ありったけのおめでとうをちょうだい
今日はずっと傍にいてよと言う不二に、私は逆らえない。
だからうんと頷いて不二の望むままに私は傍にいることにする。
……いなくてはてけない。
嗚呼どうしようどうしよう、新年早々バカやってアホやった私はその報いをあいつの気がすむまでこの身をもって果たさなくちゃいけないんだ、そうなんだ、そうなんだよ、だから私は今日ここにいるしおとなしくしているし逃げ出したいと思う足を必死こいて止めているんだわ!
だってそうしなくちゃまたなんかいちゃもんつけられて私の短い華やかな自由という時間をもっともっと短く儚くさせられるんだ!
うぇええええええ!!!
「全部声に出てるよ」
その声は私の頭に響いてぐるぐる回った。
それこそ目が回ってしまいそうになるくらい。
「どうでもいいけどいつまでもドアの前に立ってないでこっちおいでよ」
「う、うん…」
ぐるぐる回りそうな私の頭はどうやら正常に機能しないらしい。
というか同時にふたつ以上のことをできない私という人間に問題があるらしい。
不二の言ったこっちという場所=不二のお隣。
学校の教室ならともかくここが不二の部屋だという失念があったのは大いに痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「いったぁい!!!!!!!」
「自業自得」
少しむっととしたような顔で、私を見る不二。
その指は私のほっぺたの肉をつまんでいて。
や…そんなにたいそう痛くないですけど。
条件反射なんですけど。
ってゆうかこの人ぁいつまで……!!!
「僕の誕生日くらい僕のことだけ考えてなよ」
「はぅっ!!!!」
ビシッという小気味よい音を立ててヒットしたでこピン。
でこピンは痛い、痛いのよぅ!!!
「なにすんのさ!考えてるわよ!!いつもいつもあんたのことばっか!!!」
自らの口から飛び出た言葉に改めて気づいて慌てて口を押さえても、その言葉を取り戻すことができないことくらいは知っている。
「……へぇ」
知っているさ、その顔も口も目も柔らかに緩むことも。
「は……通知表にうっかり屋さんだって書かれたでしょ」
「書かれてないもん!!(ドジって書かれたけど!!)」
「じゃあドジとか?」
「!!!!!!!」
「(当たったな)」
不二は怖いくらいご機嫌だ。
はじめは少しふてくされ気味だったのに!!!
まぁとりあえずケーキでも食べようかと促す不二に、私はおとなしく従っておく。
戦前の腹ごしらえだ。
どうせこれからいつもみたく言い合って追いかけられるんだから。
不二が楽しいと思うことを、めいっぱい一緒にしようと、不覚にもそう思ったよ。
いつもは来ない4年ぶりの2月29日は、とてもとても調子が狂ってしまって無駄に不二を喜ばせてしまった。