかける本当のことを見つけ出すことができる。不思議な、やつ。

 妹みたいに大切に思ってても、結局離れていくなら、自分がずっと守ってやりたいって思えばいいってことだよな?








九月八日計画自作お題"兄妹?"

2005/9/8  ナミコ