ファジー・ファンタジー
西日の差し込む暑苦しい女子寮内の私の部屋にいきなり彼が訪ねてきた
「やあ」
トム・マールヴォロ・リドル
「何の用? しかもココ女子寮のはずだけど?」
「なんとなく」
薄笑いを浮かべる彼、いつも何を考えているんだか解らない
「何ソレ」
意味は違えど重なる二人の言葉、 私の言葉は彼の訪問理由へ
彼の言葉は・・・・
「何? ソコの」
私のファンタジーへ
「勝手に入ってこないでよ」
一応言っては見るけど 聞かないのは解ってるからそれは通過儀礼
「うわ、君ってこんな趣味あったっけ」
金属の洗面器に入った
蝉の羽を付けられ蛍光の緑のインクで塗られ、紐でつるされた庭小人妖精
羽をもがれたピクシーの胸から下をくわえこんだ魚 蝉の残骸 ピクシーの足 羽
その他の残骸
腐敗臭の漂い始めそうなその物体を彼は手にとろうとする
「素手で触ると手が汚れるよ」
「なんでこんなことしたの?」
精神不安定だとか虐待されただとか聞く気なの? アナタも?
「ファンタジー。」
「ファンタジー?」
そう、おとぎ話。
「それは、ティンカーベル。 人魚姫。あとは・・・・・忘れた。」
「ティンカーベルは浮かぶものだろ」
「浮遊の魔法って苦手なの」
苦笑い
「でも、わざわざ自分で作る必要はないんじゃないかな。物語の妖精の元はこっちの世界の妖精だろ?」
「まあ、ね」
「で、これどうするの? このままじゃ腐っちゃうよ」
そろそろ臭ってきただろうソレ(夏だからだろう)に彼は顔をしかめる
「ファンタジーな処理法が見つからなくてね」
「ふうん」
「ファンタジーな物は最後まで、何か良い案ない?」
クスリと笑って彼は口を開く
「謎掛けを出そうか」
「何?」
怪訝な表情を返してあげましょう
「いつでも水位が同じでペダルの操作一つで何時でも誰でも水渦が作り出せるもの」
「何ソレ」
「そして 汚いものはパイプを通ってどこか遠くへ」
「だから何なのよ」
「トイレ。人魚姫が流されてくなんてシュールだろ?」
「シュールじゃなくていいの」
「じゃあ、おいでよ」
金属の洗面器を彼は手に取り、私の手をもう片方で掴む
そのまま窓の外へダイブ
「な、何するの!?」
「浮遊の魔法は得意なんだ」
ああ、ソレは嫌味ですか。ふわりと浮かぶ私たち どうせ私には出来ませんよ
「ねえ、どこまで行くの?」
地面に着地後 何も言わずに手を引いて歩いていく彼
洗面器の中の青い液体が波打って雫がこぼれる
点々と残っていく青いシミ
「ほら。」
ついた先は湖 沈む太陽に照らされて黄色く輝く水面
「ここに、沈めようって言うの?」
「そうさ、ロマンチックだろ?」
「まあ、ファンタジーね。」
そう言うと私は彼の手から洗面器を受け取り
湖に中身を流す 洗面器ごと
思いついたように私は頭一つ分背の高い彼に背伸びしてキスをする
「なんでこんなことしたの?って聞かないの?」
私の肩を抱いて彼は言う
「なんでこんなことしたの?」
微笑みながら私もこたえる
「なんとなく」
二人で笑いあう
「ねえ、」
「何?」
いつもよりも真剣そうな彼の顔
「僕の名前 ずっと覚えててね」
「トム?」
「トム、マールヴォロ、リドル」
一言 一言確かめるように発音する
「解った 覚えとく」
「ずっとだよ」
沈み損ねたピクシーが水面に漂っていた
酸素を求めるように口を開け閉めしているピクシー
私達は小石を上においてピクシーを沈める
このロマンチックな金色の水面に醜いピクシーは似合わなかったから
そしてまたトムマールヴォロリドルとキスをする 確かめるように
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あー あー
マイクテスト中。あ、壊れてるようです。これじゃ喋れません。困ったな。
トラ
2002/8/29