セレブリティデスマッチ 「私を誉め称えるパーティー」でバカ高いアルコールを浴びるように飲みはしたが、ギルデロイロックハートの足取りはしっかりとしたものだった。 世界から注目されるスーパースターとは、いつも回りの目を気にしていなくてはいけないからね。 ネオンの光る眠らない街。人工的に植えられた椰子の木が茂る遊歩道。 広い道路に面して立ち並ぶ高級なホテル。ストリップ通り、名前が最高にクールだ。最高だ。ビバ!ラス!ベガス! けばけばしい色にライトアップされた噴水のまわりには、むせ返るほどの熱帯植物が植えられている。 密林とパラダイスをテーマにしたこのホテルはバカ高いとはいかなくても、かなりきらびやかで私の趣味に大変そっている。 ホテルのボーイは的確なタイミングで車のドアを開ける。黒塗りの長い車から颯爽と降りた。 遠目からファンが叫んでいる。夜中だよ!君達!とロックハートは手を振る。ああ、一人失神したようだよ。 まったく、私は本当に罪深いね。地獄の門番からも嫉妬されてしまうのではないだろうか。 だいじょうぶ、そうしたらみんなが愛でひきあげてくれるさ。 私は今日も(すばらしく魅力的な自分の)ファンの大群をかきわけて歩いてきた。 もしろん「すばらしく魅力的な」という形容詞は「自分」にかかる。魅力的なファンというのはごく一部だ。 魅力的なグルーピーは度をすぎなければ嬉しいものだけど・・・ファック隊万歳! ・・・しかし、クリーンなイメージにたいしてゴシップは遠慮したいので、はやく世間に公表できるパートナーを見つけたいものだ。 ふう、とあさく息を吐いてカードキーを差し込む。 ホテルの超高層階に、ほとんど自分の家と化している部屋がある。1ヶ月契約。値段は・・・・忘れた。ぜんぶ人に任せているから。 「今日は遅かったのね、ギルデロイロックハート」 部屋の奥に響く声。すこし拗ねたような、甘えた声だ。 、まだ起きてたのかい?とロックハートはベットにだらりと寝そべっている女性に声をかける。 すばらしい色のローブを脱ぎ床に落す。カーペットの毛にくっついていたスナック菓子が音をたてて割れた。 おそろしいほど高級なホテルの床には食べかけのスナック菓子とデザイン画が打ち捨てられている。 まるで強盗でも入ってきたような散乱ぶりだ。きっとがあばれたんだろう。 よごれるわよ、と彼女は眉間にシワをよせた。いいんだ、もう着ないから。とロックハートは答える。 「祝賀パーティーだったからね、君も来ればよかったのに」 「私のこと、なんて説明するつもり?ゴーストデザイナーです。僕のデザインは実は全部彼女が描きましたって?」 とにかく、おめでとうミスター・チャーミングスマイル・ロックハート。けらけらと笑い、は週刊誌をロックハートに投げつける。 とくに避ける様子もなく苦笑いをする彼を見て、さらに彼女は投げつけるものはないかと周囲を探る。 アレッシのステンレス製のシャンパンクーラーにつっこまれている瓶を手にとった。ぽたぽたと垂れる水滴がシーツを濡らす。 ペリエ・ジュエ、ベル・エポック ロゼのハーフボトル。 すでにコルクは抜かれている。そうとう飲んだようだ。しかもグラスが見えないからラッパのみだろうなあ。上品じゃないね。 そこでようやくロックハートは肩をすくめ、の腕を握り、なだめるように瓶を彼女の手からひきはなす。 「あなたの白い歯は私の舌で磨いてるんだから、忘れないでよ」睨みつけて噛み付くようには揶揄する。 これはもちろん物のたとえだ。 私は週に一度ニューヨークの有名歯科医で歯石除去をしてもらっているし、歯には薄くブライトの呪文だってかけている。 ちなみにバリ島のエステにも通っている。水上バンガローほど日々のストレスを解消してくれる場所はない。 「君には本当に感謝してるよ」 彼女は彼のミューズでありディーバであり・・・・まあ、ひらたく言うとゴーストだ。 