「今年のテニス部の出し物は、不思議の国のアリスです」
配役はあらかじめこちらで決めさせていただきました。
というのは黒属性悪魔族の大和部長の声だ。
そして彼の後ろにあるホワイトボードに書かれた配役を見て、私は頭を抱える。
おいでませ黒アリス
あたりさわりのない配役の中、まるでなにかの悪意が込められたかのように思えるものが存在するのですが。
なのですが。
どうして、でしょうか。
3月ウサギと帽子屋は、菊丸大石このふたり。
うん、ふつう。
チュシャ猫は2年の先輩が。
ハートの女王は異色の乾。
ナレーターは部長が請け負って、トランプ兵は先輩方。
そして何故かハンプティダンプティ腹話術で手塚。
(これはおかしいかもしんない)
なのになのになのに。
白ウサギ、私。
アリス、不二周助。
え、ぇえーーーーーーー!?
ふつう女の子がアリスなんじゃないの!?
てゆうか私!
序盤だけとは言え、不二アリスに追いかけられるの!?
疑った目を何度も何度もこする。
だけど変わりないそれはまぎれもない事実なのだろう。
きっとそうなんだろう。
だ、大丈夫よ!!!
いつものことだもん!慣れてるもん!!
だいたい文化祭の出し物で劇!なんだから!!
演技な………………
「脚本は不思議の国のアリスを元にしたパロディで、白ウサギに恋をしたアリスがひたすらウサギ追いかけるというお話ですから」
君たちは演技も何も本気で走り回ってくださいね。
演技じゃない!!!!!!!!
「わぁ、おもしろそうだね」
それはそれはそれはそれはそれはそれはそれはそれはとぉ ーっても!!!嬉々とした声だったわけでありまして。
「おもしろくなんかなーーーーーーーーいっ!!!!」
部室に響く声はそこを飛び越え校舎の向こうまで聞こえたという。
文化祭10日前。
大半がアドリブ、むしろ実話に近いため練習不必要。
文化祭投票一位に贈られる賞金に目がくらみ、折半で了承。
文化祭はテニス部ほぼ独占の大盛況に終わった。
あー、なんですか、私たちのやり取りは傍から見ておもしろいんですか。