私は今、とてもとても平和なときを過ごしています。
夏色開放感☆
適度にクーラーの効いた涼しい部屋。
少しとけはじめた冷たくて甘いアイス。
お気に入りの夏用のタオルケット。
ごろごろして、ぬくぬくして、ぽやぽやして、寝ます。
それが一番、夏の幸せ。
うふふ…v
「本当、ってば無防備だよね」
突然降って沸いた声とチリッと走った首筋の痛みに私は勢いよく目を開けた。
「ふ、ふ、ふ、不二!?」
目を開けて、目の前の人物を捉えて、それでも起き上がることができないのは、目の前のそれが私をベッドとその腕に挟んでしまっているからだ。
て、てゆうか本当に気配も何もなくいつの間にきやがったんだ、こいつ!!!
「ふふふ…君ってばそんなキャミソール一枚で、僕に食べてほしいって言ってるみたいだよ」
「!!!言ってない!言ってないからそんなこと!!!」
嗚呼…もう本当に。
なんて嬉しそうな顔で貴方は笑うんでしょうね。
なにもかも見透かすような目に、見つめられて。
私の身体は金縛りにあったように動かなくて。
持っていたはずのアイスを取り落としたのも気づかない。
「んっ………」
触れ合った唇は、妙にひんやりとしていて。
(ミルクアイスの濃厚な、甘さ)
「…っ、……ぅんっ」
それに反するみたく、舌は熱かった。
(頭がくらくらするくらいの、熱)
その唇が離れていっても、くらくらした頭はぼーっとしていて。
くらくら、はらはら、どきどき、ぐるぐる、
不二が柔らかく笑う。
「……本当に食べちゃうよ?」
いたずらに笑う。
伸ばされた手。
私の脇腹にゆっくり触れて、それから。
沈む身体。
沈むベッド。
体重のかけられたベッドが軋む。
不二が私を捉えて笑う。
「やっ……!!!!!」
身をよじって顔を背けた。
そしてそんな私の目に入ったもの。
お気に入りのタオルケットに無残にも悲惨な姿で崩れとけたアイス。
「みぎゃーーーーーー!!!!!!わーたーしーのーターオールー!!!!!!!!!」
「わっ!?」
火事場の馬鹿力さながら不二を突き飛ばして、その胸に抱く一枚のタオルケット。
可愛い可愛いお気に入り。
白地にわんことにゃんこが可愛い一枚のタオルケット。
「はっ…………!!!今すぐ洗えば落ちるかも!!!!!」
瞬く間に駆け込んだのは脱衣所。
勢いよく捻った蛇口にタオルを突っ込んで、それから涙ながらも私が安堵の笑顔を取り戻したのは数分後。
「……ってばいい度胸してるよね……」
不二のそんな声に冷や汗をかくのはそのまたさらに数十秒後。
私はどんなに暑い日でもどんなに息苦しい日でももう二度とキャミソールを着ないと誓います。