喜びのペチュニア






「なんでククールもジゴスパーク使えんの?」
 それはそれは不服そうに、いかにも腑に落ちないと言うみたいに顰めた眉でぽつりと言った。それも朝食中に、行儀悪くもサラダの中のトマトをぐっさりフォークで突き刺しながら。
 …いや、なんか今ものすごい悪意っていうか敵意っていうか殺意に近いようなものをもらったような気がするんだけどよ、てゆーかそのフォークをバトルフォークと例えんなら、お前がぶっさしたそのトマトはオレだろ、みたいなさ。

「え?使えちゃまずいの!?役に立つだろ、なあ」
「雷はオレの専売特許なの!!!」

 うっあ、鋭い睨みと共に噛み砕かれた…。いってー、いってーよ、っていうか専売特許って……そんな、呪文やら魔法やらに専売特許もねーだろーが。なにを理不尽なことを言ってるんだ、エイトは…って、もしかしてははーん、オレを困らせてみたいってやつ?いやあ、エイトはかわいいなあ、本当にかわいい……

「お前がなにを考えてるかはだいたいわかるけど、」
「それを口にした時点でこのピーマンと同じ目にあわせてやるっ」
 ぐさぐさっと、言葉区切りと一緒に力の限りピーマンを刺して即席串刺しツインズって…お前ね。

「えーっと、調子に乗っていろいろ思ったオレもオレだけど、お前は唐突でなんだか理不尽なんだと思うんですけどー」
「もう、うるっさいなあ!食事中くらい黙って食べられないの!?」

 ……理不尽だ!!けど、それに素直にすみませんと言ってしまう自分も自分…だよな。なんだろ、どーしたんだろ。虫の居所でも悪いのか?スクランブルエッグにケチャップおとして、口に運ぶ。虫の居所が…悪いのか?いや、まさか…生理、とかあるわけないよなあ、オレの知る限りでは男だもんなあ。

「てゆーか、オレとしてはお揃いみたいで嬉しかったんだけど」
 ボソ、とつぶやいた声はどうやら聞こえたらしい。思い切りよく突き刺したトマト(またトマト!!)はそのまま突き刺されたまままだ動かない。怒ってる?

 ……ああ、照れ隠し?

「〜〜ッッ、だからお前の考えてることなんかだいたい分かるって言っただろ!!!」
「あ、いった!!!!」
 テーブルの下、ひそかに繰り広げられる大戦線、というか一方的な小競り合い?ぎゅう、と踏み潰された足にイタタタタタととにかく耐えるしか道はない。
 そうか、大当たりか。ならこの痛みも我慢っ……!!!できないかもしれねーけど、よ。

「エイトエイト、エイトくーん。今度バギ系魔法の心得とかも教えたげるから、足、足っ!!!」

 さあさあ早く、お願いだからどけてちょーだいって頼み込んで涙目になりながら笑って、もう、なんて厄介でいとおしい恋人なんだ!!って思うオレはまだまだお前にメロメロなわけだ。
 とりあえずメシ食ったらさ、ジゴスパークだけじゃなくって他にもお揃いの技を持ってみようじゃないか。








九月八日計画リクエストお題"ジゴスパーク"
どうもありがとうございました!!

2005/9/8  ナミコ