むずかしい本を読むと眠くなる







 近頃、我輩はどうやら幻覚を見ているらしい。
 作業台の上を見れば5センチメートルほどの小汚いピクシーのような、蝉の羽を持った汎下垂体機能低下症のようなプロポーションの妖精が昼寝をしている。
 我々の住む世界では、彼らの存在自体はまったく不思議ではない。我々の住む世界は夢と(現実と)魔法と(呪い)のあふれる素晴らしい世界であるから、マグルの言うところの「ファンタジーの世界の生物」などまったく珍しくもないのだ。
 
 だから最初、朝食の席でローストチキンの皿とオートミールの鉢の間に座っている小人を発見した時、ちょうど隣に座っていた同僚の魔女に「なにか、ちいさい生物が浮浪している」と進言したところ、「わたしには何も見えませんが?スネイプ教授」と不思議そうな、すこし申し訳なさそうな表情で言われてしまい、言葉をしまいこんだ。
 たぶん、その時の状況を他の人に伝えるには多くの言葉が必要だっただろうし、沢山の言葉を組み立てるほどの血圧も体力も足りなかったのだ。
 まあ、そういう特徴を持った魔法生物か何かだと思ったのだ。たとえば、最初に発見したものにしか見えず、そのコロンブスに恥をかかせるような類の性質なのだろうと気にとめなかった。
 

 しかし、どうやら違うらしい。毎日毎日、小人どもが増えていくのだ。いまでは書類製作用のデスクの上に乗り切らず、床の上にまで転がっている始末だ。数を数えることは3日前にやめてしまった。図書室で魔法生物全巻を、禁書の棚で危険魔法生物全巻大人用を隅から隅まで呼んでみても、我輩の目前に居る生物の種類を特定することはできなかった。
 
 まあ、とくに生活に影響はない。なぜなら、彼らは直接の障害にはならないのである。仕事の合間に茶を飲んでいるときに、3年生の名簿の上に3匹ほどの小人達が乗って居るとする。
 教師としての仕事を嫌々ながら始めようと名簿に手を伸ばすと、彼らはもうそこに居ないのだ。
 本を読んでいると何匹かの小人は本の文面の上によじ登り、それが大きな本の場合、隊列をなしてマディソンを踊り出すのだ。それでも読書に影響はない。彼らは我輩がまだ読んでいない部分か、もう読んでしまった段落の上にのみ居るようだ。そしてすでに読んだ部分へ確認の為などに目線をあげると、彼らは移動した後である。
 そして彼らがどんなに飛び跳ねても、ページはぴくりとも振動することはなかった。
 
 そういえば我輩は彼らが移動している瞬間を見たことがない。目をはなし、そしてまた視線を戻すと、今まで居た場所に彼らは居ず、別の個所に移動しているのだ。
 そして我輩は彼らに手を触れたこともない。
 彼らは我輩を避けているのか、それとも我輩が彼らを避けているのか。
 それが彼らの予知能力と配慮によるものか、我輩の脳が作り出した幻覚による心理的作用なのかはわからないが、いままで触ろうと思ったこともないし、これからもおそろしくて手を伸ばそうとも思わないだろう。
 それにたぶん、彼らには触れることはできないのだ。よく解らないが、これは予想というより確信に近い。我輩は彼らに触れない。
 
 とにかく生活に大きな影響はないのでほおって置くことにする。
 影響があるとすれば、我輩の神経が日々衰弱していくくらいだが、それはこの小人どもが居なくても、我輩の胃袋は胃酸過多により溶かされているゆえ、問題はない。
 笑顔のセラピストに幼稚園児並みの扱いをうけながら、過去のトラウマやら生活のストレスの原因とやらを掘り起こされるくらいならば、このまま場違いにファンタジーな世界に埋もれていたほうがましだ。

 ふと足もとを見やると、床に放置された本の影でオスとメスらしい二人がくっついて楽しんでいた。我輩はもう限界だと思った。





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好き好き大好き、愛してる先生。
そんなわけで先生しか出てこない。
でも、先生好きなみんななら全然平気だよね?
後楽園でボクと握手!

2004/9/17  トラ