セレブリティスレイブ








完全に夕陽が沈みきり、見えるのはただネオンの灯りのみ、月さえも光の反射率の悪さにみえづらい、クレーターがなければ、鮫の皮で磨けばもっと金色に輝けるのにね、冗談ともつかない口調で彼女は言った。

そんなラスベガスでは当たり前な夕暮れ、藍色の空、極彩色をとおりこした蛍光の光あふれるストリップ大通り、両手でやっと抱えられるほどのバラの花束で、ロックハートは両頬をひっぱたかれていた。
真っ赤なバラの瑞々しい花びらは、そこらじゅうへ舞い散り雪のようだ。ベルベットの真紅の雪、なんて美しいのだろう!
真っ赤な吹雪の破片は、彼の完璧なパール肌と美しく波をうっている煌くブロンドの髪に赤く張り付いていた。
はバラの半分の花弁が散ってしまった花束を、いまだロックハートの頬や肩や首へ何度も打ち付けている。
ロックハートは目を閉じずにの目を見ている。彼女も彼のスミレ色の虹彩から目を離さずに見据えている。

まるで時間が止まっているようだ、しかし二人のあいだに時間などという概念はない。
そこに彼が存在し、彼女も同時に存在しているだけだ。それは刹那とも永遠とも言えない、芸術家同士の人生の交差だ。
だから二人には時が止まるとか動き出すとかいう奇跡も起こらないのだ。それは奇跡ではない。
ただの日常に過ぎない。きっと海が割れても彼らは奇跡だなんて感心したりはしない。
逆にモーゼに薔薇色のローブを着せて司祭に任命し、海の底に花びらのバージンロードを作り上げ、ダイアナ、チャールズの挙式を上げるだろう。そんな二人だ。
美しさのみを奇跡と呼ぶ。

何度も何度も花束を振り上げられる赤い花束がロックハートの胸をたたく。
は過剰で狂喜ともとれる笑い声を立てる。
もう目を開けていられない。は目を閉じる。ロックハートはその瞬間、の腕をつかみ引き寄せる。
そして目を開けた瞬間にはロックハートの顔がぶつかりそうな距離に迫っていて、唇を奪われる。
彼女は抵抗するが、いつのまにか押さえられていた手も背中も1インチも動かす事はできない。
ロックハートはの腕をほどき、にっこりとわらう。
彼女はもう動かない。今夜の敗者は・・・・・ギルデロイロックハート。

「決めたわよね?」
これじゃ罰にならないじゃない、は非難を向けるような目でロックハートにささやく。
「この耽美的で美しい状況でじっとしているのはどこの愚鈍なうすのろだい?」
「禁欲、欲望、切望、ぎりぎりまで焦らされた目を私は見たいの」
「ああ、神よ、この私と、私の犯した罪をゆるしたまえ」
ロックハートはおおげさに胸で十字を切る。
しかし彼が許しを請うのはイエスキリストにではない、芸術の、女神様に。
「あなたの神は私じゃない」
「ああ、君に許しを請うたんだよ、許してくれるかい?私の女神、ミューズ、愛よ、私のすべて」
は笑った。そして彼の額に軽くくちびるを付ける。そして「洗礼よ」と彼女はさらにほほえんだ。

「君の神聖なくちびるをも、私は汚してしまうだろう」
赤い紅を塗られたのくちびるをロックハートは指でなでる。
今日のテーマは聖書と哲学書を暖炉にくべてマリファナを焚く、処女の娼婦だ。
ムーランルージュ!YOU can CAN CAN!!ダイアモンドに愛を託そう!!!
口角からやわらかな厚みのある中心、白い歯と赤い舌を除き見ることができる。
指で拭われてよれた口紅がはみだし、より煽情的なくちびるをつくりだす。

はその指を舐める。蛇のように舌をなめらかに動かし、ロックハートを見あげる。
「君は困った人だね」
ロックハートは苦笑して彼女の頬、口角の周りを舐める。
の舌はロックハートの指を舐めている。ロックハートの舌はのくちびるを湿らせている。
なんて不毛で非生産的な愛だろう。

