クリスマスにはヤドリギの下であなたを待ってるわ


 ほら、キスをして


 永く遠く、いつまでも一緒にいたいから


 ヤドリギが落ちる前に私の唇を奪って欲しい














 ユーガットリップ(´3(゜◇゜)














 12月25日、イエスキリストの聖誕祭…なんてことは時代のどこか隅っこの方へ追いやられ、もはやただの祭日と化している。ツリーにケーキにローストチキンにプレゼント、楽しいイベントよねってみんなで笑いあうのが今となっては当たり前のことだ。たまにぼんやりと、本質はこういうものじゃないんだけどなって思うけど、というかたぶんみんな思ってるけど、とりあえず"分かってはいる"ことに安心したら、後はご都合主義で楽しいこと好きの私たちはイベントを楽しむだけなんだわ。ほら、だって私も今まさに、クリスマスイルミネーションに彩られた街並みの中、大切な人へ贈るプレゼントを選んでいる。


「なんかいいの見つかった?」
「ん〜…」
 歯切れの悪いの横で、にこにこ笑顔を零しながらあかねは足取り軽く、の顔を覗きこんだ。やけに浮き足立ってご機嫌なのは、たぶんさっきまで持っていなかったはずの紙袋のせいだ、絶対。
「…あかねはなんか、いいものあったみたいね?」
「えへへー、まあね」


 ちらりと横目で覗き込めば、きれいにラッピングされたプレゼントらしきなににが白い紙袋の中に収められていた。クリスマスカラーの象徴でもある赤い不織布にゴールドのリボンがかかっているなんて、なんともまごうことなきクリスマスプレゼントそのものじゃあないか!


「乱馬に?」
「…なんでよ」
「なんででしょーねぇ」
 にやり、と笑ったは口元に手を当て、含み笑いだ。意味深な視線に、あかねは眉間に皺を寄せ、訝しげにこちらを見ている。
「とりあえず乱馬には食べ物よねー、私は」
 と、はきれいに陳列されている商品棚から適当にクッキーを選び取り、カゴの中に入れた。
「大雑把ね」
「だって兄弟だもん、特別なひとにあげるのはもっとじっくり探さないと」
「特別なひと、ね」


 チョコチップクッキーは乱馬に、プレーンはあかね、ナッツはなびきさんとかすみさんで、抹茶のやつはおじさまとおやじさま。乱馬とあかねにはなにか他のものも加えるとしても、まあこんなもんよね。レジにずらりと並ぶ、順番待ちの列に加わって、はぼんやり考えた。
「この後は手芸屋さんに寄って、毛糸を買わなくちゃ」
「え、なに作るの?」


 おっと、思わず声に出ていたらしい。もう自分の買い物は終えたというのに、わざわざに付き合って一緒に並んでくれたあかねの耳に届いた独り言は受け止めてくれる相手がいたせいで、キャッチボールができてしまう。聞かれるつもりのないことを聞かれてしまい、なんとなく恥ずかしくてはにかんだは言葉尻をごにょごにょともじらせ、小さな声で「マフラー…」と呟いた。
「いいじゃない、愛がこもって!私も買おうかなあ」
「う、うん…いんじゃない、愛がこもって」


 愛がこもって、なんていうのも恥ずかしい。でも愛は込めたかった、大好きだから。ほっぺたが熱くなるのは、お店の室内温度が高いせいにして、はこれから買う予定の毛糸の、大好きで大切なあの人に似合う色を思い浮かべたのだった。












2011/12/12  ナミコ