捏造も甚だしいマルチェロとミーティアのお話です。
基本はエイト←ミーティアですけれども。



※※まー捏造要素も濃いのでどうかお心の広い方のみ御覧下さい※※




































For Leaves






 シロツメクサの花冠は、誓った愛の証。その頭に授かれば、必ずしあわせになれる・と。



 誰かが言った。その誰かなど、閉鎖されたお城の中では限られているからその誰かが誰かであったかなど思い出せないけれど、ああでも確かメイドであったなと、おぼろげに覚えている。近隣の村の娘達の噂話を、ぽつりと漏らした。

 私はそれをまっすぐ一番最初にエイトに教えて、それから「欲しいな」と呟いた。多分私はこの頃からエイトのことを好きだったんでしょうね。そしてエイトが私にとても優しいことも知っていた。私はエイトの優しさがとても"好き"で、"恋"をしていて。

 そうしてやっぱりエイトはその日のうちにシロツメクサの花冠を私に授けてくれたのだわ。



 あの日貰った花冠は、今も大切な宝物として小箱の中に。今も変わらずエイトは優しく、兵士にあがってからは強さも身につけた。私は今でもエイトのことを"好き"で、"恋"をしている。











 穏やかな春、白い花の咲き乱れる季節に王妃は崩御した。私はお母様のお顔を知らない。城の誰もが似ていると口にするお母様のお顔を拝見できるのは、玉座の間に飾られた肖像画だけであった。お母様は私をお産みになられて亡くなったのは周知の事実で、私の生まれ日はそのままお母様の命日となり、年を重ねるごとにその日は祈祷と晩餐とが続いた。私のお父様、つまり国王はとてもよくできた王で、そしてよくできた父であった。いつまでも王妃を愛し、そして王女を愛してくれた。

 今年もまた、マイエラから僧正様をお呼びになられて祈りを捧げてもらうのでしょう。お母様のいない悲しみを悼み、生きる私達の喜びをわかち、そして晩餐を。
 ふわり・と風が吹き、地に咲く花の花弁が空に散らされた。自然が喜んでいる。風が浮き足立ったようにざわざわと心を弾ませ、うたう花たちを掠めていくのだ。そういうことをおこさせる人は決して少なくはないのだ。エイトだわ、私の、好きな人。彼は不思議と世界に愛されていた。

「姫様」

 呼ばれた声に振り返れど、けれどそれはエイトではなく、遠くマイエラからの騎士の一人であった。風が、花が、この地が。喜ぶように騎士に取り巻き過ぎ去った。自然に祝福されている、この騎士は一体誰だと言うのか。珍しい。徳をつんだ僧正でも、自然に愛される方は法皇様くらいしか私は知らない。それとも私が知らないだけで、世界から愛されている人は思うより多いと。

「そろそろお戻り下さい」
「貴方はどなた?」

 私を迎えに来るはずの従者はどうかして?と・訪ねれば、騎士は「私がトロデ王様から仰せつかまりました」と言う。そう、エイトは来ないと言うことなのだろう。私は密やかにここで、あの幼い日のようにまた彼がシロツメクサの花冠を持ってきてくれないかと思っているのに。

「もうそんな時間なのですね」

 目をやればトロデーンはどこか騒然とし、いつもより多くの人の気配が感じられた。近隣に住む人たちもこぞってやってきているのでしょう。王妃であったお母様を私は知らないけれども、私が大きくなっていまだなお愛されているお母様を私は誇りに思う。さらさらと風が吹いて、騎士に手を差し伸べられていることを知った。見上げれば印象的な翠の目と、黒髪。引き結ばれたままの唇は堅く強固な意志をうかがわせていた。

「ミーティアと同じ、翠の目をしているのですね」
「……母の色をうつしとったのです」
「まあ、それも私と一緒」

 口元に手を寄せ私は小さく笑った。相変わらず風はさらさらと吹き、促していたけれど私はその手を取らなかった。私はエイトに手を差し伸べられて帰っていきたかったのだ。

「……姫様?」
「私にシロツメクサの花冠を下さらないかしら?」
「…………」

 騎士の顔が不思議そうにひそめられた。諭されるか、無理にでも連れて行かれるか、子供ではないのだから恐らく真摯な顔で諭されるのだろう。ああでもそれは見物だと、少しだけ見てみたいと。私は無体な我儘を言ったまま、騎士の出方を待っていた。
 戸惑い、うろたいがちに騎士は跪くと、足元に咲くシロツメクサを一輪手折り、私にそれを差し出した。

「貴女は既に冠をいだいておられる」

 王女の、この国の姫である証のそれに私はそっと、手を触れた。冷たい無機質な金属の感触だった、けれど長くいだいたそれはそれで愛着も覚えている。

「そうですね」

 私はそれを受け取り、それから騎士の手を取った。風が止む。ゆるりと歩くその先に黒馬、その向こうに城が見えて。

「そういえば、貴方の名前を聞いておりませんでした」
「―――私はマイエラ修道院長、オディロ様付の騎士団の団長を務めておりますマルチェロ・と申します」

 マルチェロ・と繰り返す。風がまた吹いた、この騎士の名前を覚えておこうと思う。なぜだかわからなかったけれど、とても印象的で。



 世界に愛される彼同様に、この騎士を知りたいと、思ったのだわ。












カラーバトンで、マルチェロのイメージは白。と思いまして。でもミーティアも白だな、と思った。
姫の白はきっといつまでも、なにをしても、どんな状況になったとしてもきっと"白"という色が汚されることはないんだろうなあと思いました。
決して汚れることのない白と、汚れても必ず元の色を取り戻す白と、私にとってマルチェロとミーティアはたぶん双璧なのかなーと。

たぶんふたりはあんまりに似ている(と私は思っている)ので、絡むことはあってもくっつくことはないなあと思うのでした。

ちなみにクローバーの花言葉は"私を思って"だそうですよ。書いた後に知ってびっくりした。

2006/2/8     ナミコ