バラの花束に興味をうしなった二人は、さらに内面へと意識を移行させていく。
ロックハートの舌はついにのくちびるを割って入り、の舌もそれを押し返すことなくやさしくなでている。
赤い花びらの敷き詰められたベットでのキス。最高にゴージャスなロマンティックだ。


バラの花束、花屋の労働により刺を折られたバラ。一晩で崩されてしまう花、はなびらに守られた生殖器、もう二度と種を残す事はない。
我々は毎日、まるで呼吸をするように生命の無駄づかいをしている。
かわいらしい小動物を血で汚さないように、大事な商品を傷つけないように注意して、ゴムかプラスチックの手袋をはめた手で首の骨を折る。
そして次のセクション、毛皮をはぐ、正確に。そして細長い肉の塊はまとめて償却処分。
エコロジストか強欲な工場長だったらペットフードの材料として売るかも。
君、なにかペットは飼っている?こんど原材料をよく見てごらん。

とにかく、我々は母牛の子宮の中の胎児の皮さえ搾取してしまう。
毛皮最高!象牙万歳!なめらかなカルシウムの密輸入の組織とは仲良しだ。
つぎのランウェイにもきっと彼らの戦利品を飾ろう。
彼らは現代の戦士、レンジャー、法律のアウトサイダー、アナーキスト!まさにロンドン、パンクの精神だ。
ワシントン条約信者達には骨董品店で見つけたって言えばいいさ。
彼らも家に帰れば祖母の形見の振りをした、新品の大きな象牙のピアスとクロコダイルのバックがごろごろ転がってるんだから。
グリーンピースとその他の動物愛護団体に毛皮の中指を立てようキャンペーン。
君もきっと参加するよね?イギリスの駅に明日、毛皮のコートを着て集合だよ。

さあ、息を吸ってみよう、そしてゆっくり吐いて。その間にもフェレットとウサギは皮をはがれてる。
清潔で静かな工場の中で。おっと、いまはランチタイムだったかな?じゃあ、30分後をおたのしみに。
ステイ チューン!CMのあともチャンネルと意識はこのままでおまちください。
コカコーラ社はサブリミナルを使用しているのでテレビスポットコマーシャルはございません。ご了承ください。
(ちなみにコカコーラには現在もうコカは入っていない。かわりにカフェインを入れている。だから私達は自分でコークを足すのさ)
コーク入りのコカコーラで我慢できない夜には、ドクドクと波打つコカコーラカラーの動脈に針を刺す。
ペプシコーラ色の静脈にも針を刺す。

我々は無駄づかいいの上で商売している。自分以外の生命の上にあぐらをかいて生活している。
君の今日のディナーは何の動物が死んだ肉?
それとも今朝いきなり巨大な刃物で体を切断されてしまった農薬と化学肥料まみれの葉っぱ?
おいしかった?
毛皮だって食べものと同じことさ。
人間様の、崇高な嗜好品。

毛皮は身体を動かすエネルギーにはなりはしないけど、心を浮き足立たせるサプリメントにはなる。
けして防寒用ではないよ、セレブリティな私達は冬のマーケットを確立するためのプロモーションで毛皮を着る。
「春、夏、服を買わなきゃ生きていけない、遅れちゃう、おいていかれちゃう」って感じに
消費者の購買欲(私たちはそれを“強迫観念”って呼ぶけどね)にうったえるために、冬に下着のような分量の布キレを身にまとう.。
風邪もひかないし、熱で身体を悪くもしない。私達の行動範囲はエアーコントローラーで制御されてるからね。

まあ、その健気な動物達の命をかけた犠牲的精神も1シーズンだけの有効期限だけどね。
あ、クローゼットにほおりこんだままだった去年のジャケットが虫に食われちゃった。捨てよう。
うすっぺらな牛革のライダースなんてもう着れないよね。合皮で作るべきだったかな。
でも私は本物志向なんだ。ヘイ、ガール。ハーレーに乗ってくかい?

