真夏の夜の夢







息を吸い、吐き出すためだけに呼吸をしたら、深呼吸になってしまった。
いや、ため息みたくなってしまったかもしれない。

まぶたが微かに重い。
傾げた首が、頭ごと重たそうにこてんと傾いた。
世界は・・・まだ回ってはいない。

グラスになみなみと注がれた炭酸とサマーフルーツの果汁とウォッカの混濁した飲み物。
チューハイっていうんだったっけ。
たいした度数じゃないし、ほんの100ミリリットルを2杯半。
顔色も変わってないし、特に異常もない。
うーん・・・身体はなんだか熱いかもしれない。
ああ、ホラ、こんな風に考えて解析とかできちゃってるわけだから平気よ、酔ってなんかない。

酔ってなんか・・・



ゴトリ、と鈍い音がした。
例えるなら硬いゴブレットを絨毯の上に落としたような・・・・・・うーん、そのまんまなんて芸がない?
まぁホラ、とにかくゴブレットを絨毯の上に落っことしちゃったわけ。
ああ、ゴブレットの中身はじわりと絨毯に染み込んでいく。
吸いがいい絨毯って高級なんだっけ?思わずまったく関係ない知識がふいに頭をよぎった。
あー、アルコールのにおい、染みちゃう、早く片付けなきゃ、見つかっちゃう。

手を伸ばす、届かない、うーん、うまく神経が繋がってない?
そんな錯覚に陥った一瞬。ううん、酔っ払ってるだけだって。

そう、酔っ払っているだけ・・・・・・・・・・・・



 ガチャン



遠くで響いた音。
今度は床に、落ちる音。

私は絨毯に倒れこむ。



 バタン



ウォッカの水溜りに手を伸ばす。

描かれた波紋に、私は意識を夢へと手離してゆく。
























「まったく・・・好き勝手したなぁ」

あるまじき部屋の惨状に、ハリーは苦笑した。
ベッドから引き離されたシーツ、ネビルのベッドの下へ行方不明になっている枕。
それらはともかくとしても、部屋中に染み付いたアルコールの匂い、絨毯の染み、床に割れたウォッカのビン。
他の誰かに見られたら、一体どうすればいい?

これだけならまだしも、酔いしれて眠りこける君。


「ねぇ、君はもう僕のことを好きになったのかな?」


それとも、警戒心を抱くまでもない相手と思われてるのかい?



紅い頬にキスをする。
眠り姫は目を醒まさない・・・愛が足りないというの?
君の恋はとけないというの?



君の頬へまじないをかけよう。
君が目を醒ますまで、君の恋が醒めるよう。
君の心が、僕のことを映すまで。


「早く僕のこと好きになっちゃいなよ、
頬へ口づける唇に想いを乗せて、やわらかく微笑む。
「そうしたら君のことたくさん愛してあげるよ」

はくちづけに身をよじり、小さな寝返りを打った。
その隣にはハリーが腰をかけ、いとおしむようにを見つめて。
「シェイクスピアみたく、浮気草の雫があったらよかったのかな」
あっても決して使うこともないだろうけどと、ハリーは小さなあくびをひとつした。




今は眠ろう。
厭わしい夜の闇が去った頃、夢から醒めたデメトリアスとヘレナは、本当の運命の相手と恋に落ちるのだから、きっと。













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…そして部屋の惨状にロンが目玉をひん剥くんだな。
フォルダに紛れてたの見つけて15行くらい書き足した。
真夏の夜の夢はすごく好きです。
映画は見たけど原書は読んでない・・・ガラスの仮面とかでも面白く書き換えられてますよ。

2004/9/20       アラナミ