ロックハートは今、冒険記だけではなく天性のすばらしいセンスにより、自らデザインしたブランドを持っている。 セレブのデザインは高く売れるのだ。しかし、四六時中マスコミやファンに追いかけられている彼としては、 自分の感性にダイブし、世の中の皆様に理解できるような形に芸術の原石をシェイプする時間などないのだ。 だからイメージを伝えて他の誰かに依頼する。セレブとしては、それが常識なのだ。 アイドルは鼻歌を編曲者に託して作曲するし、世界のホテル王の孫娘である姉妹(彼女たちは最高だった!)も同じようなものだ。 私も彼女たちからは沢山の商品を買ったよ。 それで次に会ったときに彼女たち「あら、このデザイン良いわね。どこの?」って言うんだ、 それは君達のデザインだよって私が教えたら「あら、そう」って、別にどこふく風だったね。 姉のほうはプライベートのセックスビデオが世に出てしまったけど、彼女たちは大丈夫だろうか。 とにかく、私とのビデオでなくてよかったよ。 「このまえの君のダイアの髑髏のストーリーなんか最高だった」 の機嫌を取るように笑顔でなだめる。実際に彼女は最高のコピーライターだ。 十字架を下げて死から守られている娘に恋をしたヴァンパイア。 彼は彼女にシルバーゴールドの髑髏に小さいダイアをちりばめたペンダントトップをプレゼントする。 よろこんだ娘が十字架を首からはずした瞬間、彼は彼女の喉もとに牙を立てる。 美しくも恐ろしい永遠の愛の始まりさ。なんてロマンティック! そのあとで彼女は、十字架を外さないで重ね付けにすればよかったのよ、バカな女。とせせら笑っていた。 たぶん、私が取材でそのストーリーを話したら、インタビュアーがうっとりしてた記事を読んでた時だったかな。 まあ、私を前にしてうっとりしない女性なんていないんだけどね。そのときの女性記者は熱っぽく私のファンだという事を訴えたが、あんまり興味をそそられる女性じゃなかったので適当にあしらった。彼女は美しくなかった。 「機嫌をなおして、」 ロックハートはのむきだしの肩にくちづける。それを彼女は無言でおしのけた。 やれやれ、今日は手ごわいね。とロックハートはシャンパンを瓶のままで口に運ぶ。 泡の抜けきってしまったアルコールを飲みこんだ。 私はむかしから私は美しいものが大好きだった。 大英博物館には毎週のように通ったし(その当時はまだ入館無料だった)おきにいりのコーナーは昔のハイパーデコラティブな衣装とアクセサリーのブースだ。 ぎらぎらしたジュエリー最高!何時間もそこでスケッチしたりして過ごした。 そして館内のスタッフのお姉さんと仲良くなったりもした。彼女もまた最高だった。 毎年、両親と親戚の家で過ごす夏のフランスでは、青少年らしくムーランルージュの界隈にあるセックスショップの前をどきどきしながら通り過ぎたりもしたが、だいたいはルーブルやオルセーへ通い詰めてすごした。 そのほかに好きなものは読書。私の大好きだった小説は勇者とお姫様のでてくる冒険活劇。 自分も強くなったような空想と妄想に浸れる文字の世界を愛してた。 本の貸し出し限度冊数をなくしたくて、オタクの吹き溜まりだった読書クラブにも入会した。 まさに私は読書愛好会の中で掃き溜めの中の鶴のようだった。自分の妄想を活字としてほかの人達に発表することもそこで覚えた。 将来小説家になれば生計を立てられるのではないかと希望をもてるくらい、私の文章は人気だった。 無料で配布していたけど、お金だってとれただろう。 魔法の苦手な私が書いた剣と魔法の物語が魔法使いに評価されるなんて、皮肉な話だ。 そうそう、その頃の私は本当に魔法が苦手だった。 その当時の私が使えた技術は・・・・おそろしく早く羽ペンを動かせるくらいだった。 そんな芸術的な学生生活をおくっていたある日、上級生に呼び出された。 放課後の校舎裏。呼び出しとしてはスタンダードな場所だ。 