約束の輪を胸に






 ただいまと言う場所はただひとつと信じて、あそこを失くしてしまったらもう帰る場所なんてないと、縋るように思っていたのに。

簡単に、捨てられる。




帰る場所を失った、またなくしてしまった。
それがただひとり血を分けた腹違いの兄の居場所を奪ってしまった罰だというならば。
それがただひとり血を分けた腹違いの兄の居場所を奪ってしまった償いというのならば。

唇を噛み締めてすべてを飲み込んでやる。
苦しさも悲しさも痛みも愚かさも涙も祈りも願いもすべて飲み込んで、腹の奥底に封じてしまうから。
あんたはその場所で、しあわせになればいい。

だけどしあわせを手にしたのは自分で。
また居場所を貰ったのは自分で。
かけがえないものを手に入れたのも自分で。


この広がる世界のちっぽけなところに閉じこもっていた自分は愚かなカエルだった。
自分をとりまくそれがすべてだと信じていたことの、なんて浅はかなこと。
与えられた場所を失って、すべてなくしたと思っていても、そこからまた少しずつなにかを得ていくのだから。そして世界に与えられていくのだから。

「ククール」

名前を呼ぶ、まだ成長途中の少年は、こうしてあんたを思うオレを見抜いてはそっと近寄り手を取る。
大丈夫だから、なにも後ろめたい気持ちなど抱くことはないのだと、黒い目は物言いたげに揺れている。

そう、こうしてオレがしあわせを手に入れたように、あんたも。

しあわせになれると、確信めいた気持ちで世界に抱かれてオレ達はまた明日を迎える。











拍手再録…ではないと思う。微妙(覚えてない;
2006/1/15     ナミコ