ピロートーク







 それは終わった瞬間、落ちるように眠ってしまう彼だから一度もしたことはなかった。好きなように揺さぶって、イッて、乱れた呼吸吐き出して、横たわる。端整な顔にかいた汗、銀色の髪を張り付かせて聞こえてくるのは整った寝息・だ。だからぼくは彼の腕に抱きしめられながら思うんだ。きっと、この人にとって人は、肌を合わせる行為は、すべて。安眠剤のようなものなんだな・と。





 女の子の為に言葉はいつだって美しく飾り立ててあげてやった。甘く甘い言葉の応酬。慣れていた筈のものはどうしてだか喉の奥に引っかかって姿をあらわさなかった。少しパサついた髪の毛だとか、男にしては細身の身体の線だとか、眺めているうちに言葉は消えて、かわりに安穏とした穏やかさが流れてまぶたを重くさせるよ。その身体を、抱きしめさせて、眠らせてくれ。心地いい体温が、深い眠りに導いてくれるから・さ。


 こんな気持ち、知らない・と。ふたつの心は同じ言葉で違う気持ちを抱いてる。


 深く愛すれば愛するほど遠のく心・を。その悲しみを。追いかけて追い求めて、なりふり構わず諦めるものかと、そう、思うのならば。いつか・は。








2006/7/7     ナミコ