つきいろ落として
そのさらさらに触れるのがとても好きだ。
と、思っていることは筒抜けなのだろうか。誰にも言ったことはないのに、ただじっと、揺れるさらさらを見ていただけなのに。
「触ってみる?」
気安く髪を触らせない、どこか少女のような潔癖さを持っている(それを言うと怒るけれど)ククールの自慢のさらさらに触れることを許された。
口説いてる女の子にだって、触らせないのに。どうしてオレだけ?と、自惚れてしまうのは悪いことだろうか。好きだよと微笑まれた言葉も笑顔も信じるなら、それの証拠だとでも言うのだろうか。
「触る」
いつもはなににもなかなか折れない意地っ張りな自分が、それでも手を伸ばしたのは本当に、それに触りたかったからだ。キレイな髪。月の色をそのまま落としたような、銀糸。
つつ、と壊れ物に触るみたいに手を伸ばしてすべりのよい髪を梳くように下に落として。切りそろえられた前髪が艶やかに揺れる、向こうでは笑顔。
あ、もっと、触りたい。と。思ってしまえばするりと手は伸び、自然と身体も前に進み、近づく。
「ねぇ、ほどいてもいい?」
長いさらさらを纏める黒いリボン、いいよって言われる前に手をかけたけど。
九月八日計画自作お題"さらさら"
2005/9/8 ナミコ