僕は最初、また誰か女子生徒から告白されるんだとばっかり思ってた。 自分はなぜか知らないけど、いろんな人から人気なんだったんだ。 とにかく、それはその当時の私にとって日常のことだったのだ。理由はまだその時はわからなかったけど。 当時は無自覚だったのだ。自分の美しさに。(なんて大罪をおかしていたんだろう。美のむだづかいだ!) 今日はどんな女の子なんだろうな、うきうきと校舎裏のロマンスに飛び込むつもりだった。だから歯を磨いて、爪も切った。 ところが僕を待っていたのは屈強な上級生。しかも男の。 彼ら(そして複数人だった、なんて卑怯!)は私の顔をしたたかに打ち、鼻から赤い血が垂れるようすを見てバカみたいに笑った。 つまり、彼らは私に嫉妬していたのだ。たぶん好きだった女の子が私のことを好きだったんだろうな、と今となっては思う。 普段から私は男子生徒(たいていはトロールと見間違うくらい頭の悪くて醜い、二重苦の男達だった)から嫌がらせを受けていた。 でもやっぱりその理由はわからなくて、それなりに悲しんではいたが、そのかわりに女の子と一部の変わった趣味の男子からはだいぶ優しくされていたので特に気にはしなかった。 なんども言うようだけど、理由がわからなかったしね。 スクイブと間違えられるくらい魔法の基本的な才能が皆無だった私が、無事に進級できていたのもそのせいだと思ってたし。 静かに絶えていればじきに終わる暴力を受けながら頭の中では18世紀の王冠の一般的な構造と流行について考えていた。 それが上級生にとっては面白くない。もっと泣いて叫べばよかった。 だから彼らは私を後ろから犯した。あんなのは僕の知っている(彼女達から)与えられる美しい愛ではない。 ただの一方的な体力と勢力の搾取だ。悦楽に浸る女性の顔は美しかった。きっと私の顔は最悪だっただろう。 あー、もしかしたら苦痛にゆがめられた美しい顔もまた素晴らしかったかもしれない。だって私の顔だからね。 とにかくそれにも私は耐えた。泥の地面に顔をこすり付けられながら気色の悪さに思わず昼食と2回分のおやつを全部吐いた。 ナポレオンの戴冠を描いた絵の中で、ジョセフィーヌのローブに使われているテンの毛皮の数を頭の中で数えながら耐えた。 そして痛い体を引きずって寮の談話室まで帰った。同寮の先輩は私の酷い顔を見て驚いてすぐに医務員を呼んできてくれた。 ありがとう、ルシウスマルフォイ。彼の美しい顔も私は好きだった。 顔がもとどおりになるまで2週間はたっぷりかかったと思う。 最後の絆創膏が取れたころ、私は初めて自分の顔をじっくりと見た。鼻はちゃんとくっついたままか確かめたかったのだ。 幸い私の顔はもとのとうりにきっちりと治っていた。ありがとう、マダム。 そして突然気づいた。なんてこった、僕はこんなに美しかったのだと。 美しいものが大好きで、世界の最高峰の美をまわりにかき集めていたから、自分の美しさに気づかなかったのだ。 博物館に展示されている絵画や宝石が私にとっての美で、自分なんて足元にも及ばないと思っていたのだ。 青春に首まで浸かっているその他大勢の生徒は美術館になんて行かない。 ひまさえあれば自分の顔を少しでもよく見せようと鏡をみているんだから。 しかしそのころからすばらしい感性を持っていた私は鏡をしっかりと見る暇もなく、 画集やらカタログやらをあながあくほど見ていたんだ。 だから気づくのがこんなに遅れた。 僕はなんて美しいんだ! 今思うと、私は自分の美しさに早く気づくべきだったのだ。 きっと彼らからの一方的で強すぎる暴力は神からの罰だったのだ。手荒いけど、私へ自分の美しさに気づくための代償。 たぶんそれでも私が気づかなかったら、さらなるアフロディーテからの罰でホモの道へ踏み外していただろう。ああおそろしい。 自分の美しさを自覚してからというもの、私の人生は大きく変わった。 