テスト





さわやかな風が吹く暖かい日曜の午後、フレッドウィーズリーは薬草学のための花壇のある、人気のない中庭で箒の手入れをしようと中庭と接続されている唯一の扉を開けた

高い壁に囲まれた四角い空間

かなりひろい中庭だから飛ぶ練習(主に新技のための密かなる影ながらの努力)にもってこいの場所だ、誰にも見られないからね

中庭を囲む壁(っていうか校舎だ)にはもちろん窓があったけど、色とりどりの観賞用の花は一本も植えられていない花壇しかないこのだだっ広い空間を眺める物好きは誰もいないから、いくらでも密かな練習ができる
彼はこの場所が好きだった



だから先客がいることにすこし怪訝な顔をしたが、彼女は薬草のスケッチ(そういえばそんな宿題があったなぁとフレッドはあたまのすみで思った)をしていて、邪魔しちゃ悪いだろうと思い声はかけないことにした
彼女はフレッドが来た事も気付かないくらい集中しているのか無視しているのか、かなり大きめの音を立てて扉を閉じても、彼女の前を横切っても何の反応も返さなかった


・・・・箒をいじる時は集中したいんだけどなぁ・・・、人がいると笑わせたくなっちゃうじゃないか


花壇とは少し距離をおいて青々とした芝生の上にあぐらをかくと抱えてきた箒と箒磨きセットを芝生の上に広げ、早速作業を開始した


どれくらいの時間がたっただろうか

その日はこの季節にしては暑い日ざしで、少し汗ばんできたころだったと思う

「・・・・熱心なのね」
声を掛けられて、下に向けていた視線を上げる 
彼女のスケッチブックはもう閉じられていて、薬草を追っていた目は今はフレッドの手元へと注がれている

「まあね」

少し照れて短い返事を返す、結構可愛い子だった
草ばっかりの花壇を挟んで2人は座っている
「会話をするには少し困難な距離ね」
彼女はそう言うと立ち上がりフレッドの近くに腰を下ろした

「ハロー、元気?」

「まあね」彼は下を向いて答えた
「あなたそれしか言えないの?」


「・・・・・・」


「もしかして私、あなたの邪魔だったりする?」
「まさか!」
顔を勢いよく上げて即座に答える、そんなことはあるわけないから(そしたらくすくすと笑われた。恥ずかしいなぁ)
「良かった。私は。よろしく。」
フレッドは差し出された右手をにぎりながら口を開いた
「僕は・・・・」
「知ってるわ、フレッドウィーズリーでしょ?」
はフレッドの言葉を途中でさえぎって、にっこりと笑いながら言った
「驚いたな・・・・ リーでも・・・ああ、僕の友達だよ。リーでも僕達のことは見間違うのに。」
「あなたたち双子は有名だわ」
離された右手を自分の体の脇にたらして楽しそうに答える
「でも、なんで僕がフレッドの方だってわかったの?」
大事そうに抱えていた箒と箒磨きセットの箒磨きクロスを芝生の上に投げ出してフレッドは”にこにこ”と”にやにや”と”くすくす”を全部あわせたみたいに笑う女の子を不思議そうに見ていた

「あなたの右胸のアルファベットはなんて書いてあると思う?」
「ああ、なんだ。そうか・・・・」
今僕の着ているセーターは去年のクリスマスに母さんが送ってきてくれた物だ。
相棒のジョージ、ロニー坊や、パース、ジニー、それに(あの有名な)ハリーとおそろいのやつだ(全員が並ぶと中々壮観である)
それぞれのセーターにはそれぞれの名前のイニシャルが刺繍してあった。

「なかなかすてきなセーターね、それ。」
彼女は例の”にこにこ”と”にやにや”と”くすくす”を全部あわせたみたいな笑いでほほえんだ
僕は彼女のそのほほえみを見ると“くらくら”と“どきどき”と“はらはら”を全部あわせたみたいな気持ちになる。
こんな笑い方をする女の子は初めてだ

