コケティッシュキャットシリーズ
キャッチ アンド リリース
「もう 我慢ならんな」
イライラしながら先生は目の前の床にしゃがみこんだ
「何がですか?」私はソファに座ったまま、床に散らばった粘ついた黄土色の半固体のひっついているガラスの破片を(素手で!)拾いあげた
「この状況で 何がと聞くのかね。・・・・ガラスには触るな」
ガラスの破片を私の手から取り上げてゴミ箱に放りながら先生は言った
「あ、私のフトモモにくらっとキたとか?」
「君は馬鹿か」
あら、嫌だ。 冗談ですのよ いつもの。
せこせこと散らばったガラスを拾い集める諸悪の根源、悪の枢軸は「御主人様達はいつも同じ会話をしているのですね」とそうのたまった
「あんたが原因でしょうが」
まったく、いつも同じ失敗を繰り返してるのはあなたですのよ、ドビー
「う、ドビーは・・・・ドビーは・・・・」
でかいキモいめだまに涙をうかべてドビーはぐずぐずと泣きだした「・・・泣くんじゃないわよ」
私のほうが悪い子としたような気になるからやめてほしい、いや、本当に
いつもと変わらない放課後 いつもと変わらない行動
先生の部屋の床には本やら試験管やら薬品やら
よくも毎回同じような事ができるもんだ
「大体、片付いたようだな。」
こぎれいに片付いた部屋(それでもカビ臭いしホコリっぽい)を見渡してスネイプは首を横にまげ、骨を鳴らした
手のひらのホコリを払い、ふぅ、と軽く息をつきソファーに深く座りなおす「そうですね。でも先生、何で魔法使わなかったんです?」
「この前、そこのの役立たずに折られてしまってな」
目だけで目的をさし、睨んだ
「そんなことまでしてたの?ドビー。」あきれて私は足もとのドビーを見下ろす
「あ、あれは事故だったのでございます!」さらにこぼれ落ちそうな量の水分を角膜にまとわりつかせてドビーは訴える
最近、泣き落としというスキルをマスターしたようだ
「ほう? あれが事故だというのかね?」
ただし、この陰湿で陰険でかなり嫌なやつなスネイプにそのスキルは通用しないようだ
可愛い生物に潤んだ瞳と虹彩で泣き落されたら、私みたいな心の優しい慈悲にあふれた人にはひとたまりもないのだけれども
・・・・可愛い生物だったら、可愛いかったらの場合だけど
蛇に睨まれたカエルとはこの事だろう
「先生、ドビーが恐がってるじゃないですか」
先生はドビーを一瞥してソファに腰掛けた 私の隣に落ち着く、いつもの場所である
「ドビーの元の御主人様も大変だったんでしょうね」
すっかり剥げてしまった爪の・・・人体や自然へ有害なエナメルのコーティングをチェックしながら何の気なしに聞いた
「ああ、だいぶ苦労していたようだ」
あれ?
「先生、元の持ち主知ってるんですか?」
思わず、同じく人体にも地球にも有害であるアセトンをコットンに含ませる動きを止めた
(ただしこのアセトンはグルコン酸Mgやらパンテノールやらを配合してあるので人体への影響は薄いらしい
しかもボトルは再生資源を使用しているそうだ)
「大体の見当はついている」
何でもない事のように読みかけだったらしい本をぱらぱらとめくりながらスネイプは言った
私は悪臭を放つボトルのキャップを閉めた「どうして 最初に教えてくれなかったんですか。」そうしたらすぐに熨斗つけて返したのに
ていうか、最初の目的は恩をうってお金持ちの知り合いを作り、就職優先とかセレブリティな人生を歩むためだったのよね
「まあ・・・・いろいろとな・・・・」
「それじゃわかりませんよ。その人の所まで連れっててもらえますか?」
「・・・・・気は進まないが まあ、いいだろう」
スネイプ先生はドビーをそばに置いときたいんですか! まあ、びっくり。
「あとで往訪の連絡を入れておこう。少々急だが今週末に何か予定は?」
「とくにありませんけど・・・」
自分の顔の斜め下あたりからのほほえみを湛えた意味深な視線に気付いたのかスネイプはふしぎそうに顔を傾けた「なんだ?」
「今日が何曜日だか知ってます?」少し間を置いて(たぶん、休み中で曜日の感覚がおぼろげになっていたんだろう)スネイプは答えた「木曜日だがそれが何か?」
「アメリカで、キャリアウーマンが男にナメられないための方法っていうのがあるんですけど」
スネイプは再度軽く頭を傾けての言葉の先を促した
は思い切り笑いたい衝動をこらえるようにくすくすわらって完璧なアメリカ語で言った
「週の後半に持ちかけられたデートの誘いは断れ」
「どういう意味だ」単語と単語の区切りをはっきりと発音させてスネイプは訊いた「それに、別にこれはデートの誘いだとか・・・」とかいうあまり聞きたくない発言を
無視しては単語と単語を必要以上にくっつけてうざったく上品ではない米語で続けた
「男は、週の前半は本命の女の人の週末の予定を勝ち取ろうと努力して、それで断られると週の後半に本命じゃないけど『コイツでもいいかぁ』って女をデートに誘うの。
だから女はナメられないように週の後半に来たデートの誘いは断るべきなの。おわかり?」
は絶句しているスネイプの顎を指先でひっかくようになでるとアセトンの入ったボトルのキャップをひねって開け、コットンにその液体を染み込ませた
「その人のお住まいはここからどれくらいのところにあるんですか?」
「・・・・もしかしたら泊まりになるかも知れんな」
「そんなに遠いんですか?」
泊まり・・・まあ、休み中だし 先生とお泊りっていうのもなかなか楽しみですけどね
「距離としては日帰りで帰れなくもないくらいなんだが、帰してはくれないだろうな」
「・・・・どういう意味です?」怪訝に眉をひそめた「昔からの知人でな」
「じゃあ・・」さらによくわからない答えにさらに疑問をぶつけようとした時、何時の間にかソファーによじ登ってすみのほうで大人しくしていたドビーが口を開いた
「ドビーは、元のところに戻りたくありません。」
いつもの元気(からまわりなのだが)はなく 耳を垂れてつぶやくドビー
「我輩はやめてもいいのだが、はそうは言わないだろうな」
爪を湿ったコットンで拭う「ええ、屋敷しもべ妖精のいるお宅を一度拝見してみたいと思いますね」ドビーにゴミ箱を持ってくるように指示する
それに、妙に訪問を嫌がる先生とドビー
元の飼主にも激しく興味が沸いてきた
さて、小旅行の準備に取り掛かるとしましょうか
「先生」
「・・・・なんだ?」
こめかみに手をあてて目から脳へ移っていく文字を確かめるように読書をしていたスネイプが顔を上げた
「その邸宅訪問の帰りに、駆け落ちでもします?」
先生の額に青筋が見えた気がした
きっと続く。
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そもそもホグワーツに春休みはあるんでしょうか。
アンケートにエロのリクがかなりあるので「遅漏」をリメイクして出そうかと思います。
「遅漏」は前に置いてあったスネドリなエロなんですけど、なんだか後で読み返してみるとだめだめだったので引っ込めてしまいました。
それもなんだかもったいないのでこのたびリメイクしようと・・・
そのためには連作で「遅漏」の前にあたるこの話も書き直さなくてはいけないわけで、こんな感じです。
あのころよりは・・・少しは上達したでしょうか:トラ
2003/4/4