美しい芸術品の数々が美術館に展示されるように、自らの美しさも人々に展示されなくてはならない。 そうしないと日々削られていく美の時間のむだづかいをした罪で、今度はマゾホモにされかねない。 まず始めに、私はモデルになった。雑誌の。 美しいティーンズモデルはあちこちから重宝され、映画の出演の依頼まで来たほどだ。 役柄はもちろん、ギリシャ神話のナルシスの役だ。 彼は湖の水面に写る自分の美しさに見とれすぎて花になってしまった。 なんて私にぴったりの役柄!まあ、私がナルシスだったら、神達は花にするのはもったいないと思って、そのまま石像にでもしただろうけどね。所詮はナルシスさ、私ではない。 しかし私はここで重要な問題に直面する。私は演技ができない。 なんてこった!私は映画の中で英雄になるチャンスを逃したのだ。 ただの美しいモデルでは、次々と現れる若いそれなりにきれいなモデルに足を引っ張られ、地に落ちるのも時間の問題だろう。 美術館に飾られている美しい作品は、その見た目の美しさだけでなく、歴史や希少価値という付加価値があってこその魅力なのだ。 人間の美と対象なのは知性。 私がそうであるように、たいがいの美しいブロンドヘアーは脳の栄養まで吸い取ってしまうようだ。 だから私の美しさにも何か付加価値をつけなければならない。 そこで私は思い出した。私にはもうひとつの才能があるではないか。 事実は小説よりも奇なり。夢物語よりも実際に起こった話しのほうが注目されるだろう。 そして正義のスーパーヒーローはハンサムなほうがいいにきまっている。 このときからとの付き合いが始まった。彼女は私の愛する下級生のうちの一人で、読書クラブの一員だった。 は掃き溜めの中では良いほうだった。たぶん、学園全体から見てもいいほうだったんじゃないかな。 よく美術書の貸し借りをしたり、レポートを手伝ってもらったりした。下級生だというのに彼女は私より頭がよかった。 彼女とも同じ寮で、大半のスリザリン生がそうであるように、も最高にずるがしこかった。 実は、冒険記の案も彼女の提案なんだ・・・つまり、他人の努力と栄光をかっさらうというシンプルで狡猾なプランの。 「勇者はきれいなほうが絶対に人気が出るわ、醜い人間の武勇伝で誰がよろこぶっていうの?」 私はこの言葉を聞いて実が震える思いだったね。 心の琴線が美しいメロディーを奏で、鼓動という名のパーカッションがリズムを刻んだよ。 そしてはスクイブ同然だった私に忘却術をしこみ、村を救った英雄をうまくおびき出す方法も考えた。 てゆーか、が忘却術を英雄にかけることのほうが多かったんだけどね。 そして冒険者としての私の地位がゆるぎないものになると、我々は一番やりたかった事を実行に移した。 (そのときにはもうも卒業して、とあるメゾンで修行中だった) 自分達のブランド「マジカル ミー」の設立。 あざといまでの売名行為も、クリーンすぎる表と向上意欲むきだしの裏もすべてこのためだ。 歯磨き粉、石鹸、入浴剤など、おもにお風呂用品の「マジカルミー・ヌード」 香水、化粧品などの「マジカルミー・デコラ」 ヌードのほうのプレスポスターは文字通り私の後姿のヌードで飾った。もちろん、CGでものすごくクリーンナップした写真だ。 そんなことしなくても、私の背中は十分うつくしいんだけどね。 デコラのポスターは背中にバラのタトゥーをしているように写真を加工したんだ。 その二枚をパリ、ミラノ、ロンドン、NY、東京をはじめとするファッション先進国に一斉に街中へ張り出した。 盗難の被害が出るほどにすばらしい反響だった。(ごめんよ!美しいものが好きなだけな君達に罪をおかさせてしまって!) オープニングパーティーではインヴィテーションとしてそれを模したバラのタトゥーシールを配布した。 次の日はネットオークションで値段が沸騰してたらしいよ。