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「とんだ荷物を押し付けられちまったなあ、あんたも」
でも、まあ仇取りだし、ひょんなことで自由になっちまったし、あのピエロ野郎倒したら即効でこのパーティは抜けさせてもらうからな・と告げた。この妙ちきりんなパーティの、恐らくリーダーであるエイト、は。複雑な顔をして少し首を傾げ、「よろしくね」と呟いた。
その言葉にも、まるで腫れ物を触るような扱いをするくせに、戦闘ではシビアになる奴らもみんな。癪に障った。
世界の何もかもが神経を逆撫でしてどうしようもなかった。
辛抱強く、我慢強く、よくもまあ耐えられるもんだな・と他人事のように困り果てような複雑な顔をするエイトを、そんな顔をさせているのは自分だとわかっていたのに思っていた。「いい加減にして」とゼシカに怒鳴られて、ふざけて交わして返したら、口も聞いてもらえなくなったっけ。ひでぇな、旅慣れないってのに。ぼんやりそう思った。ひどいことをしてるのは自分の方だと、わかっていたけど直せなかった子供っぽさに夜中に小さく苦笑した。
ハハ、目が冴えちまった。ぐるり・真夜中の教会を見渡す。明かりひとつとして灯っていない場所なのに、明るかった。ドアの向こうの聖堂からロウソクのあかりが漏れているんだ。知っている、教会はあかりを絶やさない、希望の光を闇にとられないように守っている。
ククールはそっと身を起こしてベッドから降りた。枕元に置いてあるレイピアを手にしたとき、コトンと小さく物音がなったが、疲れているのだろう、誰一人として目を覚まさなかった。そりゃそーだ、無理して突っ走るオレを、それでもみんなしてサポートしてくれる上に、久しぶりにありつけたちゃんとした寝床なんだから。
「お人好しでバカなやつら」
本当に、そう思う。押し付けられたものを、そのままバカ丁寧に受け取らなくたっていいってことを知っているんだろうか。いらないものなら、切り捨てればいいんだ。マルチェロのように。なのにそうしない。
(バカな奴ら…)
外の冷たく澄んだ空気に触れたかった。この聖堂は、教会は、この間までいた場所を思い出す。ぬるまったい水に浸かっているような場所だった、あの場所は居心地が悪くていつもドニへと逃げていた。けれどあそこから離れたいとは思わなかった。こんなところ、こんなところ、あいつなんて。そう、思いながらいつもそこにとどまって、出て行く勇気なんかなかった。
ひやり・と外気が頬を掠めた。冷たい。目が、冴えていく。見上げた空の闇には月と満天の星。いつだって見上げた空は変わらない、どこだって。
ぬるまったい水・だ。ここも。
お人好しでバカな人にいつも救われるんだな・とそう思って。夜空を見上げる怪物王様の姿を見つけた。
夜が明けたら、冗談っぽく「アスカンタはかわいー女の子がいねぇかな」っつって、そして笑って、始めてみようかな・と思う。
旅を。
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2006/6/14 ナミコ