「めそめそ」


あからさまアンニュイオーラを放つ壁の花を見つけてジョージは正直どうしようかとまよった。
シンプルな白のドレスローブ、というのはけっこうグッとくるものがあって男の憧れだ。
フレッドに出し抜かれていいとこなしかーとがっくりしていただけに、これはチャンスだ!
と思いつつもやはり賭けのように思える。

でもやっぱり声をかけてみようか。

無からはなにも生まれない、生んでみせましょ愛あるなにかを!






  シャランラ、星空にタンバリン投げつけて 2






「やぁやぁそこでアンニュイオーラを出しているお嬢さん、どうしましたか?」
靴ずれですか、お疲れですか、飲み物飲む?と青少年はうなだれる彼女に話し掛けた。
今にも膝を抱えそうな少女はゆっくりと顔をあげる。

「あ」

なんだか、とジョージはひそかに思った。
同じ寮でそう大して口も聞いたことはなかったけれど、顔も名前も知っている。
それなりに可愛いし、ほとんどが平均以上にできている彼女がどうして壁の花に?と思ったところでジョージは視線をハリーに向けた。
ハリーはホールの真ん中でパーバティと踊っていた。

「僕でよければ踊るかい?」
「結構ですよ、ジョージせんぱい…」
あたしは今とても踊る気にはなれません…と膝を抱えたら慌ててジョージはそれを阻止した。
どうやらぎりちょんで見えるところだったらしい(なにが、とか聞かないでよ)。
恭しく手を取られて立ち上がる…なんだかこれって今から踊りますーみたいな体勢じゃないか。
いやいや、踊らないぞ!こんなマジックにはひっかかるもんか!


「踊ったら少しは気も晴れるんじゃない?」
それでもジョージは強引に手を引っ張った。
「うぅー!あ、あたしは踊らないったら!」
懺悔!懺悔しているのだからダメなのだ!とのたうったらはぁ?という言葉をつけられ、あまりにわけがわからないという顔をされた。
そりゃあ当たり前だろう。そして彼は少し逡巡し目を細め、それから人ごみの向こうへ消えた。
うーん、当たり前の反応だね、これは。
しかしこうもアンニュイオーラを出しつつも声をかけてくる人がいるということは少し厄介かもしれない。
今の気分ではこの会場に溶け込むことができないなぁ。

外の空気でも吸うかね…目も痛いしね。



ううう、マルファイ君かっこいいよー、でもそのすぐお傍にはパーキンソンさんが!
あたしの口は決してお似合いなんて言葉は言わないわ、いやー!
いいないいな羨ましい!楽しそう!くぅ!


「眉間にシワ!甘い飲み物でも飲みなよ」


ゴブレットを差し出されてはちょっとだけ、くらりとした。
ふたつのゴブレットを持って、騎士の再登場。
温かいバタービールは胃にじんわり溶けて、優しい。










なんて…結局踊らされた。

言葉と行動も巧みに、つるし上げられて巻き込まれてしまった。
あたしはがっくりとうなだれた。
…さっきとはぜんぜん違う意味で。

元気爆発だな、兄弟揃って!
あなたたちの弟のロナルド君は怒っておられるようですがね。

ああ、でも元気すぎて他に気を取られる余裕がなかったのはよかったのかもしれない。
目に痛い痛い、かっこいいのになぁ。
いつまでも見ていたいのになぁ。
見て痛いからなぁ…。

「どこいくの?」

ずりずりと無意識に外へ向かっていく足に、気付いた。
あー、あー、あれね、辛いのね、あたし!
パーキンソンさんと踊ってるマルフォイ君を見るのが辛いんだね!

「ちょっと外の空気を吸ってきますので先輩は構わず楽しんでてください」

にこり、と笑いかけたジョージの肩越しにくるりと回って踊ったふたりが見えた。





「くそ、どこもかしこも雰囲気出しやがって!」
外の景色でも見て気分転換☆が、どこもかしこもいちゃこらしそうなふたり組みだらけで清々しくないじゃないの!
ああもうやってらんない!信じらんない!
これでもクリスマスかー!といえば、そういえばあたしはクリスマスプレゼントをすべて辞退してしまったので今年はなんにも貰ってないのです。
この間の神様仏様ダンブルドア校長様とお願いしたんですけどね、報われず。
…こんなことならクリスマスプレゼント貰っとけばよかったなぁ…。


後悔先立たず!

噴水でも見にいこう…マイナスイオンだ!












 
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まだまだ続く。
なんだか夏を過ぎると水浴びしたくなります…なんでだろ


2004/9/9 アラナミ