くさるほど数を用意したのにね。 とにかく、大成功だった。 我々は手をたたきあって成功をよろこんだよ。 そのころは私も真面目にデザイン画を書いていた。しかし、有名になればなるほど時間がなくなるんだね。それはとても悲しかった。 最近ではずっと彼女に任せきりだったんだよ。それが彼女を不安にさせたらしい。 私も腐ってもスリザリンだから。人を不安な気持ちにさせるのは得意らしいんだ。 ロックハートは靴のままベットの上へあがり、足を伸ばして大量のクッションへ背中をあずける。 セレブリティは赤い絨毯の上しか歩かないから、靴の裏はエアコンのフィルターより清潔だ。 「左肩甲骨の5センチ下にキスマークがあるけどごぞんじ?」 いつのまにかロックハートの腕の中に収まったは彼の顔を見上げて言った。ずいぶんふてくされた表情だ。 「ああ、それは気がつかなかったね」 君以外と寝るときは無意識に背中を向けるからね、本当は寝顔も見せてあげるべきなんだろうけど、なかなかうまくいかない。寝てるあいだは本能に従うみたいだよ。 とロックハートは真面目な表情で言う。「なんだい?妬いてるのかい?」 「別に、美は共有するものなんでしょ?」 「ああ、その通りさ」 だって美術館に行くだろう?とロックハートはつけくわえた。 「ねえ、私にまだ興味ある?」 もちろんさ、とロックハートは答える。 「私のこと好き?」 あたりまえだよ、とロックハートは答える。 「しんじられない」 やれやれ、とロックハートは肩をすくめ、ほ顔を自分のほうにむくように手を添える。 「私は私に付属している君が好きだよ」 言葉のひとつひとつをしっかりと吟味して喋る。ものずごく真剣である。 「本人はどうでもいいわけ?」 「しっかり聞いていた?」ロックハートは苦笑する「君が私から離れない限り、私は君の事を愛してる」 結局は自分が一番好きなんでしょ?とは口を挟む。黙って聞いてて、と彼女の口を掌でふさいだ。 「つまり、選択権も決定権も君にあるんだよ」 そして私はいつ君にみはなされるか心配でしょうがないんだ、 だから必死になって老婦人のキツイ香水の悪臭に耐えながらエステに通う、と笑う。 「それに、私は身に付けるアクセサリーも非常に吟味するたちで、」 いつどこで誰が見ているか解らないからね、いつでも緊張していないと。私は人々に夢を見せるのが仕事だから。 「最高のものしか選ばないんだ」 マリリンモンローが動物愛護団体に入ったらどうする?毛皮は彼女のアイコンなのに。 王冠をかぶらない国の指導者なんてだれがあがめるんだい? ロックハートはイタリア人のように手をおおげさに広げながら演説する。 もういいわ、とが彼の手を押さえた。彼はそのままその手をの肩へ置くと低い声でささやいた。 「だから君は、私に愛されているということを光栄に思いなさい」 「そんなのまわりくどすぎるわ」と彼女はつぶやいた。 たぶん、心の中では感動に心臓は3メートルくらい跳ねて踊り狂っているだろう。 この私から愛を告白されているのだ。それくらいは当然だ。 「もっとシンプルな言葉で言って」 きらびやかに飾って、もとの美しさを高めるのが私と君の仕事だろう?とロックハートは微笑む。 いいかから、と彼女は先を促がす。 「つまり、途方もなく君を、愛してるよ」 まだ無駄な言葉が多い、とは笑った。 「愛してる」と私は言い直す。 それでいいわ、と眠そうにつぶやいた彼女は目を閉じた。 さあ、私もそろそろ眠ろうかな。彼女と同じ夢を今夜も見るために。 実は、このやりとりは今週で3度めだ。 奔放すぎる美しい芸術家と、それに翻弄される日陰の花。 これが最近の私と彼女のお気に入りの遊びだ。 世界一デコラティブでギャンブリングなラスベガスのホテルの最上階で繰り広げられる 世界一シンプルでピュアな愛の言葉。 なんて美しいんだろう! そして本当のところは彼女は日陰の花なんかではなく、れっきとしたマジカルミーのチーフデザイナーであり代表で、ゴーストなんかではない。 