そんな変な気持ちをおちつかせる為にさりげなく覗き込むことにしよう
「ありがとうお嬢さん。君の足も中々すてきだね」
は腰にタイトに張り付くミニスカートをはいていた。
うん、とてもきれいな足だ)
「ありがとうトム。嬉しいわ」
彼女はスカートの中身が見えないように座りなおしながら厳しい声で言った
「トムって誰だよ?」
僕の名前を忘れたのかい?世界一すてきなこの僕の名前を。
「ピーピングトムよ」僕の付け足した冗談にはくすりと
笑いながら答えた
「ああ、グリム童話か」
「ええ、あなたもそのうち石になるわよ」
ピーピングトムはグリム童話の中の話の登場人物で、町民のためにわざわざヌードになって馬に乗り町中を走りぬけた町長の奥さんの裸を盗み見た少年の名前で、彼はその奥さんの裸を見た瞬間石になった
(なんで町長の奥さんが町民のためにヌードで町を走り抜けたかって?そんなの自分で確かめろよ)
「顔ににあわずバジリスクみたいなお嬢さんだな」
「うるさいわね」
フレッドはぴたりと動きを止めた
「何よ」
「石になったからしゃべれないんだ」
「・・・・・しゃべってるじゃない」
うん、それにしても本当にいい足だ。
「じゃあ、聞かなかった事にしてくれ」

「いい箒ね」
彼女は話題を変えた
「まあね、ぼろいけどさ」手入れが大変さ
空を見上げながら言う「楽しいでしょうね」

「何が?」つられて僕も空を見上げた
「自由に空を飛べるって」
流れていくパンの形をした雲から目をはなしこっそりとを見る
「君も乗れるだろう?箒に。」
「苦手なのよ。ふらふらしちゃうの。」
彼女は顔をしかめる
「ふうん」

「ねえ」
「何?」

「私を箒の後ろに乗せて飛んでいってくれないかしら?」
空を見上げたままで彼女はぽつりと言った
とても魅力的なお誘いだ
「あーーーー、悪いけど・・・・」
僕には彼女がいるんだ「アンジェリーナに怒られちゃうよ」
とっても残念だけどね
「・・・知ってるわ、でも大丈夫よ」

「え?」
見上げていた顔を僕の顔に近づけて彼女は不敵に口の端を上げた。例のほほえみだ。
まったく、僕はくらくらしてどきどきしてはらはらするよ。
「ここから箒で飛んでって湖まで行くの。そこなら誰にも見られないわ」本当に、はらはらするよ、アンジェリーナって結構恐いんだ

「・・・・・そうかな?」
いぶかしげに彼女の顔を見る
「ええ、絶対にね」
でもすぐに顔から視線をそらした、だってどきどきする
「本当に?」
別に興味のない薬草の葉脈を僕はじっと見てた
「だってアンジェリーナはいま私の部屋にいるもの」
「なんだって?」
ちょっと驚いて僕は彼女の顔を見た
「アンジェリーナは私の部屋で私の友達とチェスをしてるの」
アンジェリーナがチェスだって?
「アンジェリーナはチェスをしないよ」
くすくす笑って彼女は言った「私の友達からチェスを教わってるの、見てきたから本当よ」
そして「たっぷり夕方までかかるでしょうね」と付け足した

「さあ、どうする?」

僕は立ち上がって腰に手を当て空を見上げた、赤い顔をなるべく彼女に見られたくなかった
「そうだね・・・・僕は空を飛べない君を箒に乗せてあげるだけだ。そうだろ?」
「ええ、そうね」
「僕が君を箒に乗せるのはただの親切心だ」もちろん、“たぶん”だけどね「そうだろ?」
「そうね」
彼女はポケットから飴を取り出して飴の袋を破いた

