微かにはだけた服の隙間から手のひらが差し込まれた。決して冷たいとは言えないけれど、火照るような熱を持ったエイトの肌にはひんやりとした熱が心臓の上に伝わる。びくり、と身体が強張ったのは温度差に脅かされたからではない。差し込まれた手のひらの、意志をもって意図的に動く指先がエイト乳首を掠め、それから押し潰したからだ。咎めるようにエイトはククールを睨むけれど、ククールは意地悪く笑ってエイトの首筋に顔を埋めただけだった。チリと吸い付く痺れは微かに肌に残る。そして赤くなった皮膚に舌を這わせるのだろう。じりじりと追い詰めて、堪えきれなくなる瞬間突き放して、欲しい言葉を求める。
 そんなことしなくても、いくらだって言ってやるのに――――……。けれどククールにとって言葉は軽薄で、真実と真逆に位置する場所にあった。軽々しく口に出す言葉は信じられないさ、と笑った顔を忘れない。ククールは自身軽薄に振る舞うように言葉も同じように軽くとらえた。口八丁で騙し装ってきた過去が深く染み付いている、自分の言葉を信じていないどころか、他人の言葉すら同じように見てしまう。誰もが軽薄に虚言するわけではないのに。
「ちょっと、」
 疲れてるんだと言う言葉を遮り掌は素早く服を取り払っていく。嫌なら抵抗すればいいと、わかっていながら押し退けるための腕は出なかった。単純に、力だけならこっちに利があるというのに。笑った顔が近づいた、と思ったらキスをされた。小さく啄ばみ、深く絡め取られる。ぽつんと、胸に内在する気持ちを吸いだされていくような錯覚を覚えながら、心もとない心は思わずククールの首に腕を伸ばし絡めた。するとそれをスタートと見なしたのかククールは本腰を入れてもつれ込み始めた。情事に。そうなるともうタガが外れた獣のように、激しく、ギリギリのところで理性を保ちながらも本能的に求め出す。身体はもうすでにすべてを先回りして予見しわかっているというのに、心は頑なにそれらの予見を見て見ぬふりをした。
 ここで身を寄せれば―――わざと捩って嫌がってみせて。素直に艶声を出せば―――わざと口を噤んで漏れ出そうとする声を抑えて。





ったけれど、ククールはそんなことハナから信じていない。嫌だは良い、やめてはもっとして、そういう風に聞き知る耳はさらに都合よく天邪鬼に真逆のことを言ったらそのとおりの意味でとる。そうだ、ぼくはいくつかのククールに存在するルールを思い出さなくてはいけなかった。一、睦言はどんな言葉もすべて相手を求めるためのものに。二、心を曝け出す愛の言葉ほど信じようとしない。三、信じるのは言葉ではなくしぐさや表情と雰囲気だけ。さあこの三大原則を前提にククールに向き合わなくては。
 えー、あー、つまり、だ。……ククールはぼくからぼくのククールに対する思いを感じ取ろうとしている。なによりもダイレクトに触れ合うことで。だとしたらここで完全に