今日、が私とパーティーに出席しなかったのは単純に彼女が眠たかっただけだし、 私はことあるごとに雑誌の取材やなにかで「ほど自分のイメージを的確に形にしてくれるアーティストはいない」 「私の寝言でさえ彼女は芸術にしてしまう」と褒め称えつつ、のろけるのが日常茶飯事だ。 つまりが私のミューズなのではなくて、私がのミューズなのだ。 世間としてはセレブが恋人をとっかえひっかえに楽しんでいることもゴシップとして楽しめるけど、学生時代から変わらない恋人どおしを見ているほうがすごくイメージがいい。自分達も夢をもてるしね。 世界中の女性の恋人にだって心のよりどころは必要だ。 いい年して恋人のいない美の伝道師のモテメイク講座なんて誰が信じるんだい? それに、たとえ恋人がいても、本物の美にはみんなとりこになるからね。 モナリザだって、ちゃんと所有されているものだけど、毎日人々が彼女を一目みようと足をはこぶのとおんなじことだよ。 さあ、つぎの遊びはどうしようかな、と頭の隅で考えつつ二人は眠らない街ラスベガスで幸せそうに寝息を立てた。 となりの高層ビルの屋上からロックハートのゴシップを隠し撮りしてやろうと狙っていたパパラッチはカメラを構えていた。 衝撃の真実!性的に奔放だったビューティーシンボル、学生時代からの恋人と破局!? 亀の首のように長い望遠レンズをつかみ、月の光よりもまぶしいシャッターを準備 ・・・・しようとして耽美な形容詞を思いつけないくらい実用的な赤外線にきりかえた。 そしてファインダーをのぞく。 シャッターボタンを押そうとした瞬間、彼は意欲をうしなった。 ミラージュホテルのホワイトタイガーが逃げ出してベルボーイを食い殺したあげく射殺されたらして、カメラマンはそちらのほうにカメラの照準をあわせかえた。 グリーンピースに写真を高値で買ってもらおう。と彼は思った。 それは世界のスーパースターを失うことを恐れた5億4千万の人々の祈りが悪のパパラッチの興味をそらそうとホワイトタイガーの深層心理に働きかけたのだ。 こうして美の救世主は今日もまもられた。 極彩色のネオンは相変わらず窓の外にひかっていたし、ラスベガスとしては変わらぬ平和な夜だった。 → -------------------------------------------------------------------- ロックハートサイコー あと、ダイアの髑髏のストーリーはほとんどDirからのコピーなのでごめんなさい マジカルミーのイメージはチープなDior+アナスイなんですよハイパーデコラティブロマンティック そしてロックハートは映画のロックハートをイメージしてはいけません ジョンガリアーノとデビットボウイ(全盛期)とデッドオアアライブの人を全部足して割らない感じのビジュアルイメージです 30歳くらいで希望 金髪長髪伊達男最高 ・プチムダ用語講座・ (間違ってるかもしれないので活用はできません) 「ミューズ」 ギリシャ神話で、文芸、学術、音楽、舞踏などをつかさどる女神ムーサの英語名 転じて、デザイナーなどがインスピレーションの源として誰かをそう呼ぶ コレクションごとに変えたり デヴォン青木もシャネルとかランコムとかのミューズになってましたね ミュージシャンがなる事も多いです アギレラもベルサーチのミューズになってました 「メゾン」 工房、アトリエ オートクチュールとか作るところ でも読むために知識の要るSSていうのもアレですね すっごい不親切、フリーなのに オリジナル設定を欲望のままに練りこみましたが、書いている私としては楽しかったのでよしとします ロックハートだしね 3年目に突入しますが、これからもよろしくおねがいします C VanillaRadio トラ 2004/6/19 |