「だから、べつにアンジェリーナも何も思わないはずだ」
ニヤリと笑って僕は言った

破いて取り出した飴を何かを思い起こさせるような感じで口に含みながら彼女は「ええ、きっとそうね」と言った。目が笑ってる。

「まってて、この箒のゴミを取ったらすぐだから」
そう言って僕は芝生に再度腰を下ろし、彼女に話しかけられる前にしていた作業に戻る

「ねえ」
いつの間にか僕の正面にまわっていた彼女の顔がすぐ近くにあった、すごくどきどきする

「このキャンディー、チェリーシェリーキャンディーなの」
例のほほえみを湛えて僕の目を見てそう言った

「へえ、そう」僕は勤めて平静を装う
作業をする手がぶるぶるしてたけどね
「おいしいのよ、あなたも食べたい?」口の端から舌を使って飴をのぞかせる
甘いチェリーの香りがした
「うん、もらいたいな」
おいしそうな匂いがするのは確かだ
「残念ね、これ一つしかなかったの」
そう言い、彼女は身を引いた。それでも目は僕の目を見つづけたままで、口元も相変わらず笑ったままだ
「君は何がしたいんだい?」
少しいらいらしながら僕は言った
「飴は私の口の中にあるこれ一つしかないの。どうしたらいいと思う?」
首を少しかしげて笑う。彼女は何かを期待していて、そしてこの状況を楽しんでいるように見える
さあ、僕もその期待にこたえなきゃね
「お嬢さん、もしかして君は僕を誘ってるのかい?」
つまり、キスだ
にやりと僕も笑ってに詰め寄った

「さあ、どうでしょうね?」
逃げる様子は見えないから、これはOKってことだ
「・・・・僕の事石にしない?」
彼女はくすりと笑った
「もちろん」
くすくすと笑いあって2人の顔の距離をだんだんと縮めていく
まず額がくっついて次は鼻が触れ合ったそして次はもちろんくちびるなんだけど
あと少しのところでのくちびるが動いた
口の端を上げにやっと笑う。そして彼女の柔らかそうな赤いくちびるからはこんな言葉が発せられた(よく見るとグロスでつややかに光っていた)

「さ、もうおしまいね」

そういってはさっと立ち上がると窓へ向かって手を振った
僕はキスする気満々だったのにそれがからぶってかなりがくっときた。
自分で言うのもなんだけどかなり間抜けだ

「・・・・・え?」
間抜けな顔で間抜けな言葉を発する僕
「ほわ、3階の、右から二番目の窓よ」
くすくすと笑って彼女は指を指す。その先に見えたのは仁王立ちする世にも恐ろしいアンジェリーナの顔だった

「え、ちょっと・・・・なんで?!」
僕は絶叫していた
「アンジェリーナ!!」そんな僕をよそには笑いながら
僕の彼女へと手を振った
「カエルチョコのカードのこと、忘れないでよね!!」
アンジェリーナは同意の意味をこめてに手を振りかえした
「わかってるわ、あなたの勝ちよ!!」

そうか、僕はカエルチョコのカードごときで賭けのネタにされたんだ。
そして僕のほうを向いてこう叫んだ「さあ、フレッド、そこで待ってなさい!!」
アンジェリーナはくるりと後ろを向いて窓から姿を消した。きっとここまで来る気だ。

ああ、こういう時のアンジェリーナは恐いんだ・・・・・


僕がこれからの恐怖に打ちひしがれていると、となりのが小さく溜め息をつき、
「・・・・面倒ね、恋人同士って」とぽつりと言った

「御愁傷様、今度慰めてあげようか?」
そういってにこにこのような、にやにやのような、くすくすのような笑みで笑う

そして僕はまたくらくらしてどきどきしてはらはらするんだ

「いや、やめておくよ」
僕は言った
「でも、周りを窓で囲まれていない中庭でなら考えてもいい」
男って言うのはこんなもんだ

「わかった」彼女はくすくすと笑った

「それとこれはおわびの気持ちよ」

そういっては僕の額にキスを一つ落してキャットウォークで去っていった
「本当に、恋人同士って面倒ね」
最期に例の笑みと意味深な言葉を残して


「さあ、アンジェリーナへの言い訳を考えなくちゃ」と僕は白い雲と青い空を見ながら思った



・・・・湖まで箒に乗せて飛んでいったら許してくれるかなぁ





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・・・・あれ? 私はルシウスドリを書いているはずだったん
ですけど・・・・・・
謎だわ:トラ


2003/2/12