もちろん、かわいい、かわいい、毛皮“生産”動物達はそんなこと微塵ものぞんでいないってことは知ってるさ。
どんな生物も生きていてこその“セイブツ”さ。死にたくないって叫んでたのかもね、君のブーツの3年前まで“生きてた”牛も。
君のお父さんの手袋になった、15年前に“生まれて”5年前に“死んだ”ヤギも。

でも、毛皮ってやっぱり魅力的じゃない?

そして花の命は毛皮よりも短い。一晩ですべて散らしてしまう。
2年かけて美しく開花させたバラを2秒で一枚花びらをちぎり、2分で振り回してほとんどの花弁を散らせる。
そして2時間後には跡形もないのさ、まあ、2時間も私達はバラを見てはいないけどね。20分で飽きるよ。

そして懲りずに次の日にはまた新しいバラの花束を部屋まで届けさせる。


ふと、ベットとマットレスの間を見ると、ひからびたバラの花びらが、我々の莫大な宿泊費とチップから捻出されている給与によって生活しているメイドによる完璧なはずのルームクリーニングで排除、撤去、つまり“掃除”されずに残っていた。
今日のまだ瑞々しさを保ちながら部屋中に飛び散っているバラの花びらの色は赤、
そしてマットレスの下からたった今発見された干からびている花びらは白い色。
これはいったいどういうことだい?

そうだ、バトラーに今日、部屋を掃除したメイドを部屋まで呼び出し、あらたに敷き詰めたバラの花びらを腕を後ろ手に拘束し、口だけで集めさせよう。いい刺激になるだろう!
私達は二人で笑って、フロントにコールした。

大急ぎで走ってあやまりにきた責任者を笑って許し、メイドの女の子を部屋に残して彼には帰ってもらった。

自宅から急いでタクシーでホテルに戻ってきたというメイドはジーンズにTシャツという、アルバイトをしながらカレッジに通うティーンエイジャーそのものだった。
ムードも美しさも何もあったものじゃないね・・・・・どうしようか。


フレンチメイド風のサテンの黒いミニスカートを足の付け根までまくりあがらせて、彼女は床に膝をつき、胸を床に擦りつける。
屈辱とも歓喜とも言えない涙で瞳を濡らすメイドを眺めながら、ワインを、もちろんボルドーさ!ワインを舐めた。
(もし屈辱を感じていたのだったら、なんて無礼なんだろうね、彼女は私達が自分に罰を与えてくれるというだけで喜ぶべき事なのに)
四つんばいよりももっと床に近い体制で這いつくばりながら花びらを集める彼女の衣服はだんだんと乱れていく。
彼女の体制は、イヌというよりカエルに近かった。

けらけらと笑いながらは汗で後れ毛を肌に張り付かせている彼女を見ていた。
なんて冷酷で魅力的な女神だろう、ロックハートは後ろからを抱きしめる。
そして部屋の高級なベルベットのベットカバーの上に散らばっている花びらを一枚拾い、シフォンジョーゼットのナイトガウンの中から覗く、コルセットに押し上げられた丸いデコルテの谷間に置いた。
「ほら、ここにもあるよ」
とロックハートは床を這いつくばっているメイドに指示を出す。
「私の体に触れないで、取りなさい」
くすくすと笑っては言った。
若くて華奢なメイドは二人を見上げ、潤んだ目でまばたいた。








彼女はいったいどうすると思う?
きっと最高に楽しい夜になりそうだ。













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背徳的ピュアラブ耽美エロふたたび

ちなみに私は毛皮大好き!

動物実験の化粧品も薬もやむをえない!

肉大好き!野菜も大好き!

でも、ゴールドとダイアモンドのほうがもっっと好きです。

象もキリンも嫌い。


(でも象はけっこう好き。孔雀とライオンの次に好き。あの大きさとサーカスと戦争と毒殺を連想させるところが)



C VanillaRadio
トラ
2004/6/19