ぷつんと糸が切れたように目の光を固まっていくのを見てしまった。しまった、と思っても遅い。それはきっと無防備な姿をさらしていた自分が悪いんだろう。覆いかぶさるように押し倒された先は、都合よくもベッドの上だった。せめてもの救いは床じゃなくってよかったってことか。エイトは乱れたシーツを背に、乱されていく。なにもかもを吸い取るようなキスに眩暈が起きそうだった。

 少し早計に、そしてやや乱暴ぎみに服を脱がされ、冷たい掌が身体を張っていくのを感じながらエイトは息をついてしょうがないと思った。この目の前の男の、エイトの心と身体を一心に求めるククールの気持ちを知っていながら見てみぬふりをしてきた。その往来のツケが今こうしてふりかかってきたのだ。でも別に嫌じゃあないんだ。エイトは胸にククールを抱きながら思いを巡らせた。そう、嫌じゃない。だって同じようにエイトもククールのことが好きだった。けれど通じ合ってそれからどうしたらいいのかわからなかった。わからなかったから知らないふりをした。それだけだ。

 一度崩れ去ったそれに、エイトはもう取り繕うとはしなかった。もう、取り繕える筈もない。唇を貪り、身体中を愛撫され、恨み言に似た愛の言葉で嬲られる。エイトはそれにごめんと好きとを繰り返し、その間に絶え間ない嬌声を含ませた。明日からどうな顔をすればいいのだろうかとそんな考えが頭をよぎったけれど、まあいいか、と思う。さまざまな理由を言いわけに知らないふりをしてきたけれど、言い換えてみれば結局エイトもククールのことが好きなわけだし、さまざまな理由に定義づけられていた責任というものをじゃあ一緒に背負ってもらうか、などと思えば別段かまわないことだと思えた。いや、実際かまわないというか、そうすべきだったんだろう。後回し後回しとしてみてこなかったものは、案外すんなりと答えが出てくる。こんなことななら早くから応えていればよかったのかもしれない。