小さなランプをひとつ持って、はパンジーの部屋へと向かいました。
時計の針は真上を回ろうとしている頃でしょうか。
こんな夜分の訪問は、もしかしたら少し遠慮すべきものかもしれませんが……。

「今じゃあなくっちゃだめなような気がするんだもの」

そうですか、そんなときもありますね。
もしもここで引き返して、が後悔するくらいだったら尋ねてしまっていいですからね。
おっと、きっとそこの扉に続いているのがパンジーの部屋だと思いますよ。
ほら、可愛らしいプレートがあります。

「ふぅ…少しドキドキしてきたわ」

そんな…別に男の人に夜這いをかけるわけじゃあないんですから、もっと気楽に行ったらどうですか?
もっとも、が夜這いをかけたとしても、こんなに緊張しないような気もしますけど。
え?そんなことないって?
そうですか、ごめんなさいね。
あ、そんなことより早く行かないとパンジーが眠ってしまうかもしれませんよ?早く早く!

コンコン

はゆっくりとその扉をノックしました。
緊張した面持ちで、深呼吸をします。

「だあれ?」

あ、起きていたようですよ、

「あたし、よ!」
「まぁ!」

が名乗ると、ドアはすぐに開いてパンジーが顔を出しました。
すぐに「どうしたの」といいながらも笑顔でを招き入れてくれます。

「なんかまだ話したりなくって…」
「まぁ!私もそう思っていたのよ!」

おやおや、パンジーもの来訪をひどく喜んでいるようですね。
どうやら話も弾みそうですし、ふたり水入らずで会話を楽しんでください。
本当に、本当によかったですね、友達ができて。
寝不足にならないように気をつけて下さいね。






楽しい時間はあっという間に過ぎてゆくもので……。






どうやら夜が明けようですね。
、楽しかったですか?
……おや、神妙な面持ちをしてどうしたんですか?
昨日は楽しくなかったんですか?
え?…なに?なんですか?

「ゴメン、みんな。地下道への探索はもう少し後になっちゃうわ」
「えー!?」

え?一体どうしたと言うのですか?
ロングボトムも目が下に落ちそうになるくらい驚いていますよ?
もっとも、本当に落ちるわけがあませんが。

「どうして?どうして!?スリザリンの地下道はもう目の前なのに!!」

ロングボトムは泣きそうになりながら慌てて取り乱してにしがみつきます。
ロングボトムの思うことももっともなのですが…少し取り乱しすぎですよ、ロングボトム。
にはなにか事情ができてしまったのでしょうか。
聞いてみる必要があるようですよ。

「いったいどうしてそんなことになってしまったんだい?」

取り乱したロングボトムに代わってリドエルがに質問しました。
本当にどうしてかリドエルは適確で頼もしいですね。

「それがさぁ…」

は苦虫を噛み潰したような表情でぽつぽつと話し始めたのです。
その話の内容のなんてこと!!
ロングボトムは呆然と顎を床に落とすし、フレジョだって目はまんまるで、リドエルこそ大きく驚きはしなかったものの困ったように笑っています。
ああ、なんていうことでしょう……。
え?なにがなんということでしょうか、ですって?
とにかく大変なんですよ!
え?どうしてだかわからない?
どうしてわからないんですか!!

はパーキンソン家の養子になってしまったんですよ!!

「もー、どうしよう!なんだから知らない間に手続きとかされててハンコとか偽造されててさぁ」

偽造ですか…それって犯罪なんじゃありませんか、
パンジーは見かけによらず、スリザリンな女の子だったんですね。
目的の為に手段を選ばないってやつですね。

「でもパンジー好きだし!ご両親とかも良い方だったし!別にいいかなって!」

わー、出た!の楽天的性格!
本当にいいんですか?いいんですね?
もう、がよければみんななにも言いませんし、言えませんからね。

「ちょっと今ごたごたしてるから、それが終わったら地下道へ行けるし、なにも問題ないわよ!ね!」
「そ、そんなぁ……」

こら、泣くんじゃありません、ロングボトム。
はちゃんと行くっていってるんだから、別にいいでしょう。
友達の幸せは願ってあげなくちゃいけませんよ。

「違うんだよ、いったいさん…」

いったいさん?って、私のことですか?な、なにを言っているんですか、フレジョ。

「そんなことは関係ない、がオレたちだけのでなくなってしまうことにロングボトムは悲しんでいるのさ」
「オレたちもな」

寂しそうにフレジョが呟きました。
そう…だったんですか…。
でもまるでに恋人が出来たかのような言い方ですね。
パンジーは女友達ですよ?

「誰にだって異性の友達は、その人の同性の友達ほど親しくなれるわけではないからね」

リドエルが寂しそうに笑いました。
そうですか。
でもは決してみんなを嫌いなったわけではないのですから、だいじょうぶ。
きっともう少ししたらみんな元通りの友達ですよ。






はてさて、マジモンたちの心配も杞憂に、あれからみんなで仲良く暮らしていったそうですよ。
はパンジーのドラコのおっかけに付き合わされて、家出を考えているとかなんとか。


めでたし、めでたし?