03










「オレも協力してやろーか」


 はた・と、気がつけば道場の入り口に、良牙(人の姿)が立っていた。さっきまで抱いていた筈なのに――――、いつの間にかいなくなって、そしてまた、人の姿で戻ってきた。


「良牙君!」


 きゃあ・と、は素早く良牙の傍に駆け寄った。Pちゃんである彼には、それこそしょっちゅう会っていたのたけれど、人の姿となると話は別で、それこそこの間の真夜中の奇襲以来、しかも直接は会っていないのだから喜びもひとしおというものなのであった。
、ちゃ…」
 ぎゅう・と、良牙の手をとって腕を絡めれば、良牙ははじけるように赤くなって口ごもった。残念ながらはそれを見てはいなかった。絡めた腕ごとぐいぐいと、道場の入り口からあかねと乱馬のいる場所へと引っ張っていたのだから。


「よーお…どーしたんだPちゃん」
「だれがPちゃんだ」
「だれがPちゃんかな?」


 懲りない…とは思う。ちらちらとこちらを窺って、いささか不機嫌そうに乱馬はまた、憎まれ口を言い放つ。これじゃあさっきと変わらない――――。
 まったく・と、は機転を利かせてふたりの間に割って入った。
「あかねの特訓に、付き合ってくれるのね」
 なかば強引に遮って、話をひとつにまとめれば、嬉々とあかねもこっちにくる。
「良牙君て優しいとこあるのね」
「そ…そお?」


 やいのやいの、とあかねとで良牙を手放しに褒めて、手伝ってくれるということにも喜べば、少し照れたように良牙は赤くなる。それをぎょっとした目で乱馬は見て、そうしてどっちに対してそんな反応をしたのか、ひどく気になってしまったのだ。
 昔、ほんのちょっと前までを好きだと言った良牙。今、良牙を好きだという。今、たぶん本人が知らないながらにも傍にいるあかね。


「良牙、おめーは…」


 今、どっちに対して照れたような顔をした・と、喉からでかかった言葉は、恐ろしくキレがよくこちらに向かってきたリボンによって阻まれた。さっきの仕返し・だ。クソ・と、乱馬は舌打ちして良牙を睨むけれど、目に入るのはそのリボンさばきに「すごい」とあかねに賞賛され、緩みきった顔ばかり。そりゃそーだ、エモノ使った戦いは、先日の果し合いから見ても相当レベルは上のはずだろうから。













2007/2/10 アラナミ