U can CAn Can!










「それには、何の意味があるのかね?」

ページをめくる指が止まる。スネイプは自分の膝に本を伏せて置いた。

「結局隠れてしまうものではないか」

リラックスした格好で、スネイプの座るソファーの左側のアームレストに寄りかかり、膝を抱えるように折って、両足をソファーの上に乗せて足の爪の色を塗り替えていた。

「まあ、そうですけどね」

ネイルエナメルのはいった小さなガラス瓶を軽く振りながら答えた。

「でも私はこれが好きなんです」

とくになんの興味もしめさないようすでスネイプは言った。

「そうか」

「目に見える場所だけをかざるだけじゃなくて、隠れてしまうようなところもみがくって、余裕がなきゃできないじゃないですか」

「まあ、そうだな」

「うそつき、本当は納得してないくせに、面倒だから同意するんでしょ」

「まあ、そうだな」

まじめな顔同意するスネイプに、はすこし困惑する。それは冗談なのか?そうではないのか。

「私は余裕があって優雅な有閑セレブなんです」

スネイプは肩をすくめる。『なんとでもいうがいい』といういつもの無言のリアクションだ。

「それに、無意味じゃありませんよ」

なかばうんざりとした表情で彼は答える。

「何だ」

彼女は毒々しい色のついた足の爪を満足そうに眺めると小さな悪臭を放つビンに蓋をした。

「先生が見るじゃないですか」
そう言ってスネイプの左肩に右足をのせ、にやりと笑った。

「キスして」

伸びた脚をライトが卓上からやわらかく煽り、陰影をつける。
猫のようには猫のように笑う。笑って消える猫の出てきたディズニーの映画があった、とスネイプはぼんやりと考える。


は自分の身体を思い出す。ぬれたように赤く光る唇、顎が首に陰をおとす。鎖骨は健康的に浮き出ている。
コットンの薄いキャミソールの下には何もつけていない。
腰、あしのつけね、腿、膝、ふくらはぎ、足の甲。私の体のパーツはすべて曲線でできている、まるで見本のような。
自分の身体を上から順番に点検していると、その延長線上にスネイプの顔が見えた。

あまりの行儀の悪さに彼は苦笑している。

「・・・・その足にか?」

「もちろん、2回キスして」

スネイプは、注意して見ていなければ見逃すほどに小さくほほえむと、その足を左手で包みくちびるを押し当てた。

「爪には触らないで、かわいてないから。」
くすぐったそうに笑い声をもらす。
「もう1回」

再度押し当てられるくちびるは、一度目のようにくちびるだけのくちずけではなく、
舌と唾液のともなった音だけで腰の浮くようなキスだ。舌のざらつきの摩擦を感じる。
足の甲に唇のあてられた場所に薄く鬱血のあとがのこった。

「二度でたりるのか?」

スネイプは栞を挟みもせずに本をほおり投げ、両手で足をつつむ。

「まさか」は首を横にふる。「先生こそ足の甲にキスするだけで満足できるの?」
そしてスネイプの肩をかかとで蹴り押し、ソファへ沈めさせる。

「乱暴だな」のどの奥でスネイプは笑った。

手に握っていた小さな瓶はごろごろと音を立てて床の上を転がっていくが、二人ともそんなことは気にもとめなかった。
スネイプの下腹部をまたいで座り込む。そのまま上半身を前に倒し、スネイプの上に覆い被さるようにソファに肘をついた。
おたがいのくちびるがふれそうな距離でささやく。

「押し倒されるのは初めて?」
そして楽しそうにほほえみ、襟もとのホックに手をかける。

「すくなくとも倒されて脱がされようという状況は初めてだな」
スネイプは特に抵抗する様子もなく含み笑った。

「で、どうしたいのかね?」

「さあ、」

 すべてを放棄して身体を密着させて、しがみつきたい衝動に駆られるが、今日の私はそんなことはしない。
 背中に置かれた手のひらの奥に体温を感じる、血管も背骨も心臓も引きずり出して食べてしまいたい。
 なにもさわってほしくない。

背中に置かれた手の重さが心地良くてほほえむ。「どうしましょうか?」

スネイプの首元のあたりの衣服を開き、空いた首筋にくちびるをつける。

「さっきの足のキスのお礼に」

「それは それは、・・・・・ありがたい寵愛を、つつしんでお受けいたしましよう」

スネイプの手のひらが裾から侵入し、背中をなでる。産毛をさかなでされる感覚にくらくらする。とりはだがたつ。

「先生、手、冷たい」

「それは悪かったな」


冷たい指はだんだんとの熱を吸収してあたたかくなる、しかしの肌は冷めることはなく
体の中心部から熱い血液が体中をめぐる。
まるで、熱い手で心臓を直接つかまれているように。沸騰しそう、そのまま溶けそう、飛べそう。



「先生、」

すこしの沈黙のあとにスネイプは答える。

「なんだ?」

「あした、買い物に行きましょう。ふたりで。」


「かまわないが 何がほしいのかね」

「もっとたくさん、爪に色をつけるわ」


スネイプはの頬にキスをする。


「魔法のじゅうたんでおつれしよう、お嬢さん。」


はチェシャネコのように笑った。





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やあやあ、おひさしぶりです。

理想をつめこみました。


トラ

2004/4/30